おも〜か〜じ(面舵)‼︎

心が壊れる時

一度でも心がガス欠になると、元に戻るには月日がかかる。

凡てを投げ出して、世間との関わりを断ち、暫くの間気儘に日常を暮らす事が出来れば回復も早かろう。

だが、中々其れが叶わぬ。

カネが無いと雨風さえも凌げない。

一層の事、街の傍でルンペンにでもなろうかと考えた事も在った。

だが、此のルンペン生活も簡単ではない。

各々のエリア(シマ)とコミュニティーが在る為、勝手に踏み込む事は出来ない。

ルンペンの生活圏にもヒエラルキーが在る。

此れは中々面倒臭い。

ならば、色んなものを背負いながらでも細々と実生活を送った方が自由である。


最近、不図思う事が在る。

家族や親戚等の “身内” って何なのだろうかと.....。

街行く人をベンチに座って眺めていると。

殆どが仲睦まじく手を取り歩き、子を抱き、笑顔で通り過ぎて行く。

其の裏には色んなものを背負っている家族も在ろう。

家族同士で欺き、足を引っ張り、梯子を外し合う。

昔、仕出し弁当の宅配(企業や個人宅)をしていた頃、朝に準備した弁当と集金額が合わぬ事が在り、其の犯人が吾だと云われ、大立ち回りをした事が在った。

吾は身に憶えが無い。

吾は其の証拠を示せと食い下がった。

すると帳簿を見せられ、或る期間の弁当の数と其の集金額が合っていない様になっていた。

身に憶えが無い事だった為、無視していた。

職場としては、吾に辞めて欲しかったのだろう。


午後からの空き弁当箱の回収にコースを回っていた時の事だった。

事務所のババア
「もう、いい加減にして! 私を女だと思って舐めないで!」

「はぁ? 藪から棒に何なんですか?」

事務所のババア
「自分が何をしているか解ってるでしょ!」

「何をやねん。俺が何をしたんや?」

事務所のババア
「アンタが担当したコースに限って、弁当の数と集金額が合わないの! 今に始まった事じゃ無い。いつ云おうかとずっと我慢していたけどもう限界!!!!」

怒りに任せて捲し立てる怒号が、携帯のスピーカーを震わせていた。

其の後、中途採用の求人を出した様で、吾を追い出しにかかった。

吾としては此れ以上突っぱねる事も出来ず、辞めてしまった。

他の弁当仕出しの会社に転職しようと思い面接に行ったが何処からの採用も無かった。

何処の仕出し弁当の会社も雇ってはくれなかった。

数社目の面接が終わった時に聞かされた事が在った。

「実は◯◯(吾)さん、前の職場で何か問題起こしたんですか? 其の内容が仕出し弁当の宅配会社に出回っています」

吾は一切を否定した。

此れはよくある話である。

同業界の情報共有というやつである。

もう此れはヤクザや右翼団体の破門状と同じ構図である。

他団体に其の旨を伝え、破門した者の名を通知し、受け入れない様にとするものである。

未だに矢張りこういうシステムは少なからず在る。

吾が何故、標的にされたのか未だに理由が解らない。

辞める時に聞いたが、口をつぐんだままで、話そうともしなかった。

こう云う理不尽な事が横行する世の中で、他を信じたり、依り頼る事が如何に危険であるかを痛感した出来事だった。

では最終的に何を信じて生きてゆけば良いのか。

其れは、自分自身である。

此れは最後の砦である。

せめて己自身が己を愛し、信じてやらねば、誰が己を大切にしてくれるのか。

他人がしてくれる訳が無い。

こんな事を云われた事が在る。

「お前の側には余程思ってくれる人が居なかったんだな。中には本当に信頼し合って助けてくれる人が居る。お前の様な例は本当に少ない」

と.....。

否、吾から云わせれば、そう云う善人の様な人の方が少ない。

普段はしたり顔で、解った事を云っていても、助けを求められたら手の平を返す。

吾は、他人との関わりで初対面の挨拶でこう云う事にしている。

「初めまして◯◯です。何か在りましたら何でも云って下さい。聞く事しか出来ませんが

実際に頼られても何も出来ない。

自分自身の事でも何もやれていないのに、他人が如何に困っているからといって其の人を再起させてやる事は出来ない。少ない援助も出来ない。

財力や生活力、人間力等のバイタリティの在る人は出来るだろうが、無能で無力の吾は出来ない。

まぁ、こう云うスタンスで此れ迄生きて来た。

人脈も人望も皆無。

だが、そう云う煩わしさが無いのは身軽で良いと思っている。

人の心が壊れる事の要因の一つとして、謂れの無い嫌疑をかけられ陥れられる事。

吾の心が歪み、他人は疎か身内迄も信じる事が出来なくなったのも此の出来事がある。

人は皆自分が可愛いし、他人の不幸に微かな旨味を感じる。

哀しいかな此れこそが人間という生き物の真姿である。

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