BAND ON THE RUN(1973 Paul McCartney and Wings)
ポールファンも一般リスナーも評論家連も納得の、本人じゃないけど「どうだ!見たか!」と言いたくなるようなポールの完全復活作。
本人もそれがよっぽど嬉しかったのか、発表25年後にアニバーサリー盤ってのまで出している。
全体的にはそこまでのものかなという気もしないでもないが、冒頭2曲のインパクトがあまりにも大きかったのだろう。
なお、シングル『Live and Let Die』で久しぶりにジョージ・マーティンと組んだポールは、このアルバムでエンジニアにビートルズ時代の盟友、ジェフ・エメリックを迎えている。その他、アフリカでの録音が大変だったとか、メンバーが2人逃げちゃったとか、逸話はたくさんあるが、その辺はマニアのサイトをご参照ください。
01 Band on the Run
頭からアクセル全開! 「こんなところに放り込まれてかなわんなあ」「もしこっから出られたらなあ」「出たで。逃げろ逃げろ」の3部からなる、『Uncle Albert~Admiral Halsey』的な複雑な構成だが、詞はこちらの方が一貫していて(1曲なんだし)、曲も情景にあわせたトーンで展開している。特に「出たで」に入ったところのAギターの開放感。う~ん、素晴らしい。
02 Jet
続いてポールならではの“聴かせるロック”炸裂! 『Band on the Run』のディレイのかかったギターのエンディングから『Jet』のブラスとミュートギターのオープニング、「ミィ~ヨ~ヨ~ン…ジャ~ンジャッジャジャ~ン、ッシャカ、ッシャカ」の流れでもう何千回も聴いてるから、2曲で1曲というか、『Band on the Run』の後は『Jet』、『Jet』は『Band on the Run』の次じゃないととても違和感を感じるようになってしまった。聴きどころ満載だが、特に「ウィッダウィンディンニョヘ~ロ~ブダ、タウザンレイシ~ズ」のところ、泣けてくるよ。か~、カッコイイ。
03 Bluebird
冒頭の2曲であまりに盛り上がりすぎたので、ここでちょっとクールダウン。ボサノバっぽいしっとりした曲で、潤い成分「サックスソロ」でさらにしっとり。ちなみにジョンは『Help』で「ア、ニッサン、バリイイ」とニッサン車を褒めちぎっていたが((c)中山康樹)、この曲はニッサンとは関係なさそう(ちゃんちゃん)。
04 Mrs. Vanderbilt
ベースの勢いでいっちゃったって感じの曲。人名タイトルと「ジャングル」という言葉のせいか、なんかビートルズの『The Continuing Story of Bungalow Bill』を連想してしまう(ジョンの曲で、確かポールはレコーディング不参加だったと思うけど)。
05 Let Me Roll It
ギターリフ一発。ちょっとラフで、けっこう冗長。以上。
06 Mamunia
軽やかなギターとベースラインが特徴的。もう少し短くまとめられたら素敵な小品になる可能性はあった。
07 No Words
デニーとの共作で、ちょっと詰め切れなかったかなという気がしないでもないが、んなこたどうでもいい。いささかラフだが、どっちが主旋律か分からないようなビートルズ的なハーモニー、効果的なストリングス、妙に大きいギターアレンジなど、いやいやどうして、いい曲だ。
08 Picasso's Last Words(Drink to Me)
冒頭はデニーがボーカル。酔っぱらいの雰囲気を出すためかえらいのんきな曲だが、ちょっとやりすぎ。トータリティを考えてか、曲の途中に『Jet』、最後に『Mrs. Vanderbilt』が出てくるが、これは蛇足やろ。冗長さを助長している。
09 Nineteen Hundred and Eighty Five
1985年には誰も生き残っちゃいないよって、当時は未来のことを歌ったんでしょう。イギリスのSFテレビシリーズ『謎の円盤UFO』、あれは1980年の設定だっけ。きっと、秘密組織シャドーが宇宙人の侵略を防いでくれたおかげで、人類はいまも生き延びています。ピアノとベース、それに後の『Call Me Back Again』や『Flaming Pie』でも聞かれる、ポールのいつもと違うロック用の声質が印象的。トータリティを考えてか、曲の最後にリプライズ的に『Band on the Run』の一節が出てくるが、これも蛇足やろ。
***CD版ボーナストラック***
10 Helen Wheels
1974年発売のシングル。『WILD LIFE』あたりの作品かとさえ思わせる一本調子な曲で、よくまあシングルにしたもんだ。アメリカ盤ではなぜかアルバムにも入っている。でも、なぜかこのシングル、中学生の頃に持ってたんだよなあ。
11 Country Dreamer
『Helen Wheels』のB面で、『Heart of the Country』に続く田舎シリーズ(?)第2弾。オクターブ唱法が聴きどころってところかな。
(つづく)
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