〇 AndroidスマホやタブレットとWindows PCの間で、無線通信によりファイルを簡単に送受信できる「Windows用ニアバイシェア」アプリが、米Google(グーグル)から登場した。今回は、このWindows用ニアバイシェアの使い方を見ていく。
Windowsにアプリをインストールすると利用可能に。
元々Windowsは、「近距離共有」という近距離通信機能を搭載している。近距離共有は、ネットワークに接続しなくても、端末同士でファイルを送受信できる仕組みである。だが、この近距離共有を利用できるのは、Windows PC同士に限られていた。それに加えて、Windows用のニアバイシェアのアプリをPCへインストールすることで、Androidスマホやタブレットとも近距離通信を利用できるようになった。
ニアバイシェアは、ファイル転送に「Wi-Fi Direct」を使う。Wi-Fi Directは、Wi-Fi Allianceが定めた近距離通信の規格で、インターネット接続やWi-Fiルーターを介さず機器同士が直接接続できる仕組みである。機器同士で近距離通信をするには、最初にBluetoothを利用して付近にある通信可能な端末を検索する。端末を発見しファイルの送信を実行すると、Bluetoothを使ってWi-Fi接続に必要な情報を受け渡す。その後、双方のWi-Fi設定を自動変更し、Wi-Fiで直接接続してファイルを転送する。
Windows用ニアバイシェアの動作条件として、64ビット版のWindows 10以降、BluetoothアダプターとWi-Fiアダプターの搭載を必須としている。
現在販売されているWindowsノートPCのほぼすべてが、Bluetoothアダプターを搭載している。つまりノートPCであれば基本的に機器の追加は不要だが、デスクトップPCの場合はBluetoothアダプターを持たない機種もあるので注意したい。筆者が確認したところ、Bluetoothアダプターを持たないデスクトップPCに、USB接続のBluetoothアダプターを追加した環境でも、ニアバイシェアによるファイルの送受信が可能だった。
グーグルによるヘルプでは、利用できる環境として、送受信する機器との距離が5メートル以内、送受信側の機器同士が同一のネットワーク(Wi-Fiルーター)に接続する必要があるとしている。なお参考までに、筆者が確認したところ同一ネットワークに接続していなくてもニアバイシェアによるファイル転送は可能だった。また、Wi-Fiアダプターを搭載しないデスクトップPCでも、Bluetoothアダプターがあれば周囲の機器を検出し、Bluetoothによる無線のファイル転送をしていた。ただし、Bluetoothによる転送はWi-Fiと比べるとかなり遅い。
ファイルやフォルダーの送受信を始めるには設定変更が必要。
Windows用ニアバイシェアのアプリをインストールしたあとは、アプリが通知領域に常駐し、アイコンをクリックすると起動する。初回起動時はGoogleアカウントへのログインを促される。ニアバイシェアはGoogleアカウントにログインしなくても利用できるが、その場合、受信のアクセス制限など一部機能の利用が制限される。
Googleアカウントへのログインが完了したら、周囲に告知する端末名と、受信範囲を設定する。初期設定では「誰にも公開しない」で受信できない設定なので、自分の端末からのみ受け取るなら「自分のデバイス」、「連絡先」に登録した人が送ったものだけ受け取るなら「連絡先に限定」、すべての人から受け取るなら「全員」のいずれかに変更すると、ニアバイシェアでファイルやフォルダーを受け取ることができる。
ファイルやフォルダーを送信するのみであれば、公開範囲の設定は「誰にも公開しない」のままでもよい。初期設定が完了すると、アプリはタスクバーに常駐する。それをダブルクリックすると、アプリが開く。
接続先のAndroidスマホやタブレット側では、ファイルを送信するだけであれば、Wi-FiとBluetoothがオンになっていれば、その他の設定変更はいらない。ファイルを受信するなら、「設定」の「接続の詳細設定」にある「ニアバイシェア」を開く。「デバイスの公開設定」のスイッチをオンに切り替えると、ファイルを受信できるようになる。「デバイスの公開設定」の文字列をタップすることで、公開範囲も設定できる。
ファイルの送り方はPCとスマホ・タブレットで少し違うがいずれも簡単。
ニアバイシェアによるファイル送信の操作はPCとAndroidスマホやタブレットで少し違うが、いずれも簡単だ。
ニアバイシェアを使ってWindows PCからAndroidスマホやタブレットへファイルやフォルダーを送信するには、アプリにエクスプローラーから送信したいファイルやフォルダーをドラッグ・アンド・ドロップするか、アプリの「ファイルを選択またはフォルダを選択」を開いて送信するファイルやフォルダーを指定する。このほかの方法として、エクスプローラーで送信したいファイルやフォルダーを選択後、右クリックメニューから「ニアバイシェア」を選ぶと、ニアバイシェアアプリに受け渡される。
送信したいファイルやフォルダーを指定すると、周囲の端末を検索しアプリの「付近のデバイス」欄に一覧表示する。その中から送信先を選べばよい。この際、スマホやタブレットのロックは解除しておかないと、一覧に表示されないことがある。
送信できる状態になると、送信先に通知が表示されファイルを送信する。AndroidスマホやタブレットでPCから受信したファイルは、端末内の「Download」フォルダーに保存される。
スマホやタブレットからファイルを送信するには、各アプリで送信したいファイルやフォルダーを選択し、共有アイコンをタップ後、ニアバイシェアを選ぶ。例えばスマホで撮影した動画をPCに送る場合、「フォト」アプリを起動して送信したい動画ファイルを選んだら、共有アイコンをタップし、ニアバイシェアを選ぶ。
共有でニアバイシェアを選ぶと、周囲のニアバイシェアを利用できる端末を検索し、しばらくするとリストを表示する。そこで一覧から送信先を選ぶ。PCには通知が表示され、ファイルの転送を開始する。
Windows用ニアバイシェアはアプリのインストールが必要になるものの、一度設定を済ませてしまえば、PCからスマホやタブレット、またはその逆のファイルのやりとりが格段にしやすくなる。もしWindows PCとAndroid端末の組み合わせを使っている人であれば、是非入れておきたいアプリだ。