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財務相もバカではないのか

2006-12-05 14:30:45 | 証券税制
 まず、2003年以前の証券税制、および03年に改悪された今の証券税制について、おさらいをしてみよう。

 まず株の譲渡益に対する税だが、正しくは「キャピタル・ゲイン課税」と呼ぶ。02年まで投資家は、確定申告が必要な申告分離課税と、確定申告が不要な源泉分離課税のどちらかを選択することができた。

 これが03年以降、申告分離に一本化され、譲渡益が出た場合、譲渡益の10%を払う決まりになった。申告分離では、譲渡して損をした場合は税を支払う必要がない。もちろん、年間の譲渡損と譲渡益を差し引きして損益を算出する。

 で、02年まで申告分離の税率は26%だった。これを「03年以降は20%に引き下げ、さらに03~07年までは特例として10%にする」というのが、今のキャピタル・ゲイン課税である。

 確かに、これだけを見れば、「今の税率は低すぎるので、本来の20%に戻すべきだ」との政府税調、財務省の言い分はもっともらしく聞こえる。だが、02年まで申告分離で税を払う個人投資家など、ほとんどいなかったのだから、低すぎるというのは的外れな言い分である。

 あらためて証券会社に勤める知人に聞いてみたのだが、02年以前、申告分離を選択していた個人投資家は「記憶にないほど少ない」という。正確な数字は不明だが、9割以上の個人投資家が源泉分離を選んでいたのは間違いないと思う。

 源泉分離は譲渡益と譲渡損の差し引きができず、大儲けしようが大損しようが、株の売却代金の1.05%を徴収されるというもの。「確定申告の必要がない」「大儲けした場合の税負担が軽い」などの理由で、圧倒的多数の個人投資家に支持されていた。

 仮に50万円で買った株を100万円で売った場合、譲渡益は50万円だ。今の申告分離では譲渡益50万円の10%の5万円が税負担になるが、源泉分離では売却代金100万円の1.05%のわずか1万500円で済んだ。

 ところが02年当時、日本株は日経平均が1万円割れするなど泥沼の状態で、大幅利食いできる個人投資家など皆無に等しかった。さらに個人投資家の数も、今よりずっと少なかったために、政府にしても税制の改悪を強行することができたのではないか。

 むろん当時、証券業界も、この改悪に反対した。だが、政府の「当分の間(07年まで)は20%を10%にする」という折衷案に、業界の重鎮たちも折れてしまったのである。ちなみに、最も無責任な重鎮は某大証券の元社長で、今ではボケ老人になりはてているはずだ。

 と、簡単に経緯を記したが、私としても今さら「源泉分離に戻せ」とはいわない。「株で儲けたら、儲けた分に応じて税を支払う」という申告分離の考え方自体も間違っていないと思う。だが、「26%→20%→10%に税を減らした」との政府税調、尾身財務相の言い分は絶対におかしい。個人投資家にとっては、源泉分離の廃止こそ大増税だったからである。

 さらにいうと、源泉分離の廃止は「株を長期で持って大儲けしたい」という一般の個人投資家を減らし、損切りを頻繁に行う短期売買を助長したように思う。申告分離では損を出した場合に税を支払う必要がないし、譲渡益との差し引きができるからである。証券業界も短期売買が増え、手数料が稼げると踏んだから、最後には政府に迎合したのではないか。

 さて、日本は資本主義国家なのだから、国際的に見ても少ない国内の個人投資家を増やし、何よりも日本株の価値を上げなくてはならない。ところが今、日本株は他国の隆盛ぶりとは裏腹に低迷している。

 そんな時期に、なぜ増税を行うのか? 10%を20%に増税すれば、これはたいへんな悪材料で、株価の上昇を妨げ、ヘタをすれば大暴落を呼ぶ。個人投資家も、増えるどころか市場から去っていく。

 しかも申告分離では、株価が上がって投資家に利益がもたらされない限り、税収アップも見込めないのである。誰も儲からなければ税収はゼロだ。だから、政府税調も尾身財務相も、目先のことしか考えていないバカタレだというのである。
  

 

 

 

 




 

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