池波正太郎はフツーに時代小説作家だと思っていたら、もともとは劇作家で、劇団の仕事もしてたらしい。そんな池波正太郎の意外な(僕が知らなかっただけ)エッセイ集『男の作法』久しぶりにKindleで有料の539円。各章は「鮨屋の作法」「そばの作法」「てんぷら屋の作法」「すきやきの作法」「うなぎの作法」「ビールの作法」など食の話題で始まって、連想される風俗をテーマに進んでいく。「文庫版の再刊について」で「なんとしても忸怩(じぐじ:深く恥いること)たるおもいがするのは『男の作法』というタイトルだ。私は他人に作法を説けるような男ではない。しかし今度も、前に出したタイトルゆえ、変えないでくれとのことで、仕方もなく、そのままにしておくことにした」とある。確かにジェンダーフリーの現代にそぐわないタイトルかもしれないけど「どうか、年寄りの戯言とおもわれ、読んでいただきたい。そうすれば、この本は、さほど、おもしろくないこともない」と池波らしい言い訳をしている。
“昭和”を生きた男の嗜み。各章の冒頭にある「食の作法」だけでも「おもしろくないことはない」と思う。