多摩爺の「時のつれづれ(師走の62)」
ふるさとの米農家あるある
先日、田舎(女房の実家)から持って帰ったお米を精米して、息子家族のところに持って行くと、
一時期の高値というほどではないものの、
依然として「お米の値段が高いので助かります。」と・・・ 嫁がこぼしていた。
我が家には、秋に帰郷したとき持って帰った、女房の実家でご近所さんに作ってもらったお米があり、
そのストックが、まだ70キロぐらいあるので、
「お米が少なくなったら、遠慮なく言ってね。」と伝えると、
「最近、子どもたちがたくさん食べるので、ホントに助かります。」と、思わず笑みがこぼれた。
お米の値段が下がってこないのは、農協を中心にしたシステムに問題があると思う人が多いようだが、
お米の販売は自由化されていて、農協が買い上げて流通に回しているのは6割程度で、
農家が直接販売しているのが3割ぐらいあり、ネットを活用した販売が最近増えているらしく、
農協に責任を問うのは・・・ ちょっと違うような気がしている。
女房の実家で、お米を作ってもらってる近所(農家)の方は・・・ 所謂、団塊の世代だが、
義父とのつながりもあって、お米を作ってもらっている。
女房たち三姉弟がいただけるお米は僅かで、大半はその方の販売に回るのだが、
別扱いで、少し安く分けていただいるので不満はない。
帰郷の度に、夜は実家で一席を設けて痛飲すること・・・ すでに3年、
先輩方の声を聞けば、地域の農家では高齢化が進み、米作りを止めた家もけっこうあり、
「わしらぁも、後を継ぐものがおらんので、体がへばったら終わりじゃけぇ。」が、毎度の常套句で、
「まぁ、とにかく元気で頑張ってください。」と返すのもまた・・・ 毎度の常套句になっている。
なにが言いたいのかというと、農業に従事する労働人口が高齢化し、人手不足なのである。
人手不足なんだから、作る米の量もだんだん減ってくるし、
「わしらぁも頑ばっちょるが、悪ぃが値段が上がるのは勘弁してくれぇ。」とのことだった。
「人が減ったら、機械に頼らんとやれんのじゃが・・・ これがすっごく高こうて、
農協はカネを貸してくれるが、年寄りがローンを組んだまま、あの世に行ってしもうたら、
子どもらぁに顔向けが出来んけぇのぉ。」といった本音のあと、
「最近の農協は、農業よりも金貸しと保険と葬祭に一生懸命じゃけぇ。」との愚痴も飛び出した。
さらに政治に向けても・・・ 農家の思いは厳しかった。
「政府も野党も時給を上げるっちゅうが、わしらぁ時給じゃないし、週休二日も、有休も関係ないし、
365日ちゅうたら大袈裟じゃけど、米が高こう売れるかどうかだけしかないけぇ、
時給、時給ちゅうて云われても・・・ ピンと来んのよ。」と、至極真っ当な農家あるあるだ。
そして「わしらぁも、あと5~6年したら平均寿命を超えるけぇのぉ、
早よう死ぬつもりはないんじゃけど、わしらがおらんようになったときのことも、
あんたらぁも、ちぃと考えちょかんといけんと思うよ。」と諭されたところで宴会はお開きになる。
ホントに先輩方の云うとおりだと思うものの、
近所にも親戚にも、頼る人が居ないのが現実だから・・・ 少々耳が痛い。
日本中の何処も彼処も・・・ ふるさとのようなことになってるとは思わないが、
私の世代か、もう少し先輩方を中心に、高齢となった親たちが、この国の米作りを支えていて、
何件かの農家が助け合って、古い機械を使い回している現実を、
お米が高いと云ってる人々のうち、果たしてどれだけの人々が知っているのだろうか?
私が小さい頃は・・・ お茶碗からご飯を溢そうものなら、
「溢さないように食べんと、目が潰れるよ。」と、差別的な表現で叱られ、
「お百姓さんに申し訳ないよ。」と、云われ続けて大きくなったが、
そんな言葉もいまは・・・ おそらく禁句というか、死語になっているようである。
お米が高いことに・・・ お怒りはご尤もだし、こんなこと云っちゃ身も蓋もないが、
お百姓さんが手を抜いてるわけじゃないし、農協がサボってるわけでもない。
にも拘らず・・・ いろんな物が高くなっても、メディアはしれっと報道するだけで、
お米だけは、必要以上に力が入るのは・・・ なぜなんだろうか?
どこかで誰かが、流通の過程で悪さを仕掛けて、儲けてる輩が居るのかもしれないが、
法律に触れてなければ、需要と供給のバランスのなかで、
高く買ってくれるところに、物が流れていくのは商売の常であって、
そこに感情が介入したら・・・ それはそれで別の意味で問題になるだろう。
お米は安いにこしたことはないが、問題の根源が高齢化と職業選択の自由にあると捉えれば、
政府が農家に向けて、直接補助金を出して支援するという案もあるにはあるが、
一方でそれは、補助金の大小に拘らず、定年退職とは無縁の、終身の特別公務員を雇ったに等しく、
これはこれで新たな問題になりかねず・・・ いささかややこしい。
旧ソビエト連邦では、ソフホーズ(集団農場)、コルホーズ(国営農場)という、
アルバイト感覚で組織化された農民たちが、
土地と工具を共同で所有し、共同で作業(農業)を行い、賃金を得ていたと学んだが、
それは150年前の江戸時代に戻れというのと似たようなもので・・・ この国には馴染まない。
まっ、知恵がないので、いくら能書きを垂れても良い案が浮かばないので、
小難しいことは、偉い先生方に任すとするが、
それにつけても、お米はいつになったらお手頃価格になるのだろうか?
いまのところ我が家に、お米の心配はないものの、
嫁がこぼした、なに気ないひと言が、気になって仕方がないが、
農家の事情も知ってるだけに・・・ なんともはや返す言葉がみつからない。
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