ローマ・カトリック教会では、一九六九年にこの聖人を祝日リストから削除した。だが、この日に殉教した聖人ヴァレンタインにちなんで、恋人たちが互いの愛のあかしとして花やカード、ロマンティックな贈り物を交換しあう風習は、教会の外でますます盛んになってきている。
八木谷涼子氏『キリスト教の歳時記』講談社学術文庫・2016年、96頁
以上の通り、ローマ・カトリック教会では、既にこの日を聖ヴァレンタインの祝日にしていないという。なお、この「聖ヴァレンタイン」について、この日に殉教したという話になっているのだが、3世紀頃にローマで殉教した人のことらしい。とはいえ、この聖人は伝説上の人らしく、しかも、2~3名の候補がいるというから、本当によく分からない話らしい。
ただし、商業ベースに関わりがあるのかどうか分からないが、この「恋人たちが互いの愛のあかしとして贈り物を交換しあう風習」については、どうも、伝統があるそうで、この日には即席のカップルを作る習慣があったらしい。とはいえ、古代ローマの豊穣の神に因んだお祭りであり、14世紀以降には「恋人たちの日」とされて、18世紀には「ヴァレンタインカード」まで作られたという。
ただ、その古代ローマの祭りについては、若い未婚女性が、自分の名前を書いたクジを壺に入れて、それを引き当てた男性と1年間カップルになるという、何とも放埒な内容だったようで、当時のローマ教皇が禁止したという。いやまぁ、確かに昔にはありそうな話ではある(この辺の詳細は、八木谷氏前掲同著参照)。
日本では、菓子業界(チョコ業界)の強力な後押しによるお祭りになっているが、海外では花屋とカード業者による後押しがある祭りらしく、男性・女性の関係性も日本とは違うというのは、良く知られていると思う。とはいえ、日本でもこの辺は曖昧になってきており、いわゆる多様な内容になっているといえよう。菓子業界的には、どんな理由であれ、チョコが売れれば良いわけで、細かな決まりがむしろ売り上げを阻害するのであれば、自由な感じにした方が良いのだろう。
とはいえ、当初の「愛」や「カップル」といったような話も、こうなると本来のキリスト教に於ける「神の愛」などとの関係が、どこまで構築されるべきか迷うところだが、その布教が上手くいかなかったからこそ、「聖ヴァレンタイン」の祝日を外してしまったのかな?とか思ったが、どうなのだろうか・・・
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