天高群星近

☆天高く群星近し☆☆☆☆☆

雅歌第八章

2006年07月04日 | 文化・芸術

雅歌第8章

1.(娘)
もしあなたが、私の母の乳房を吸った私の兄弟でしたら、
外であなたを見つけて口づけしても、誰も私をさげすまないでしょう。

2.私が育った母の家に、あなたをお連れして、
ぶどう酒やざくろ酒の、かぐわしい飲み物を差し上げましょう。

3.あなたの左手は私の頭の下に、右手は私を抱きしめて。

4.エルサレムの娘たちよ。私はあなたたちに誓ってお願いします。どうか、愛がおのずから望むまでは、ことさら起すことも目覚めさせることもないように。


5.(女たちの合唱)
恋する者に抱かれて、荒れ野から上ってくるのは誰ですか。

(娘)
りんごの樹の下で、私はあなたを呼び覚まします。
あなたの母はここでみごもり、苦しみのなかから、あなたを産みました。


6.
あなたの心に、私を印章のように刻み、
あなたの腕に、 私を印章のように刻んでください。


(女たちの合唱)
愛は死のように強く、妬みは墓のように残酷です。
愛は炎をあげて燃える石。激しく火花を散らす。

7.どんな大雨もそれを消し鎮めることは出来ない。
どんな洪水もそれを流し去ることは出来ない。
もし人が、住む家を抵当に入れて愛を買おうとするなら、
その人はさげすまれる。

8.(娘の兄弟たち)
私たちには幼い妹がいる。まだ乳房もない。
妹が求婚された日には、私たちはどうすればいい。

9.もし妹が城壁ならば、その上に銀のやぐらを建てよう。
もし妹が城門ならば、レバノン杉で打ち固めよう。

10.(娘)
私の胸は城壁で、乳房は二つの塔。私の愛しい人の眼には、それは歓びと安らぎです。

11.(女たちの合唱)
ソロモンはぶどう園をバアル・ハモンというところに持っていた。彼はそれを農夫に貸した。彼はぶどうの収穫のためにソロモンに銀貨一千を納めた。

12.(農夫たち)
ぶどう園は私たちのもの。ソロモン様、ぶどう園からの銀一千はあなたに、銀二百は農夫たちに。

13.(若者)
園に住まう愛しい人よ。友はあなたの声に耳を傾けています。どうか、どうか私にもあなたの声を聴かせてください。

14.(娘)
急いで、愛しい人。香り草の生える山にいる雄鹿や小鹿のように。

 

雅歌第八章注解


雅歌は、「ソロモンの歌」とも訳される。全篇はギリシャ歌劇のように、小さな戯曲としても味わえるのではないだろうか。

登場人物

若者(ソロモン)

合唱するエルサレムの女たち 

娘の兄弟たち

農夫たち

第八章はその最終章。とうとう最後になって、愛し合っている若者(ソロモン)と娘はお互いを見つけ出す。それまでは二人は互いを求めても見出せず、恋の病に冒され患ってさまよっていた。

とうとう恋する憧れの人ソロモンを見つけた娘は、彼を自分の生まれ育った母の家にいざなう。ソロモンは娘の本当の兄弟のようで、街角で口づけしても気にとめる人はいない。

娘は、母の家、自分の育った部屋に、取って置きのザクロ酒やぶどう酒をソロモンに用意している。それは彼女の愛の証し。しかしまた、娘は愛みずからが望むまでは、ことさらにそれを眼ざませることのないように、エルサレムの女たちに誓わせる。

娘は若者にいだかれて荒れ野を上って来る。そこに一本のりんごの樹があった。知恵の実をつけるりんごの樹。そのりんごの樹の下は、若者の母が身ごもったところ。そこで、娘は自分の愛が若者の身と心に刻まれることを願う。

愛とはどのようなものか。エルサレムの女たちは歌っていう。
愛は死のように強く、愛の妬みは墓のように残酷であると。
その熱情は炎のように燃え、大雨も洪水も消し鎮めることができない。
その愛を金で購おうとする者は軽蔑される。


娘の兄弟たちは、妹の純潔を心配してどう守ろうかと気遣う。しかし、娘は自分の乳房が若者を慰めることを知っている。
ソロモンはぶどう園をもっていた。そして、その管理を農夫たちに任せていた。そこから、地代としてソロモンは銀貨一千枚を得、農夫たちには労賃として銀貨二百枚を手渡す。

若者は、ぶどう園に住まう娘のきれいな声を聴きたいと思い、娘は早く若者が羊を世話する山から、小鹿のように自分のもとに駆け降りてくることを願っている。

ユダヤ人たちはキリスト者と同じように、自分たちを娘になぞらえ、若者ソロモンの愛を、父なる神の彼らへの愛の象徴と見る。若いソロモンの愛はまた、イエスの愛の前表でもある。


雅歌も黙示録のように、シンボルとして比喩として事柄を表現しようとしていて、その注解は難しい。どこまで正確を期せるかどうか。

 


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