愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
―― 俵万智
アナポリスの
家の庭に咲いていた
ヘブンリーブルー。
天上の青、という名の西洋朝顔。
家の白い壁を
高く高く、どこまでものぼり
青く美しい花を
驚くほどたくさん咲かせていた。
朝顔と違って
午後も萎れずに美しく、
開花時期は8月中旬から秋の終わり頃まで。
初霜まで咲いていることも。
涼しくなるにつれて
花の数が増えていくから、
「夏の花」というより「秋の花」なのかもしれない。
透きとおる美しい空の色。
その青を写しとったようなたくさんの花が
みなそろって空を仰いでいる。
夕方になると、
まるで
淡い夕焼けのようにピンクが差してきて
やがて萎れていく。
いつだったか
夫と一緒に帰国したときに
その種を持ち帰ってきて
日本の
実家の庭に
ふたりで撒いた。
彼は
もうこの世にはいないけれど
ヘブンリーブルーは
今年もまた
この庭に
咲いています。
空を
あの高みを、目指して。
青く澄んだ花を
ぼんやり眺めていたら、
いろんな思い出が
風のようにわたしを通り過ぎていって
俵万智さんの歌だけが、残りました。
愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人
―― 俵万智
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