〇 人とのパートナーシップはどう変わる?
米インテルが「AI PC」と名付けた新プラットフォームを発表したことで、業界が大きく動き始めている。
中国レノボは「CES 2024」において、キーボードや音声を通じて利用できるAIアシスタントの導入を発表。従来のアシスタント機能とは異なり、オンデバイスで動作しながらも、大規模言語モデルと同様に会話の文脈を理解し、パソコンを円滑に使いこなす機能を実装するという。
ディスプレイやパフォーマンスの設定を確認・変更したり、メールやドキュメントを検索・要約したりと、ユーザーが手順を覚えていない場合でもAIを通じて指示可能になる。
もっとも、こうしたAIの活用は遅かれ早かれ、全てのパソコンに広がる。なぜならWindows自身が進化の方向をAIに定めたからだ。
AI呼び出しキーが登場。
米マイクロソフトは、生成AIを活用した機能を総称するブランドとして「Copilot(副操縦士)」を採用している。そして今回、Windows 11のキーボードに[Copilot]キーを配置し、いつでも生成AIを呼び出せるようにすると発表した。
画1、使い勝手の面でも“AIレディー”に。
米マイクロソフトが発表した[Copilot]キー。同社の「Surface」シリーズを筆頭に、Windowsパソコンへの採用が広がりそうだ。(出所:同社の発表ビデオ)
キーボードに新しいキーが追加定義されるのは実に30年ぶりのこと。前回、「アプリケーション」キーと同時に追加された[Windows]キーは、操作を始める際に押すことで何らかの機能を呼び出せる、探せるというキーだった。キーを追加しただけとはいえ、その影響は小さくなかった。
30年を経て、Windowsの操作はリテラシーの一部となり、特別なキーはその役割を終えつつあった。だが、生成AIが急速に進化、普及する中で再度活用を促すことになる。
パソコンを利用している最中、何らかのアシスタントが欲しいと感じたときに[Copilot]キーを押せば、その時々のシチュエーションに応じたAI機能を呼び出せるわけだ。
例えば、現在「ChatGPT」は多言語でWebを検索し、情報を擦り合わせた上で検索結果を任意の言語で表示できる。もちろん、文脈を考慮しているため、一連の会話の中では細かな指示は省略しながら自然な会話で目的の情報、結果が得られる。
[Copilot]キーの追加は、Windowsのシステムだけでなく、その上で動作するアプリケーションのAI機能活用も前に進めることになるだろう。それに伴って、NPUの活用や重要性も高まり、今後のSoC開発においてNPU性能がいっそう重視されるようになっていくはずだ。
2024年春には新しいキーを搭載するパソコンが店頭に並び、年末には多様なアプリケーションが[Copilot]キーを起点にした機能を搭載するようになる。
NPUの活用で一歩先を行く米アップルは、開発者に対して画像生成AI「Stable Diffusion」のNeural Engine最適化バージョンと著作権フリーで使える標準モデルデータを提供している。これらは全てデバイス上で動作するため、クラウドに対してプロンプトで指示する必要はないが、難点は遅いことだ。
言い換えれば、NPUはまだまだ何倍にも進化する余地を秘めている。CPU、GPUのパフォーマンス競争に加え、NPUのパフォーマンスによる競争がこれから本格化していくのは間違いない。