偽史倭人伝 ~ Carnea Historia

march madness の次が April Foolなんて小粋ぢゃないか。

●果たして杉山登志の「メッセージ」は伝わったのか?

2006年08月29日 15時21分09秒 | ◎CMマニアックス
日本で最初のテレビCMが放送されたことを記念し制定された「テレビCMの日」。
「メッセージ」は伝説のCMディレクター杉山登志を題材にした「テレビCMの日」記念ドラマということらしい。
 単純にCM好きなのでちょっと気になってちらちらとザッピング(しかも「カンブリア宮殿」「SMAP×SMAP」と3つかけもちで(笑))。


  リッチでないのに
  リッチな世界などわかりません
  ハッピーでないのに
  ハッピーな世界などえがけません
  「夢」がないのに
  「夢」をうることなどは……とても
  嘘をついてもばれるものです

これが37歳の若さで自ら命を絶ったクリエイターが最後に残した文章。
なるほどと勝手に納得してたら、杉山登志の弟で杉山組のチーフ・カメラマンだった、伝命(藤竜也)と同じく登志の盟友であり、内山理名扮する主人公・松本佐和の上司でもある松岡(平泉成)と会話でしめるラストを見てズッコける


松岡「伝命さん」

伝命「うん」

松岡「今んなって思うんですよ…杉さんのあの言葉…あれは決してそれまでの自分を否定した遺書なんかじゃない。だって杉さんもおれたちもホントの意味でリッチだったし、夢があったし、絶対にウソなんかやらなかった。
つまりね杉さんのあの言葉は、自分はそういう恥ずかしいことはひとつもしてなかったという…総括であり、宣言なんだっだって…。
 いや、まぁ、それだけじゃなくね、きっと…33年経ってもまだ生きている俺たちへの…いや…あの時の未来…つまり、今の時代へのメッセージでもあったんじゃないだろうか…って。
 いつからですかね、金が欲しい、仕事はカネのためにやってるんだって平気な顔で言える人間ばかりになっちまったのは…。
 どうして減らせますか…人が住む、マンションの鉄筋の数

伝命「(笑)ホントだ」

松岡「会社と共に何十年も働いてきた社員を無視して自分の金儲けのためだけで…人の会社を手に入れる。何ひとつモノも作らず…ただ株を動かすだけで大金を手にする。そんな人間がもてはやされたり、憧れの対象になるようじゃ…この国は終わりですよ。
 そりゃね…誰だって…金は欲しいですよ。でもね、人からそういうやつだって思われるのが…いちばん恥ずかしいことだったじゃないですか?
伝命「…たしかに」

松岡「杉山登志が書き残したのは…そういうことでしょう。それなのに杉さんの思いなんて…まるで伝わってないような気がして…」
「伝わってるよ」

松岡「えー?」

伝命「ちゃーんと伝わってるさ」

松岡「はぁ」
「あの娘、どうしてる?」

松岡「ああね佐和ですか?」

伝命「うん」

松岡「あいかわらず走り回ってますよ」
「松岡、おれ思うんだ。兄貴が生きていたら、あの子可愛がっていたろうね。へへっ(笑)」

松岡「初めてですねぇ…伝命さん、おれたちの前では、絶対に、杉さんのこと…兄貴って呼ばなかったから」

伝命「ウッハッハッ(笑)そうだったっけ?」

松岡「はい」

伝命「えっははは(笑)」

(最後の数行はどうでもいいけど、意図的になにかカットしたと思われないために…)

 なんで、そういう都合のいい解釈になっちゃうんだよ(笑)
そもそも自分の人生、全肯定してたヒトが自殺なんかするかっつーの。
え?
いままでは嘘をついてなかったけど、今後それを続けるのはムリ、あるいはクォリティを維持できないといういきづまり?
それでもいいけど、…この文章がなかったら…ね。

この“遺文”はあきらかにいままでの自分は嘘をついていたという文脈。
突っ走ってるころの登志の
「嘘をつかない」
というのは映像作品の完成度という次元のハナシ。

“遺文”は、そのCMが訴えかける先にあるものに彼は気が付いたのだと解釈するのが自然

そう考えると高度成長で汚れ行く海での撮影中に登志がもらした

「もしかしらた、俺たちの作ってる物は、海汚す手助けしてるのかもしれないな」

という言葉は、コワイくらいに“遺文”と呼応する。

最後の会話で「マンション偽装」とか「ヒルズ族」のネタを持ってきて、うまく荒廃した現代社会を斬ったつもりなんだろうが、あの時代がいい時代で今はダメな時代だという線引きに違和感がある。
 公害問題などの登場と共に経済優先の悪夢はすでに始まっていたのだ。風船いっぱいに溜まっていた毒が規制緩和という針を刺されいっきに吹き出した。それだけのはなしだ。

 そしてCMというのはまさにその大量消費時代のリーダーでもあったのだ。

 なんだか、亀田事件のTBS(製作は毎日放送)での放送だったり、商業アートシーンで高い評価を受けてきたのになぜか「椿キャンペーン」などとという“質より量”の戦略に走ってしまった資生堂がスポンサーというのが象徴的だった気がする。

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