〇 ここ5年ほどで、会社員の働き方は大きく変わりました。2019年の働き方改革関連法の施行によって、有給休暇の取得義務や時間外労働時間の上限などが設けられました。さらに新型コロナウイルス感染症の流行によって、テレワークの導入が一気に加速しました。併せて、育児や介護の支援、勤務時間の多様化なども進んでいます。
こうした新しい働き方は、働き手には好意的に受け止められていると感じます。以前は「月の残業時間が100時間を超えた」「有給休暇を今年も1日も使えずに終わった」といったことが“武勇伝”として語られていましたが、今となっては異世界の言葉のように聞こえます。特に20代にこんな話をしても、想像するのも難しくてぽかんとされてしまうほど、昔話になってしまいました。
残業が減ったり、通勤の必要がなくなったりしたことで生まれた時間は、どのように使っているのでしょう。少し前の調査になりますが、2018年4月3日にアサヒ飲料が発表した調査結果を見てみましょう。「働き方改革導入で生まれた空き時間をどのように使っているか」という質問に対する答えは、次のようになっています。
- 1位 趣味(38.7%)
- 2位 家事、育児(26.4%)
- 3位 配偶者と過ごす(25.9%)
- 4位 友人と過ごす(14.1%)
- 5位 まっすぐ家に帰らず寄り道をする(11.7%)
1位から4位までは明確な目的があって、生まれた時間で生活を充実させている様子がうかがえます。では5位の「寄り道」はどうなのでしょうか。一見、時間を有効に活用していないように感じる人もいるかもしれませんが、そうとは限りません。
退社後にフラフラするフラリーマン。
まっすぐ帰宅せず寄り道をする会社員を、「フラフラしている」ことに掛けて「フラリーマン」などと呼ぶそうです。この調査でもフラリーマンという言葉が使われており、週1日以上フラリーマンになっている人が約6割いたそうです。
筆者は、これは良い傾向ではないかと感じています。それだけ余裕がある日々を過ごせているということだからです。
この調査によると、フラリーマンの立ち寄りスポットは次の通りです。
- 1位 書店(47.3%)
- 2位 居酒屋・飲み屋(28.8%)
- 3位 カフェ・喫茶店(28.7%)
- 4位 家電量販店(16.2%)
フラリーマン状態にある筆者の立ち寄り先を、そのまま映し出しているかのような結果です。筆者はお酒を飲まないので2位がなくなりますが、それ以外はほぼこの結果の通りです。
これらはいずれも、手ぶらで立ち寄れるという共通点があります。会社勤めの場合、退社後そのまま立ち寄れるというのはポイントになります。
筆者は自分の中で、フラつく場所を次のように分類しています。
注意すべきは3つ目です。家電量販店でパソコンを見て、オーディオコーナーにも行って、「買えないな、余裕がないから諦めよう」と店を出る、これもフラリーマンの基本でしょう。
しかし最近では、お金を使う気がなかったのにうっかり使ってしまう場面が増えています。例えば家電量販店の場合、昔はパソコンを見るだけで終わっていました。ところが品ぞろえが豊富になった今では、動画撮影・配信用カメラや機材を確認し、健康器具を見て、さらにゴルフ道具もチェックしてしまいます。
「ボーナス払い」「分割払い、金利手数料無料」といった掛け声に誘惑されることもあり、思わず財布のひもを緩めそうになります。特に、ボーナス時期の今は要注意です。
筆者がお勧めするお金のかからないフラつき場所は、次の通りです。
- デパート、ブランドショップ
- 自宅の何駅か先の駅前
- 図書館
1のデパート、ブランドショップは、お値段が自分の財布の中身とマッチしないことが多いので、見るだけで済ませられます。お金を使わずに、今の流行をチェックできるでしょう。
2については、たまには電車を乗り過ごしてみましょう。5駅先、10駅先で降りてみて、駅周辺をフラフラしてみます。新しい発見があるかもしれませんし、歩き回るだけならお金もかかりません。
3の図書館も、フラつくには良い場所です。書店では購入しないような書籍に出合って、人生が変わるかもしれません。
フラつきを有意義なものにするためのコツもお伝えします。まずなるべく手ぶらで、クレジットカードや現金を持たないこと。散財を防ぐ目的もありますが、お金を使わずにどう時間を過ごすか考えるのも、意味があることだからです。
次に、音楽を聴いたりスマートフォンを眺めたりせず、景色だけを見るようにすること。普段の通勤では見過ごしたり聞き漏らしたりしている情報が入ってくるでしょう。
最後に、フラつく際は移動手段も考えること。歩くのか、クルマで移動するのか、電車に乗るのかによって過ごす時間は大きく変わります。何となくいつもの電車に乗るのではなく、少し考えてみるとよいでしょう。
フラフラできる時間があるのは、ぜいたくなことです。思わぬ消費をして後悔する代わりに、ぜひ満足のいく時間を過ごしてください。