〇 必要な場面が増えているモバイルバッテリー、失敗しない選び方と注意点。
スマホなど持ち歩くデジタル機器が多くなったことで、モバイルバッテリーが必要となる場面が増えている。こちらはいわば、充電式の電池(バッテリー)を内蔵したUSB充電器だ。モバイルという名前の通り、持ち歩くことを前提にしている。
持ち歩くか、家に常備か 何を何台充電したいのか。
モバイルバッテリーをいざ購入するとなると、さまざまな製品群を前に選択に迷ってしまう。本パートではモバイルバッテリーの購入で失敗しないための、選び方のポイントを解説しよう。
まず検討したいのが利用目的だ。持ち歩くのか、停電に備えて家に常備しておくのか、あるいは何を何台充電したいのか……。自分なりの目的や利用シーンを明確にしておく。
常に持ち歩くなら、なるべく小型かつ軽量な製品がお薦めだ(図1)。「大は小を兼ねる」作戦で大容量製品を購入しても、重くてかさばり、結局、持ち歩かなくなっては意味がない。
図1、日常的に携帯するなら容量に加えて大きさや重さも重要な選択ポイントとなる。持ち歩かず、停電に備えるなどの目的で家に常備しておくなら容量重視で選べばよい。
とはいえ、バッテリー容量が足りなくては本末転倒だ。スマホやタブレット、パソコンなど、何を何台充電したいのかをきちんと想定する(図2)。家に常備する場合も同様で、目的が明確になれば必要なバッテリー容量がわかり、製品の選択肢が絞られてくる。
図2、何を何台充電したいのかを明確にして、それに見合った容量(mAh)のモバイルバッテリーを選ぶ[注]。
[注]Windowsのバッテリーレポートなどで表示されるパソコンのバッテリー容量の単位はmWh (mAh×V)。モバイルバッテリーは3.7Vなので、容量(mAh)に3.7Vを掛けるとmWh単位になる。図2ではモバイルノートが最低30000mWhとして、3.7Vで割った約8000mAhを目安とした。
スマホなどのバッテリー容量は、メーカーが公表している仕様表などで確認できる(図3)。
図3、パソコンやスマホなどのバッテリー容量はメーカーが公表しているスペックで確認できる。厳密でなくてよいなら、図2の目安を参考にするとよい。
実際に使えるmAhは7割 スマホは5000と想定。
モバイルバッテリーで注意したいのは、スペックに記載されている容量(mAh)すべてが使えるわけではないこと。例えばスマホ(5V)を充電する場合、モバイルバッテリーの電圧(3.7V)を5Vに変換する必要がある。この電圧変換などにより30%程度のロスが発生する(図4)。例えば2万mAhのモバイルバッテリーなら7割を掛けた1万4000mAhが実質的に充電可能な容量になる。
図4、モバイルバッテリーの仕様表に記載されている電池容量は100%利用することはできない。例えばスマホ(充電圧5V)を充電する際にはモバイルバッテリーの電圧(3.7V)を5Vに変換する必要があり、3割程度の変換ロスが生じる。実際に使える容量は70%ほどと見積もるとよい。
なお、大ざっぱにスマホの充電回数を計算したい場合は、スマホのバッテリー容量を大きめの5000mAhと見積もるとよい(図5)。モバイルバッテリーのスペック容量に7割を掛けた値をそれで割れば回数の目安になる。
図5、スマホのバッテリー容量を調べるのが面倒なら5000mAhを目安にするとよい。モバイルバッテリーのメーカーの多くはそれを目安に製品を開発しているからだ。スマホのみを充電する場合、回数の目安は上の通り。
モバイルバッテリーを選ぶ際は充電端子の種類や数も確認する(図6)。併せて急速充電対応の有無も要チェックだ(図7)。特にパソコンを充電したい場合は、少なくとも30W以上のUSB PD出力に対応している必要がある。また、60Wを超えた電力で充電する場合は充電器と同様に、eMarkerやEPRに対応したタイプCケーブルが必要になる(図8)。
図6 必要な端子があるかも要チェック。モバイルバッテリーの端子も使用する数によって各端子の出力電力が変わる製品が多い。メーカーのスペックで要確認だ。
図7、少しでも速く充電したいなら、充電したい機器が対応する急速充電規格に対応しているモバイルバッテリーを選ぼう。モバイルバッテリーが対応する主な急速充電規格は表の通り。このほかアンカーの「PowerIQ」など、バッテリーメーカー独自の急速充電規格もある。
図8、USB PDによるパソコンの充電に対応した大出力のモバイルバッテリーもある。前述した充電器と同様に、60W超ではeMarkerを搭載した5A対応Type-Cケーブルが必要となる。100W超での注意点も充電器と同様。