◯ 互換ペンが驚きの進化、本家より優れた点もある。
iPad mini(第6世代)用にApple Pencilが必要になった。筆者は悩んだ末に、サードパーティー製のいわゆる「互換ペン」を購入した。Apple Pencilのように使える製品である。
以前にも同様の製品を何種類か試したことがあるが、明らかに性能が良くなっていて驚いた。いくつかのこだわりを捨てれば、Apple Pencilの代用品に十分なると思う。
そこで今回は、互換ペンがどこまでApple Pencilに迫っているか、レビューを交えて紹介しよう。
Apple Pencilを高いと思ってしまった。
iPad mini(第6世代)に対応するApple Pencil(第2世代)の直販価格は2万1800円(税込み、以下同)である。今まで周囲には「性能を考えればApple Pencilは全然高くないよ」と言っていた。にもかかわらず、今回は高いと思ってしまった。これには価格以外の要因がある。
現在のApple Pencilのラインアップは、Apple Pencil Pro、Apple Pencil(第2世代)、Apple Pencil(第1世代)、Apple Pencil(USB-C)の4種類。現行iPadへの対応状況を見ると、上位のApple Pencil Proは、iPad Pro(M4)とiPad Air(M2)に対応。下位のApple Pencil(USB-C)は比較的安価なモデルに対応しており、役割が分担されている。
現行のiPadでApple Pencil(第2世代)に対応しているモデルはiPad mini(第6世代)のみ。iPad miniの次世代モデルがApple Pencil(第2世代)に対応しなければ、今後登場するiPadではApple Pencil(第2世代)を使えなくなる可能性がある。
Apple Pencilを高くないと感じていたのは性能面だけではない。1本購入すればiPadを買い替えても引き続き使えたことも大きい。そのため今回はApple Pencil(第2世代)の購入はひとまずやめて、安価な互換ペンを購入することにした。
iPad側面に磁石で取り付けられて充電もできる。
今回購入した互換ペンは2本。どちらもApple Pencil(第2世代)やApple Pencil Proと見た目がそっくりである。軸の一面が平らになっていて、iPadの側面に磁石で取り付けられる。加えてその状態でワイヤレス充電ができる。これらの仕組みも「本家」と同じだ。
磁石で取り付けられる互換ペンがあることは、2年ぐらい前から知っていた。しかしワイヤレス充電に対応していることは、今回調べて初めて知った。なお、販売されている互換ペンの全てが磁石での取り付けとワイヤレス充電に対応しているわけではない。本記事の内容は、筆者が購入した2本の互換ペンで確認したものである点に注意してほしい。
本家は、本体側面に取り付けると充電に加えてペアリングも実施する。購入に当たって、同様の方式でペアリングする互換ペンを探したが見つけられなかった。
ただし、この機能がなくても多くのユーザーには支障はないと思われる。通常、ペアリングは一度すれば十分だからだ。複数のiPadを所有していなければ、頻繁にペアリングする必要はない。
今回、互換ペンは大手通販サイトで購入した。同じものと思われる製品が異なるブランドで販売されているケースが多かった。また価格もまちまちだった。
筆者が購入した2製品は、本体の色から便宜上「白いペン」と「黒いペン」と呼ぶ。白いペンはワイヤレス充電と有線充電に対応。黒いペンはワイヤレス充電のみに対応する。価格は白いペンが2599円、黒いペンは2798円だった。
どちらも交換用のペン先が付属する。実はこれもApple Pencilと互換性がある。最近では、Apple Pencilの書き味を変える様々な種類の交換用ペン先が販売されている。それらは互換ペンでも使用できる。
互換ペンはどうやってペアリングするのか。
前述のように今回購入した2本の互換ペンは、iPad側面に取り付けてもペアリングしない。そのため、一般的なBluetoothデバイスと同じ方法でペアリングする。
互換ペンの電源を入れてiPadの「Bluetooth」設定画面を開くと、「その他のデバイス」リストに互換ペンが現れる。これをタップし、続いて表示されるダイアログで「ペアリング」をタップすれば完了だ。一度設定しておけば、次からは互換ペンの電源を入れたときに自動的に接続される。
一方、Apple Pencilにはスイッチのようなものはない。電源を入れたり切ったりするといった操作は不要。完全に自動制御されている。
わざわざオン/オフしなければならない点は、本家に比べて劣ると感じるかもしれない。しかし机の上などに置いてしばらく使わないでいると、自動的にオフになる仕組みが搭載されている。
加えて今回購入した互換ペンは、iPadの側面に取り付けた状態から外すと、自動的にオンになった。充電中は常にオンになっている可能性もある。そのためユーザーが意識してオン/オフを切り替える場面は、以前の互換ペンよりも少なくなっていると思われる。
バッテリー残量や充電状況をウィジェットで確認。
白いペンのLEDは、充電中は赤色で明滅し、充電が完了すると緑色に点灯する。赤色が単純に点滅するのではなく、ふわっと明るくなり、ふわっと暗くなる。上品さと遊び心を感じた。
黒いペンのLEDは緑1色。バッテリー残量が少なくなると点滅する。充電中も点滅し、完了すると点灯する。
本家は、ペンを見ただけでは充電状態は分からない。この点は互換ペンのほうが優れているといえるだろう。Apple Pencil Proでは、バッテリー残量が少ない状態で使おうとすると触覚フィードバックで知らせてくれるようになった。
互換ペンにおいてバッテリーの残量を正確に知るには、「バッテリー」ウィジェットを使う。これは本家と同じだ。ここまで互換性があるのはすごい。
互換ペンは対応するiPadが多い。
Apple Pencilは、充電とペアリングの仕組みによって対応するiPadが限定される。例えばApple Pencil(第1世代)は、ペン後部の「Lightning端子」でiPadに物理的に接続し、充電とペアリングを行う。そのためiPad側の端子がUSB Type-Cのモデルでは使えない。
Apple Pencil(第2世代)とApple Pencil Proは、どちらもiPadの側面に磁石で取り付けて充電とペアリングを行う。仕組みは似ているが、Apple Pencil(第2世代)を対応しないiPad Pro(M4)に取り付けようとすると磁石が反発してうまく固定されないようになっている。ペアリングも無反応だ。
対応する組み合わせのときに、最も快適に使えるようにするというのがアップル製品の設計思想である。そのためApple Pencil(第2世代)とiPad Pro(M4)の例は、あえて使えないようにしていると思われる。
一方、互換ペンのペアリング方法は、前述したように一般的なBluetoothデバイスと同じ仕組みである。そのためLightning端子を搭載するiPadともペアリングできる。
充電に関しても、今回購入した白いペンは、ペン後部のUSB Type-C端子でも充電できる。黒いペンについては、Apple Pencilを磁石で取り付けられないiPad用に、iPadのUSB Type-C端子に接続してワイヤレスで充電できるようにするアダプターが用意されている。筆者が購入した製品は別売りだが、同様のアダプターが同こんされている製品もある。
このように互換ペンは、iPadの仕様に影響されずに使えるよう配慮されている。この点は、本家Apple Pencilにはない魅力だろう。
肝心の書き味はどうか?
最後になったが、書き味にも触れておこう。以前に試した互換ペンは、ペン先と描画位置がずれたり、パームリジェクションが誤動作したりする場合があった。
しかし今回購入した2本の互換ペンは、Apple Pencilと同じように正確に線が引けた。線が途切れることはなく、遅延も感じなかった。
本家の8分の1程度の価格で購入した2本の互換ペン。どちらも期待以上の性能に驚いた。筆圧感知には対応していないが、傾きに応じて線の太さや濃さを変化させる機能は備える。手書きノートの用途であれば十分な場合が多いだろう。
筆圧感知が必要なければ、互換ペンはApple Pencilの代用として十分使えるレベルだと感じた。