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ヒューマン・ライツ・ウォッチ コンゴ民主共和国:反乱軍と政府軍による残虐なレイプ

コンゴ民主共和国:反乱軍と政府軍による残虐なレイプ

殆どはルワンダ反乱軍によって180を超える民間人が殺害

(ニューヨーク2009年4月8日)-2009年1月以来、コンゴ民主共和国東部にある不安定な南キブ州及び北キブ州で、ルワンダ反乱軍と政府軍兵士及びその同盟勢力が、少なくとも90名の女性と少女をレイプした、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。同じ期間に180名の民間人が殺害されているが、その殆どにルワンダ反乱軍が関与している。

 

国連安全保障理事会は、コンゴ平和維持軍に関しての国連事務総長による最新の報告を4月9日に議論する予定だが、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、コンゴ軍から人権侵害を行なう者を排除し、女性と少女への襲撃などの人権侵害を止めるようコンゴ政府に働きかける事を安全保障理事会に呼びかけた。

 

ルワンダ解放民主軍(FDLR)と名乗るフツ族ルワンダ人民兵が最近数週間、マシシとルベロ(Lubero)地方(北キブ州)及びカレヘ(Kalehe)地方(南キブ州)にある数十の村や町を焼き討ちし、数多くの計画的殺人・レイプ・略奪を行っている。政府軍にその責任を負わせつつ、FDLRは計画的に民間人を標的にし、彼らを人間の盾として使い、民間人が自分たちを裏切ったとして非難した。ヒューマン・ライツ・ウォッチが行なった犠牲者や目撃者に対する聞き取り調査によれば、FDLRは1月23日以降、少なくとも154名の殺人事件に関与している。

 

「FDLRは自分たちに対する軍事行動への明確な刑罰として、コンゴ民間人を計画的に殺害・レイプしている。」とアネク・バン・ウーデンベルグ、ヒューマン・ライツ・ウォッチ上級調査員は述べた。「このような恐ろしい行為をした戦闘員とそれを許した反乱軍指揮官は、戦争犯罪の責任者である。」

 

FDLRは2009年1月20日に始まったコンゴとルワンダ両部隊による共同軍事作戦の後の1月と2月、一時的に軍事拠点から放逐された。2月24日にルワンダ軍が撤退し、軍事行動が終了したのを受けて、FDLRは従前の拠点の多くを再占領した。

 

最近4月初旬、ルベロ(Lubero)とワリカレ(Walikale)での襲撃の際、FDLRは少なくとも7名の民間人を殺害、24名を負傷させた。2009年3月20日には北キブ州のブヒュリ(Buhuli)及び近くの4村落を襲撃、女性2名、お年寄り男性1名、7歳の女の子1名、9歳の男の子1名の少なくとも5名の民間人を殺害。2月13日にはキポポ(Kipopo)の村を襲撃、少なくとも13名を自宅内で焼き殺している。

 

2月下旬には北キブ州マシシ(Masisi)地方のレメカ(Remeka)から少なくとも12名の女性と少女をFDLRは誘拐した。逃れてきた2名の女性は、FDLR戦闘員がレイプしようとした9名の女性と少女に抵抗され、残忍な手段で殺害したと伝えた。残りの女性たちの消息は不明である。

 

コンゴ政府軍もまた数多くのレイプに関与している。3月にコンゴ軍兵士は南部マシシ(Masisi)地方と北部カレヘ(Kalehe)地方で、少なくとも21名の女性と少女をレイプした。犠牲者の多くは兵士によるやりたい放題の略奪の際、暴力的にギャングレイプされた。

 

3月24日南キブ州のジラロ(Ziralo)出身の4名の女性が、市場からの帰り道、簡易バリケードにいた軍兵士の集団に呼び止められた。兵士たちは女性たちが持ち運んでいた食料が入っている袋を取り上げ、次に女性たちの膣に金が隠されていないか調べると言い、女性たちを近くの森に連れ込み、数時間に渡りギャングレイプした。被害者の女性の一人は妊娠6ヶ月だったが、あまりに残虐にレイプされたために胎児を死産してしまった。

 

反乱軍による最近の虐殺事件は、1月27日キブア(Kibua)の軍事拠点で人間の盾として使用していた民間人数十人を、FDLR戦闘員が切り殺した事件に続いてのものだ。キブア事件のある目撃者はヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に対して、FDLR戦闘員が10歳の少年をレンガ塀に叩きつけて殺害するのを見た、と語った。

 

国連によれば、従前の引き続く暴力を逃れた数十万の人々に加えて、1月以来推計25万の住民が家から逃げたそうである。

 

FDLRに対する作戦行動の次の局面を準備中であり、今度は南キブ州に作戦を拡大する、とコンゴ軍は言っている。人民防衛国民会議(CNDP)、コンゴ愛国抵抗連合(PARECO)その他地方民兵勢力など、前コンゴ人反乱軍勢力出身の兵士1万以上を、軍は増員した。以前敵同士であった者が早急に統合された軍団が、賃金や物資が与えられることなく、又正式な訓練を施されることもなく前線に送られ、将来の人権侵害発生の可能性を増大させている。

 

政府軍兵士による民間人に対する重大な虐待が既に報告されている。軍兵士は3月にルベロ(Lubero)地方で、やりたい放題の略奪の際、少なくとも5名の民間人を殺害。ジラロ(Ziralo)ではお年寄りの男性1名が、妻がレイプされ家を略奪されている際に殺害された。

 

早急な統合プロセスは、過去に人権侵害の重大な前歴がある者をコンゴ軍内で昇進させないよう及び軍内に入れないようする、正式な審査メカニズムを内包していない。

 

国際刑事裁判所(ICC)から少年兵を徴兵し戦闘に使用したとして戦争犯罪容疑で指名手配されている、ボスコ・ンタガンダ(Bosco Ntaganda)が2009年1月、コンゴ軍大将の地位に昇進させられた。ICCの容疑に加えて、ンタガンダは2008年11月北キブ州のキワンジャ(Kiwanja)で150名の民間人を虐殺した部隊の指揮をしていた、として非難されている。

 

ジーン-ピエール・ビヨヨ(Jean-Pierre Biyoyo)は、少年兵を徴兵した容疑で2006年3月にコンゴ軍事法廷で有罪判決を受け後に脱獄したにも拘らず、コンゴ軍大佐に最近指名された。ンタガンダとビヨヨ共に現在の軍事作戦で重要な役割を担っている。

 

コンゴ軍は、FDLRに対する軍事作戦で、コンゴ国連平和維持活動、MONUCによって支援される予定である。MONUCは民間人保護を最優先事項にすると述べているが、FDLRやコンゴ軍兵士のいずれかのよる更なる襲撃に対して、どのように民間人がほごされるのか?については明確でない。

 

「民間人保護は、人権侵害を行った事が知られている者がコンゴ軍から排除されて始めて、真剣に受け止められる。」と、バン・ウーデンバーグは述べた。「国連安全保障理事会は、軍事作戦の支援をする前に、何時逮捕するのか?自軍による更なるレイプや殺人を止めさせるために何をするのか?に関してコンゴ政府から直ちに回答を求めるべきである。

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