〇 2024年4月、働き方改革関連法に基づき、運転手の時間外労働に新たな上限規制が導入される。物流効率を向上させるための取り組みをしない場合、荷物の配達に支障が生じ、物流に混乱が生じるリスクが高まっており、それは「物流の2024年問題」と呼ばれている。今回は、この問題に対する解決策について考えてみたい。
実証プロジェクトや納品便数・回数変更などの動き。
タイムリミットまで半年となる中で、関連するさまざまなニュースが出てきている。NECは2023年9月12日、デジタル技術を用いた共同輸配送サービスプラットフォームの実証プロジェクトを展開すると発表した。2023年9月から2024年3月にかけて、花王、日通NECロジスティクス、三井倉庫サプライチェーンソリューション、横河電機などが協力して、複数企業の荷物を同一のトラックで運ぶ共同輸配送を効率的に実現するためのシステムの構築に取り組む。
プロジェクトでは、NECの「共同輸配送プラットフォーム」で参加企業の物流データを共有する。AI(人工知能)が輸配送を共同化する候補を自動的に抽出し、運行計画を最適化するなどデジタル技術を活用した運用の課題を解決する。NECと参加企業は、輸配送のネットワークを構築して持続可能なサプライチェーンの構築を目指す。
9月26日には、セブン-イレブン・ジャパンが2024年問題の対策のため、9月25日から全国で常温配送を、当日納品から翌日納品に変更したと食品新聞が報じた。弁当、おにぎりなどの納品便数の集約や冷凍品の納品回数も減らし、配送ルートの最適化を含めた効率化を進めるとしている。
米国に目を向けると、米Uberが2023年2月、米Oracleと7年間のクラウド技術契約を結んでいる。9月19日には、小売業者と消費者を結び付けるプラットフォームの新サービスを発表、両社がラストワンマイルの配送を変革する。小売業者は在庫調整と同時に、同日配送や定期配送オプション、注文の受け取り、最寄りの小売店や郵便局への返品など、より多くの選択肢を顧客に提供できるようになるという。
9月18日に開幕した米Oracleの年次イベント「Oracle CloudWorld 2023」でも、最高経営責任者(CEO)のSafra Catz氏がUberとの取り組みを話した。デジタルによる物流の革新が、日本だけでなく世界的な課題であることが分かる。
こうした環境の中で、物流業界のM&Aが増加しているという。日本経済新聞は9月22日、『建設・物流のM&A活発 1〜8月161件、「24年問題」も影響』という記事を出した。建設業と物流業のM&A件数は、2017年から増加傾向を見せ、21年に276件と過去最高を記録した。2024年に始まる時間外労働の上限規制が課され、人手不足が一段と強まることへの懸念が背景にあるとしている。
政府が打ち出す「物流DX」、求められるテクノロジーの最大活用。
問題の深刻さへの理解が広まる中、ITや小売り、物流などさまざまな業界が対応する動きを見せている中で、国も問題解決策を検討している。経済産業省と農林水産省、国土交通省は6月2日、物流の2024年問題への対応加速を目的に、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定した。このガイドラインは、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」においてまとめられた「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づく施策の一環として策定されたものである。
上記の「物流革新に向けた政策パッケージ」には、物流DXの推進が明記されている。具体的には、自動運転、ドローン物流、自動配送ロボット、港湾AIターミナル、サイバーポート、フィジカルインターネットなどのデジタル技術を用いて物流を効率化すると説明されている。
法規制の変更に、少子高齢化を背景にした人材不足が加わることで、物流の2024年問題の解決は困難を極めることが予想されている。冒頭で触れたようにタイムリミットが迫っているが、筆者の目には解決策を見いだし実行に移す動きはちょっと遅れているように映る。長時間営業を前提にしていた小売業の在り方自体を見直す必要が出てきていると同時に、差し迫った課題を抱える日本の物流業は、最新のテクノロジーをいかに採用し最大活用するかを、早急に考える必要がありそうだ。