ニッキ飴ふたつ一円青写真 2019-11-30 | 冬の俳句 捜査の少年探偵青写真 猫の目の眩しさ嫌ふ青写真 紙芝居の錆びし自転車青写真 モノクロのあの日の僕ら青写真 青空の昭和の町や青写真 思ひやる心はどこへ青写真 失った昭和が写る青写真
母の子にふうふうしたる根深汁 2019-11-29 | 冬の俳句 噛めばしゅむぬめりの美味し根深汁 根深汁すする音だけ老夫婦 慎ましき家族のありて根深汁 村はみな藁葺だった根深汁 子らのみな押し黙り食ぶ根深汁 祖母の温みにも似てゐて根深汁 実直な先生のこと根深汁 根深汁ママの歌は「悲しい酒」
時雨去り滴に映る時雨あと 2019-11-28 | 冬の俳句 少し濡れ嗅覚澄まし時雨傘 街路樹の押し黙りゆく時雨かな 野良猫の突っ切って行く夕時雨 駅の灯のレールに滲む夕時雨 時雨去り枝の雫に残る陰 時雨去り小さき目のごと雫かな 車窓にネオン流るる小夜時雨 魚屋のねぢり鉢巻き朝時雨
朝いちばん皇帝ダリアのおはよう 2019-11-27 | 冬の俳句 空へバラード奏づ皇帝ダリア 気力を皇帝ダリアに貰ふかな 皇帝ダリアポストに回覧板 受信する皇帝ダリアのアンテナ 皇帝ダリアひとひらの大きな切符
枇杷咲くや八十近き担当医 2019-11-26 | 冬の俳句 陰成して葉の静けさや枇杷の花 厚き葉陰に素朴なる枇杷の花 枇杷咲いて振り返る十一ケ月 枇杷咲いて余す日数の気にかかる 医の白衣とも違ふけど枇杷の花 診察日まうひと月か枇杷の花 枇杷咲いたこと仄かなる香に気づく 絹糸浮かぶ細き香や枇杷の花 大事にしたきもののあり枇杷の花 朴訥とした脇役や枇杷の花 指の出た子の靴下や枇杷の花