PIZZICATO FIVE / 悲しい歌
PIZZICATO FIVEの『悲しい歌』はとても悲しい。『陽の当たる大通り』よりも悲しく、『きみみたいにきれいな女の子』よりも悲しいと続けたらわかってくれるだろうか。君に聴かせたくないほどに悲しい歌なのだけれど、その悲しい歌を野宮真貴が歌うとどうなるだろう。悲しむどころか力強く精神活動は活発になり、生命力は滾り続ける。野宮真貴の声は野宮真貴だけのものであり、小西康陽は実は業界でもずば抜けたメロディメーカーであることがわかってしまった。『女性上位時代』からこの日は約束されていたとしか思えないような表現力と音楽性は後にも先にも出現は難しい天上の域に達したアーティスト・コンビが制作した最高傑作である。しかしこれも傑作で同じアルバムに収められた対極的な『catwalk』との綱引きもいいかもしれない。それだけに『ロマンティーク96』はPIZZICATO FIVEのエッセンスが散りばめられた最高のアルバムだということだ。