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その夜は、夕方からの霧雨で客は私が一人・・・小指を立ててグラスを傾けていた。
暫らく飲んでいると、店の戸が開き客が一人入って来た・・・何だか顔が青ざめている。
ママが水割りを置くと、軽く会釈をして一口飲んだ男はフーとため息をついた。
ママ・・「何か有ったの?」 心配顔で聞く。
男・・・「うん、チョットねっ」 男は何かを語り掛けたそうにママを見て、再びため息をつ いた。 店の女性が男の前に来た。
女性・・「心配事なら話した方が楽になりますよ・・・差し支えなければ話されては?」
優しく語りかける女性を見た男は、重い口を開いた。
男・・・「実は昨夜の事なんだけど・・・誰にも言わないでくれるか?」念を押しておもむろ に口を開いた。
男・・・「実は昨夜、しゅうまいが食べたいと5歳の娘が言うので、近くに出来た店に買いに行った。
少し飲んでいたので小雨が降っていたが歩いてねっ!・・娘と一緒に傘を差してね! 家の近くは田舎だから行くまでに神社が何箇所か有るんだ。
10個買って所々に点いている街灯の下を通って帰りを急いだ。
初めの神社の前に来た時に、しゅうまいが食べたいと言い出した・・帰ってからと言ったのだが、どうしてもと言うので蓋を取って1個食べさせた。
9個残った箱に蓋をして、街灯が点いている次の神社の前に来た時に、また娘が食べたいと言い出したので、仕方なく蓋を取った・・・小雨に煙る夜の神社は余り気持ちの良いものではない! 9個入っていた筈のしゅうまいが5個に減っている。
不気味に思ったが娘の手前顔に出すわけにはいかない・・娘に、帰ってからと言って蓋をして帰りを急いだ」
男の話に興味を示しながら、無言で聞き入るママ達と私・・・怖々聞く私達を見つめながら男の話は続く。
男・・・「暫らく行くと最後の神社有る・・小雨に煙り、街灯に照らされた夜の神社! その神社の前に来た時、再び娘が食べたいと言い出した・・・しつこくせがまれた私は、仕方なく蓋を取って食べさせようとした。 蓋を開けると、5個有った筈のしゅうまいが3個しか無い! 何かが変だと感じた私は慌てて蓋をし、娘の手を引き急いで家に帰って来た。 そして、家族の前で開けたしゅうまいの蓋・・・」
戦慄の中、固唾を呑んで聞いている私達!
店の女性・・「それで、如何なったの?・・」
恐る恐る聞く・・・
男・・・「何と! しゅうまいが全部無い!・・ぎゃー」
身の毛もよだつ恐怖!!! 腰を抜かさんばかりに見たしゅうまいの蓋! 9個のしゅうまいが全部、蓋に付いていた・・・お後が宜しいようで・・・
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