淡き夢うつし揺蕩う烏瓜
日暮れ前。
カラスウリの開花を見ていたら
今年はじめてのひぐらしの声を聞きました。
かなかなと。
あの澄みきった もの悲しい、美しい声。
層を重ねてゆくような夕方の空気を震わせて
寄せては返すように響いてくる。
遠く、近く、また遠く。
かなかなと
髪の毛からつま先
心のひだにまで
透明な声が沁みていく。
透き通って、消えてしまいそうな気がした。
それでいいと思った。
群青を濃くしていく空。
降りてくる夜。
カラスウリの夢幻の花と、ひぐらし。
逢魔が時だ。
妖(あやかし)に出会いそうな
神隠しにでもあいそうな気のする
青い夕暮れでした。
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