3月11日(2019年)、雪解けがだいぶ進んで、一面真っ白だった田んぼから黒々と土が姿を現し始めました。今年の雪消えは例年より半月以上も早いな、と思いながら、居間から外を眺めると、「田沢湖線(秋田新幹線)」越しの田んぼに何やら白い塊がいっぱい見えるので、双眼鏡を取り出してのぞいて見ると白鳥です。家の中から白鳥を見るのは初めてで、妻にそのことを話すと、「朝早くから見えているが、雪が固まって残っているのかと思ってた」とのこと。めったに見ることはできないので、さっそくカメラを持ち、長靴を履いて家を出ました。
舞い降りている田んぼに近づくと、餌をついばんでいた手前の白鳥が一斉に頭を上げてこちらを見ています。それ以上近づくと飛び立ってしまうかもしれないと考え、そこで立ち止まってカメラを向けました。
私が立ち止まって少しすると、手前の白鳥も警戒を解いたのか、またくちばしを田んぼに向けました。白鳥が集まるところにはカラスも寄って来るようです。中央右寄り、白鳥の向こう側にカラスが一羽、白鳥を眺めているような姿勢で写っています。餌がある場所と思って飛んでくるのでしょうか。
「仙北平野」を歩いていた時、これまでに二度白鳥の姿を見かけました。写真の田んぼを含めて、白鳥が舞い降りる場所は水が溜まったりじめじめしている田んぼのようです。そんな田んぼが餌を摂りやすいのでしょう。
次の写真は、以前のブログに掲載したものですが、昨年(2018年)の12月21日、「旧千畑町千屋」の「本堂城回」で撮ったものです。
一見一面の雪のように見えますが、手前はいったん雪が解けて水たまり状態になり、それが夜の間に凍ってしまった田んぼです。日射しでようやく解けた狭い場所に白鳥が舞い降りたようです。
「冬水田んぼ」というのがあります。田んぼは秋の収穫が終わると、翌年の春までの間は雨水や雪解け水をできるだけ溜めないで土が乾くようにするのが普通です。しかし、「冬水田んぼ」は、敢えて秋から翌春にかけて田んぼに水を引き(入れ)、渡り鳥などの休息地、餌場にしようとするものです。写真の田んぼは水を引いている訳ではありませんが、雪解け水で水を引いたような状態になって白鳥が舞い降りたようです。
我が家の近くの田んぼを少しアップしてみました。
この冬は2月中頃から暖かい日続いたので、白鳥はもう北に帰る時期だと旅立ちし、ここで一休みしているのでしょう。これから何千キロも旅をするんだと考えると愛おしい気持ちも湧いてきます。
見ているうちに数羽の白鳥が飛んできました。
田んぼに舞い降り大勢の仲間に加わりました。この日は曇り空でしたが、この時期、晴れ渡った日にⅤ字形の隊列を組んで、クヮッ!、クヮッ!と啼きながら青い空を悠々と飛んでいく群れをよく見かけます。そんな姿を見ると、「白鳥(しらとり)は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」が頭の中に浮かんできます。この歌の「白鳥」は「カモメ」のようですが、「ハクチョウ」が海の彼方に飛んでいく様子としてもぴったりのように思います。それにしても整然と隊列を組んで飛んでいくのには思わず目を奪われてしまいます。
田んぼの白鳥は夕方まで姿が見せておりましたが、いつのまにかいなくなりました。来年もまた立ち寄ってほしいと思ってしまいます。
と、ここまで書いて昨夜寝ようとした時、はっと気が付きました。「カモメ」はどこかの海辺に居ついてその辺を飛び回るので「ただよふ」ですが、「ハクチョウ」の場合は遠くの目的地を目指して飛んで行くので、「ただよふ」にはならないことです。先の歌はやはり「カモメ」でなければならないようです。
(終わり)
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