地球温暖化による平均気温の上昇や海面水位の上昇などの危険がすでに発生していて、これに伴う気候変動によって世界各地で大規模な山火事や洪水・干ばつ・猛暑や豪雨等の気象災害が発生・甚大化している。
これは生態系にも変化をもたらし、農産物や海洋水産資源への影響も出ている。
世界の平均気温は産業革命前(1850~1900年)に比べ、 2010年代(2010~2019年)では1.07℃上昇した。
その要因は主に経済活動に伴うCO2などの温室効果ガスの排出量増加で、2050年頃に世界の平均気温は1.9~3℃上昇すると予測されている。
地球温暖化の原因には自然的なものもあるが、CO2などの温室効果ガスやエアロゾル(空気中に浮遊するチリなどの粒子)の増加、森林破壊などが指摘されている。
特にCO2は私たち人間の活動によって生み出され、排出されているのだ。
例えば⽊を燃やすとCO2が発⽣するが、発⽣したCO2は森林が吸収するという循環が成り⽴っている。
CO2の削減は単にCO2を発⽣させないということだけでなく、このような循環を加味して“増加させない”という考え⽅がある。
これが巷で話題の「カーボンニュートラル」ということだ。
「カーボンニュートラル」をさらに進化させれば、温室効果ガスを減少させて、地球温暖化を防ぐまではいかないまでも、最悪現状を保つことはできるはず。
その実現にはCO2排出量削減と植林等による吸収作⽤の保全・強化の両⾯が必要になってくる。
世界の産業は、その活動においてCO2を排出する。
直接的でなくても、例えば電気を使うならその電気を発電する過程でCO2が排出されており、電気を消費することは間接的にCO2を排出していると⾔える。
製造業であれば製造⼯程で多くの電気を消費し、相応量のCO2排出に関わっている。
また、原材料や製品の運搬には運送⽤⾞両などの燃料を消費することでCO2を排出している。
このように、いま企業には企業の活動だけでなく、仕⼊先や協⼒企業を含めたサプライチェーンを確認し、どこでどのような影響があるのかを正しく把握して対応することが大切だ。
また、産業活動はCO2排出側である⼀⽅、植林などによるCO2吸収活動に貢献することも可能だ。
気候変動の対策を検討するうえで、“緩和”と“適応”という2つの考え⽅がある。
“緩和”を進めることは必要だが、すでに発⽣している気候変動による影響や将来予測される気候変動による被害を可能な限り抑えるために、気候関連災害への備えといった“適応”の取組みを進めることも重要だ。
“緩和”を進めることは必要だが、すでに発⽣している気候変動による影響や将来予測される気候変動による被害を可能な限り抑えるために、気候関連災害への備えといった“適応”の取組みを進めることも重要だ。
世界銀行の報告書「大きなうねり」によると、移住の強力な主な要因となっている気候変動が原因で、2050年までに世界の6地域2億1600万人が国内移住を余儀なくされるという。
ただし、世界的な温室効果ガス排出量を抑えるために早急で具体的な措置を講じ、環境に配慮した包摂的(一つのことをより大きな範囲に入れることを指す)で強靭な開発を促進すれば、気候変動による移住の規模を最大で8割減らす可能性があるとも説明している。
しかし、2050年までにサブサハラ・アフリカで8,600万人、東アジア・太平洋で4,900万人、南アジアで4,000万人、北アフリカで1,900万人、ラテンアメリカで1,700万人、東ヨーロッパ・中央アジアで500万人の国内避難者が出るだろうとも言われている。
「この報告書は気候変動が人々にいかに深刻な脅威となるかを改めて痛感させるものだ。その影響は気候変動の原因への関与が最も小さい貧困層に集中している」。
「気候変動による移住の主要な要因を挙げ、各国がいかに取り組むべきかが大切だ」と、世界銀行のユルゲン・フォーグレ持続可能な開発担当副総裁は述べた。
「こうした問題はすべてが根本的に結びついている。そこで我々は気候対策と開発の両方の目標を進めながら、より持続可能かつ安全で強靭な未来を構築できるよう各国を支援している」。
同報告書では、東アジア・太平洋、北アフリカ、東ヨーロッパ・中央アジアの3つの地域の見通しと分析を行ってる。2018年の報告書では、サブサハラ・アフリカ、南アジア、ラテンアメリカの3地域を対象に新しく先駆的なモデルの構築を用いており、今回の報告書でもその内容を踏まえている。
今回の報告書は、シナリオ別に将来の見通しを探っており、各国の計画立案に役立ててもらおうと考えている。
移住多発地域では水不足の深刻化、農作物生産性の低下、海面上昇、さらには新たな生計を立てための都市や農村の誕生が原因となり、人々の移住が予想される。
同モデルを使うと、移住多発地域の内外で気候変動が原因の国内移住を特定することができる。
同報告書は、気候変動を原因とする移住の要因緩和を進め、今後の移住の流れに備えられるよう、以下の政策提言をしている。
①世界全体の温室効果ガス排出量を削減し、パリ協定の気温上昇抑制目標の達成に向け全力で取り組む。
②将来を見据えた環境に配慮した強靭で包摂的な開発計画に、気候変動による国内移住の問題を組み込む。
③移住の段階別に準備を整えることで、気候変動による国内移住を適応戦略として位置付け、望ましい開発成果を行う。
④気候変動による国内移住の要因について理解を深めるため投資を進め、的を絞った政策の策定に役立てる。
BUSINESS INSIDERもよると、2015年9月のレポートで、2050年には夏は47度になる、とフランスの専門家が温暖化は予想以上に悪化することを発表。
世界気象機関(WMO)は地球温暖化や人口増などによって、2050年に世界で50億人が水不足のに陥るとの試算を発表した。
洪水や地滑りなど水に関わる災害も増えており、治水の改善も急務となっている。
1年間に少なくとも1カ月水を十分に得られない人の数は18年に36億人だったとみられるが、2050年には約4割増える。
世界の都市の4分の1は、すでに水不足が常態化している。
2000年から20年間の間に発生した水関連の災害は、1980年からの20年の発生件数と比べ2倍以上になった。
治水設備が十分でないアジアでの被害が目立っいる。
干ばつによる死亡者はアフリカが大半を占めた。
WMOは洪水や干ばつの警戒システムを充実させることや、水分野での情報共有を進めることなどを提言した。
ドイツ政府の支援を受けているポツダム気候影響研究所(PIK)が発表した報告書によると、気候変動による農業やインフラ、生産性、健康への被害総額は、2050年までに年間38兆ドルに達し、人類が排出する温室効果ガスの量が増えるにつれ、さらに被害額が膨らむことが確実と分かった。
気候変動の経済的影響は完全には理解されておらず、エコノミストの間でもいろいろと見解が分かれている。
PIK報告書は深刻さが際立っており、今世紀半ばまでに国内総生産(GDP)が世界規模で17%落ち込むと試算している。
報告書の共著者レオニー・ウェンツ氏は「気候を守ることの方が、気候を守らないよりも格段に安上がりだ」と述べた。
報告書によると、2050年までに産業革命前からの気温上昇を2度以内に抑える地球温暖化対策には推定6兆ドルの費用がかかるものの、対策を怠って2度超上がった場合の推定損害額の1/6未満にとどまるという。
従来の研究では、気候変動は一部の国には恩恵をもたらす可能性がある。
しかし今回のPIK報告書では、ほぼすべての国に被害をもたらし、最も大きな打撃を受けるのは貧しい発展途上国であることが判明した。
ただ、各国政府は排出量を抑制するための歳出が少なすぎるだけでなく、気候変動の影響に適応するための対策費も不足している。
今回の報告書に至る研究では、過去400年間の1600以上の地域の気温データと降雨量を調べ、どの事象が被害をもたらしたかを検討した。
さらに、その被害評価と気候モデルの予測を使用し、将来の被害を推計した。
それによると、排出量が現在のペースで続き、産業革命前からの気温上昇が平均で4度を超えた場合、経済的損失は2050年から2100年までに推計60%の所得損失に達すると計算された。
気温上昇を2度以内にとどめると、所得損失は平均20%に抑え込めるという。
今回は銀行関係の報告が多かったので、気候変動のリスクを損失金額で表してるものが多かった。リスク回避をしないとこんだけ損するぞ、という脅し方じゃないと大半の人間にはきかないのかな?
※参考: 全国銀行協会「気候変動問題とは?」
※トップ画像:BingAIで作成した「2050年の気候変動対策をとらなかった地球」