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雑感録

Death is very likely the single best invention of life.

 
スティーブ・ジョブズの伝記をようやっと読み終えた。
途中、うんざりする部分もあったけど、最終的にはそこも含めて面白かった。
ジョブズはたぶん自分の死期を悟って書かせたんだろう。
内容について注文をつけたり事前に原稿を読んだりすることはなく、「僕が死ねば、僕についていろいろな人がいろいろなことを書くはずだけど、ちゃんと知ってる人がいない」と言ったそうだから、ジョブズの信奉者が「社内で作った社長礼賛本みたい」なものを勝手に書いてそれがまかり通るなんてことがないよう、ちゃんとした人に書いてもらうことにしたんだと思う。

天才のことは、天才性を理解できる人間が、天才がしたこと、天才に起きたことを淡々と語るのがいちばんよろしい。
例えば、ジョブズのプレゼンがすごいからといって、それを真似しようなんて解説本は愚の骨頂。
天才の頭の中なんて凡人に理解できる訳もないし、よしんば理解できたとしても真似できる訳がない。
それは、天才なんだから、としか言いようがないことなんだから。

ビートルズでいえば、全レコーディングを記録(“解説”ではなく)した『the complete Beatles Recording Sessions』がベスト。
ちなみにビートルズは天才だったけど、個々のメンバーが天才の“天才集団”だった訳じゃない。
ポールにしてもジョンにしても“天才的”ではあったけど、それが融合して、ジョージとリンゴを加えたところで、ビートルズとして初めて天才たりえたんだと思う。
その証拠に、敬愛するポールも、いわんやジョンも、ソロではビートルズを超えてない。 

天才といえば信長。
何せ今さらインタビューしたり関係者の証言をとったりすることはできないので、どうしても憶測で書かれているものばかりになる訳だけど、信長の天才性を考慮せずに書かれたものはどれもつまらない。
ナポレオンほか外国の英雄を引き合いにしているのが気に食わないけど、信長の天才性をテーマに置いた秋山駿の『信長』がいちばんかな。
ジョブズの例でもそうだけど、よくある信長なんかの天才のことを題材にしたビジネス本。
あんなもの作ろうという神経は、僕にはまったく理解できない。

おっと、凡人のくせに天才を語るのに夢中になって、大事なことをすっかり忘れてた。
今回のお言葉はジョブズのスタンフォード大学での、あの有名なスピーチから。
このスピーチで特に有名なのは、最後にジョブズが『Whole Earth Catalog』の最終号から引用したというメッセージ"stay hungry, stay foolish"。
でも、このスピーチをちゃんと聞いたのがジョブズが死んだ直後だったからなんだろうけど、いちばん僕の印象に残ったのは次のくだり。
And yet death is the destination we all share.
No one has ever escaped it.
And that is as it should be, because death is very likely the single best invention of life.
It is life's change agent.
It clears out the old to make way for the new.

僕はつい"What's the new?"と言いたくなった。
ジョブズ本によると、このスピーチは最初の癌の手術の後、治ったと公言しながら、実は転移が見つかっていて、密かに化学治療を続けていた頃のことらしい。
"Right now,"ジョブズは続ける。
"the new is you"
もちろんyouとは僕のことじゃない。

もどるつづく

スティーブ・ジョブズ I・IIセットウォルター・アイザックソン著講談社


ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版マーク・ルーイスン著シンコーミュージック


信長 (新潮文庫)秋山駿 著新潮社

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