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『三千円の使い方』感想。「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」に納得

原田ひ香著『三千円の使い方』感想。
「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」
(9ページから引用)
恋に浮かれもすれば離婚で凹みもする。
そこにドーンとのしかかるのはやっぱりお金の現実だった。
御厨家の女性三世代を中心にした節約物語。
節約生活に疲れたら読んでやる気を取り戻せる1冊。


『三千円の使い方』

三千円の使いかた (中公文庫) tataraworks

■著者:原田ひ香
■カバーイラスト:ながしまひろみ
■カバーデザイン:田中久子
■発行:中央公論新社(中公文庫)



『三千円の使い方』ネタバレ感想 

御厨美帆の貯金は30万円。
憧れの地で一人暮らしを始めるが、尊敬する大好きな先輩がリストラされたことから将来に対する不安を抱き始める。
良い会社に勤めているという信用がガラガラと崩れてしまったからだ。
一方で、保護犬を飼う為に家を買おうと節約に目覚める。


美帆の家族はとてもシッカリしている。
姉の真帆は専業主婦で子育てをしているというのに、夫の所得約300万円だけで年間100万円近く貯蓄をしている。
「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」 
(9ページから引用)
と教えてくれたおばあちゃんの琴子も利息の計算をしながら預金の預け替えを繰り返すという技を使うバイタリティの持ち主だ。
確かに0.01%しか利息が付かないよりは何らかの理由と目的で1%付けますよという銀行があれば、そちらを利用する方がお得だ。
なかなか出来る事ではないけれど。


お母さんの智子の懐事情はちょっと厳しい。
2人の娘を大学へやり、長女を嫁に出し、夫と暮らす今の預貯金は100万円少々という心許なさだ。
バブル世代の切なさを感じる。
若い頃は湯水のようにお金を使っていただろうが、今は時代が違うので金融機関に預けたからと行って大きく資産が増えはしない。
友達の熟年離婚話や自分が癌で入院したことをきっかけに、夫頼みの苦しさに苛立ちを覚える。
あの当時の人はだいたい結婚=退職だったのだから、余程の金持ち男を捕まえていない限り智子のような不安はみんなが感じていることだと思う。


シッカリ者のおばあちゃん琴子ですら73歳の高齢になってから働きに出る。
一つには他人から必要とされ報酬を得ることの喜びを知ったからではあるけれど、もう一つ介護問題に対する不安もあるのだ。
政府は人生100年時代などと言っては国民の尻を叩いて働かそうとするが、実際、70を過ぎて職に就くのは難しい。
小説の中の話と思えず私も何歳まで働かなきゃならないんだろうと思った。


この本は小説なので、本格的な節約本のように細かい節約技が100個も紹介されているようなものではない。
でも、読んでいると思い当たることがたくさんあって、家計簿つけなきゃとかレシートの上手な保管の仕方とかポイ活とか始めたくなってしまう。


これは私の個人的な考えだけど、お金を貯められる人は人の話に耳を傾けることができる素直な人が多いと思う。
逆にお金を貯められない人は人の話を聞かない人が多いと思う。
こういう人は説明書もろくすっぽ読まない。
おいしい所だけ取ろうとするギャンブル気質の人だ。


ある時、私は50過ぎて独身、母親のお金をあてに生活している女性にまだ間に合うからとiDeCoを勧めたがその人は頑なに拒否した。
やたらめったらポイントにこだわるから、携帯電話会社のポイント投信にポイントをまわすよう勧めた。
お金を使うわけじゃないし、ポイントの有効期限切れ前にコンビニでお菓子を買うよりは余程価値があると思う。
だが、その人はやっぱり拒否した。


ちなみに彼女は年金を5万円くらいしかもらえないらしい。
そんな馬鹿なと思い話を聞けば、厚生年金は払っていても無職の時に国民年金保険料を一切払っていなかったそうだ。
「年金やもらえんし~」という貧乏神の声に耳を貸し「1円ももらえないわけではないから払った方が良い」と言う意見を無視した結果だ。
お金がないお金がないと口にする人はこういう人が多い。
最終的にその人が私に言った事は、「先の事より今の事の方が大事よ。今楽しまないでいつ楽しむの」だった。
それで私は彼女を貧乏神と判断したので、絶対に携帯の番号を教えなかった。


『三千円の使い方』は、美帆で始まり美帆で終わる。
美帆は最初の章で彼氏と別れるが、節約講座で出会った青年と付き合う。
最後の章でその青年・沼田翔平と結婚しようと考え始めるが、そのタイミングで翔平に両親が勝手に作った奨学金550万円という借金があることが判明。
月々3万円返済で20年、利息だけでも200万円を超えて払うことになり、それほど給料が高くない翔平と美帆の結婚に暗雲が漂う。
毎月3万円と言っても住宅ローンの返済とは借金の質が違う。
相手の両親が考えなしなのも嫌だし、私だったら結婚しないかもなぁ。


今年(2022年)、日本のお金事情は大きく変わる。
高等学校の家庭科で投資を習うようになる。
4月からは年金制度がまた変わる。
老人になっても働く人に大変有利な内容に変わるので、じじいばばあの労働意欲も旺盛になることだろう。
今は景気が悪いし、コロナやらロシア、ウクライナ情勢のあおりをくらいそうだから、様々な業種の会社が知恵を絞ってお金を集められる仕組みを作っている。
どの会社に乗ったらいいか、こまめに情報収集した方が良い。


親はお金を持っていないし、政府もあてにはならない。
でも、この本を読んでもネガティブな気持ちにはならない。
自分に確実にできることをちょっとずつ実践していこうと前向きになれる。
1日100円浮かすのをみみちいと思うか楽しいと思うか。
結局はそこにつきると思う。
三千円の使いかた (中公文庫) tataraworks

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

ありがとうございました(人´∀`*)

コメント一覧

tataraworks-lynx50
@29qlove ラムネちゃんとキーちゃんのママん様、コメントありがとうございます。
私もついに学校でお金の勉強が始まるのか!と驚きました。
多分、学校の先生が一番驚いているのではないでしょうか?
家庭科の先生が株のチャートの見方とか教えるのはリスクが高そうだからか、教えると言ってもメインは投資信託のようですよ。
年金制度が変わって働くお年寄りはどんどんお金が貯まるんじゃないかなぁと思います。
今まで、月給と年金の合計が28万円を超えると、超過分を年金から減らされていました。
ですが、これからは上限が47万円になるそうです。
週2日と言わず週5日働けますね。
田舎はもともと所得が低いのでまるまるいただけるなら「早く年取りたい」と思う人が増えそうです。
そう言えば、年金手帳も廃止になりますね。
私たち世代は年金手帳をずっと管理しなければいけませんが、これからの若い人はちゃんと意味を理解して管理できるか、ちょっと心配ですね(ーー;)
29qlove
高校生の、家庭科で投資!!にびっくりしてしまいました。
確かに、景気は良くないし、世の中の流れ的に贅沢のレベルが下がってます。昔の良きあの頃…なんて言ってる人口が減り、今の若い世代…若者たちはとても堅実で地味。
地味な生活しかしたことが無い世代がこれからの世の中を背負ってく心もとなさもあるけれど、ぜったいに転ばない生活術は必要ですよね。
高校で投資を教えるとなると、投資で損をする人も増えて来る。そんな人に甘い言葉を囁く悪徳業者もまた増えるんだろうな…なんて心配も。
百戦錬磨の年寄りを騙すオレオレ詐欺よりも、年端のいかない若者の方がアッサリ騙されていくかもしれません…。

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