現代短歌の好きな人で岡井隆を知らない人はいないだろう。ロック好きと言って、ローリングストーンズを知らないようなものである。
僕はロックも短歌も好きだが、実はあまり岡井隆の歌を知らない。何首か指で数える程度の歌を知っているくらいである。
この歌集は、2010年から約一年間、ふらんす堂のホームページに掲載された短歌日記を収めてある。短歌日記とは、一日一首歌を詠むのだそうである。岡井隆はこの当時、80歳を超えていたと言うから、それだけで大変な労力を費やしたように思われる。
しかし、実際の歌日記を読んでみると、実にユーモラスで大胆で快活な歌がたくさんある。
また以前から岡井隆の短歌を読んでいて思ったのは、そのダンディズムというか、粘り気のある男らしさみたいなものを感じていたのであるが、この歌集でも存分にその粋な精神が表れている。あとがきにも自ら記しているように、岡井隆は自らのナルシズム精神をよくわかっていながら歌を詠んでいたのであろうと思われて、そういう歌人を僕は他にあまり知らないので、素直にかっこいい人だな、と感じられた。
この歌集には短歌に加えて外国の詩や俳句などが添えられて、それらが合わせ技として効いているのであるが、中原中也の『汚れちまった悲しみに…』とか、僕が知っている詩もあって、そういうのも見ていて楽しかった。
まぁなんにせよ、やっぱり短歌は面白い文化だなと思うし、岡井隆もあとがきに、日本に詩や短歌や俳句や川柳が併存することを喜んでいる、と記しているが、僕も全く同感で、こういう豊かな文化が日本にはたくさんあったんだなぁと思うし、それが今でもちゃんと残っているのが嬉しく思う。
では最後に好きな歌を一首。
インフルを注射して来た二人である 一人は軽くエンザに罹って