〇 通信障害や災害への対策にもなる、無料の公衆無線LANについて知っておきたいこと。
月末に携帯電話サービスから割り当てられた通信量を使い果たして困ったり、携帯電話サービスで通信障害が発生してスマホで通信・通話ができなくなったりした経験がある人は多いだろう。いざこうした状態になったとき困らないように、日ごろから対策を立てておくことが重要である。その対策手段の一つが、街中で使える無料の公衆無線LANサービスだ。今回はその使用法や使用上の注意点を見ていこう。
あらかじめ提供場所を押さえておく。
無料の公衆無線LANサービスは、フリーWi-Fiなどと呼ぶこともある。ショッピングセンターや飲食店、公共施設や駅、公共交通機関の車内など人が集まる場所に設置されていることが多い。
携帯電話サービスは電波が入る場所であればどこでも利用できるのに対して、公衆無線LANを利用できるのはサービスが提供されている付近のみとなる。そのため使える場所をあらかじめ覚えておくことをお勧めする。無料の公衆無線LANサービスが提供されている場所にはステッカーなどの掲示物があることが多いので、それを目安に使える場所を探すとよい。
画1、無料の公衆無線LANサービスを使える場所には掲示物がある。写真はサービスが利用可能であることを示す看板。(撮影:田代 祥吾)
サービスの提供終了や新規開始がそれなりの頻度で発生するのも、携帯電話サービスとは違うところだ。そのため身近な場所で使えるサービスの提供状況に関する情報をウォッチしておくことも大事だと言える。
使い方はサービスによって異なる。多くの場合、Wi-Fi設定画面でサービスが提供されているアクセスポイントに接続し、認証後に利用できる仕組みになっている。一方で多くはないが、アクセスポイントに接続するだけで利用できるサービスもある。
無料の公衆無線LANサービスが利用できる場所でパソコンやスマホのWi-Fi設定画面を開くと、アクセスポイントの一覧にそのサービスのSSIDが表示される。それらの多くは暗号化されておらず、一覧から選ぶだけで接続できる。接続するとWebブラウザーが開き、そのサービスの認証画面が表示される。そこで会員登録や認証を済ませると、インターネットにアクセス可能になる。
サービスによっては1回や1日の接続時間が決められているので、時間制限の有無や制限がある場合の時間を最初に確認しておこう。
画2、無料の公衆無線LANサービスを利用できる場所でWi-Fi設定画面を開くと、一覧にそのサービスのアクセスポイントが表示され、接続するとWebブラウザーで認証画面が開く。あとは画面の指示に従う。
(出所:NTTブロードバンドプラットフォーム)
携帯電話事業者が提供する無料サービスもある。
楽天モバイルを除く携帯電話事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)も、無料の公衆無線LANサービスを提供している。これらの事業者が提供する携帯電話サービスに加入しているなど条件を満たしていたら、使い方を覚えておいて損はない。
例えばNTTドコモが提供しているのは「d Wi-Fi」だ。「0001docomo」や「0000docomo」のSSIDでサービスを提供している。利用できる場所は多い。
d Wi-Fiを使うには事前に「dアカウント」の作成と「dポイントクラブ」への入会が必要だ。どちらも無料でNTTドコモの契約者以外も利用できる。同社のWebページ(https://dpoint.jp/guide/about_dpointclub/index.html)の案内に従ってdアカウントの作成とdポイントクラブの入会を済ませたら、d Wi-Fiの利用を申し込む。加入手続きは以上となる。
スマホやタブレットから接続するには、例えばAndroidの場合はアプリストアから「dアカウント設定」アプリをインストールし、「d Wi-Fi」の項目から「設定する」を選ぶと、Wi-Fiの接続設定が完了する。
パソコンから接続する場合は、2種類あるSSIDによって接続方法が異なる。0000docomoは、SSIDと暗号キーを入力し、接続後に表示された認証ページでd Wi-FiのIDやパスワードを入力して利用する。0001docomoは、IEEE 802.1X認証の設定をしてから利用する。こちらの設定は少し難しいが、設定を済ましておくとエリアに入った際に自動接続されるので便利だ。
画3、NTTドコモのd Wi-Fiは、同社のサービス契約者でなくても条件を満たせば無料で使える。画面はNTTドコモのWebサイトにあるサービス紹介ページ。
(出所:NTTドコモ)
セキュリティに注意が必要。
暗号化されていないWi-Fiへ接続する際は注意を要する。通信が傍受される危険性があるためだ。
最初にメールアドレスの登録やログインが必要なサービスの場合は、認証後に通信が暗号化される。一方で、暗号化されておらず認証も不要な無料の公衆無線LANサービスもある。
現在のWebサイトの大半はアドレスが「https」から始まっている。この場合はWebアクセスの通信が暗号化される。Webページの閲覧のみに使うのであれば盗聴のリスクは高くはない。
ただしメールソフトやアプリを使う際の通信など、Web以外の通信は暗号化されないことが多くリスクが高い。不安に思った場合は、トンネリングという技術を使って通信全体を暗号化してくれるVPNサービスを活用するとよい。
画5、VPNサービスを使うことで、暗号化されていない無料の公衆無線LANサービスに接続したときの通信内容の傍受を防ぐ。画面はノートンライフロックの「ノートン セキュア VPN」。料金は年間3290円(税込み)。
災害発生時に無料開放される00000JAPAN。
災害発生時に無料で開放される「00000JAPAN」という公衆無線LANサービスがあることも覚えておきたい。その名の通り、災害発生時に「00000JAPAN」というSSIDでサービスが提供される。公衆無線LANサービスを提供する事業者が、災害時に自社のサービスを無料開放する形で提供されている。現在は通信事業者のほか、自治体なども参加している。参加事業者や開放の履歴などの情報は、無線LANビジネス推進連絡会のWebサイト(https://www.wlan-business.org/customer/introduction/feature)で確認できるので見ておきたい。
災害発生時は、参加している事業者の公衆無線LANサービスが利用できる場所で、アクセスポイントの一覧に「00000JAPAN」が表示される。そこへデバイスのWi-Fi設定画面から接続すればよい。00000JAPANには暗号キーや認証などは設定されないため、Wi-Fiに接続するだけでインターネットを利用できる。
画6、災害発生時に「00000JAPAN」というSSIDで無料開放される公衆無線LANサービスがある。画面は無線LANビジネス推進連絡会による00000JAPANの説明ページ。(出所:無線LANビジネス推進連絡会)