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普及が進まない「メタバース」に傾倒する携帯3社、勝算はあるのか !

○ ここ最近、携帯各社がメタバース関連のサービスを大幅に強化する動きが相次いでいる。メタバース関連サービスは、米Meta Platforms(メタ・プラットフォームズ)などのIT大手が力を注いでも普及につながっていない。携帯各社に勝算はあるのだろうか。

NTTコノキューはXR専用施設を展開。

ここ最近、「ChatGPT」などのいわゆる「生成系AI」に対する関心が急速に高まっているが、その一方で関心が薄れつつあるのがメタバースだ。2022年まで大きな注目を集めていたメタバースだが、メタなどの積極的な取り組みとは裏腹に多くのサービスで利用者が思うように伸びておらず、苦戦していることがその背景にある。

だが国内の動向を見ると、逆にそのメタバースに対して積極的な取り組みを打ち出す企業が増えている印象だ。その代表例が携帯電話会社である。2023年3月には携帯大手とそれに関連する企業のメタバースに関する大きな施策の発表が相次いだ。

中でも最も新しい事例が、NTTドコモの子会社であるNTTコノキューが2023年3月30日、東京のJR秋葉原駅構内に開設した「XR BASE produced by NTT QONOQ」であろう。NTTコノキューは、NTTグループのXR関連事業を担うべく2022年に設立された企業。この施設では、同社が提供するサービスやソリューションを体験できる。

NTTコノキューがJR秋葉原駅構内に開設した「XR BASE produced by NTT QONOQ」。同社のXR関連サービスやソリューションを直接体験できる施設だ。写真は2023年2月28日、同施設にて筆者撮影
画1、NTTコノキューがJR秋葉原駅構内に開設した「XR BASE produced by NTT QONOQ」。同社のXR関連サービスやソリューションを直接体験できる施設だ。写真は2023年2月28日、同施設にて筆者撮影。

同施設内には、NTTコノキューが提供しているメタバースサービス「XR World」をはじめとした、同社のXRに関するさまざまな取り組みが展示されている。さらに大型のLEDディスプレーを設置。このLEDディスプレーを使って、バーチャルのアーティストが出演するライブなどを開催する予定だという。

施設内には大型のLEDディスプレーが設けられており、バーチャルアーティストなどのライブを開催できるようになっている。写真は2023年2月28日、「XR BASE produced by NTT QONOQ」にて筆者撮影
画2、施設内には大型のLEDディスプレーが設けられており、バーチャルアーティストなどのライブを開催できるようになっている。写真は2023年2月28日、「XR BASE produced by NTT QONOQ」にて筆者撮影。

駅構内に設置された施設ということもあってスペース自体はあまり広くはない。だがメタバース関連サービスをアピールする施設を常設し、一般の人に体験してもらうというのはとても珍しい取り組みだ。

それだけNTTコノキュー、ひいてはNTTグループがメタバース関連サービスに力を入れていることが見て取れる。

KDDIは独自ブランド、ソフトバンクは他社サービスで注力。

他の大手2社もメタバース関連の大きな取り組みを相次いで打ち出している。とりわけ力を入れているのがKDDIだ。同社は2023年3月7日にメタバースや、ブロックチェーンなどのいわゆる「Web3」に関連する技術を活用したサービスを「αU」としてブランド化することを発表。αUブランドでメタバースに注力する姿勢を明確にしている。

同社ではαUブランドの発表に合わせて、東京・渋谷や大阪など実在の街をモデルにした空間でコミュニケーションできるプラットフォーム「αU metaverse」や、360度の自由視点でライブを楽しめる「αU live」など、複数のメタバース関連サービスを展開することも発表した。

加えてNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)のデジタルデータの売買をより手軽にできるようにするマーケット「αU market」や、独自のウォレット「αU wallet」なども用意し、メタバースと関連性が高いとされるWeb3関連の取り組みも強化する姿勢を見せている。

KDDIはメタバースやWeb3を活用したサービスを「αU」としてブランド化、同ブランドを冠した独自のメタバースプラットフォームやNFTのマーケットなどを展開していく方針だという
画3、KDDIはメタバースやWeb3を活用したサービスを「αU」としてブランド化、同ブランドを冠した独自のメタバースプラットフォームやNFTのマーケットなどを展開していく方針だという。

ソフトバンクもその前日となる2023年3月6日にメタバースやWeb3に関する取り組みを発表している。だが同社は自社でメタバースのプラットフォームを用意するのではなく、他社のプラットフォームに自社独自のスペースを設置し、メタバース空間上でのイベント開催などに注力する姿勢のようだ。

既にソフトバンクは、韓国のNAVER Z Corporationが提供するメタバースサービス「ZEPETO(ゼペット)」上でソフトバンクショップを展開している。同日の発表では、そのZEPETO上のソフトバンクショップをリニューアルし、企業がイベントを開催しやすくしたことを明らかにした。

それに加えて、韓国のZEPが新たに展開する2Dベースのメタバースプラットフォーム「ZEP」を活用したイベントの開催にも力を入れていく方針を示した。

さらにソフトバンクも「NFT LAB」を展開する。ソフトバンクの実質的傘下企業となっているLINEのグループ会社LINE Xenesisが持つブロックチェーンの技術や基盤を活用し、NFTのデジタルコンテンツを簡単に売買できる仕組みの構築に力を入れる。また、各種メタバースサービスと連携してビジネス化を進める方針も打ち出している。

ソフトバンクもメタバースやWeb3に関する取り組みを強化。「ZEPETO」に加え「ZEP」を活用したイベント展開を進めるほか、LINEのリソースを活用した「NFT LAB」の展開も打ち出している
画4、ソフトバンクもメタバースやWeb3に関する取り組みを強化。「ZEPETO」に加え「ZEP」を活用したイベント展開を進めるほか、LINEのリソースを活用した「NFT LAB」の展開も打ち出している。

当面の鍵を握る法人向けメタバース。

以上のように取り組みに差はあれど、3社ともメタバースに積極的に注力している。だが先にも触れた通り、メタバースは米国のIT大手が力を注いでもなお利用者の拡大にはつながっていない。メタバースの先進層とそうではない人たちとの温度差が非常に激しい状況が続いている。

それ故国内では企業体力のある携帯大手といえども、短期的にメタバース関連サービスの利用者を大幅に増やして定着させるのは困難だろう。であれば、どのようにしてメタバースをビジネスにしていくのか。各社の取り組みを見ると、法人向けサービスが大きなポイントとなってくるようだ。

実は企業や自治体などがメタバース空間を活用してイベントを実施したいというニーズは急速に増えており、企業に向けたメタバース関連サービスは既にビジネスが立ち上がっている状況なのだという。ソフトバンクがメタバースのプラットフォームよりもイベントに重点を置いているのも、そうした企業のニーズを獲得したい狙いが強いためだろう。

またNTTコノキューも、XR Worldなど個人向けのサービスだけでなく、バーチャルライブの配信システム「Matrix Stream」や、独自のメタバース空間を構築できるプラットフォーム「DOOR」を企業や自治体などに提供している。

DOORについてはプラットフォーム自体は無料で利用できる。ただそのためには3Dに関する相応の知識と技術が必要となる。そこでNTTコノキューは、メタバース空間の設計やイベントの運営を請け負うことで売り上げを得ているという。仮想空間上のイベントが既に収益につながっているのだ。

NTTコノキューは独自のメタバース空間を構築できる「DOOR」を展開しており、これを活用して企業や自治体がイベントを展開したり、学校教育に活用されたりする事例もあるという。写真は2023年2月28日、「XR BASE produced by NTT QONOQ」にて筆者撮影
画5、NTTコノキューは独自のメタバース空間を構築できる「DOOR」を展開しており、これを活用して企業や自治体がイベントを展開したり、学校教育に活用されたりする事例もあるという。写真は2023年2月28日、「XR BASE produced by NTT QONOQ」にて筆者撮影。

そうした法人向けのサービスで売り上げを獲得しながら、メタバースへの継続的な投資によりコンシューマー向けの市場が本格的に花開くのを待つ、というのが携帯各社のメタバース戦略となりそうだ。だがコンシューマー向けサービスが立ち上がる時期を見通すのは非常に難しい。それまでいかに多額の投資を、長期間にわたって継続的に行えるかが勝負となってくることは間違いない。


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