五百問に云わく、優婆塞八関斎とは、いわゆる防非止悪の曰関なり。午を過ぎては食さずに曰斎す。若しくは在家の男女、尽形に受持すれば、必らず菩提を獲ん。乃至、一昼夜八斎戒を受持すれば、一生の五戒を超える。何故に頓超するや、戒の多きを以ての故なり。半日勧持すれば、微かに斎力の報ゆ。六十万年の糧を感ず。而も世人、行を謬りて良晨を択び、昼夜に飲漿せずは、訛なり。
受優婆塞優婆夷八戒相
一には不殺生
二には不偸盗
三には不邪婬
四には不妄語
五には不飲酒食肉
六には不著華縵瓔珞及香油塗身
七には不歌舞作唱妓楽故往観聴
八には不坐高広大床
九には不非時食
『経律戒相布薩軌儀』
・・・上記の一節は、中国明代の文献なのだが、以前から当方が抱いている或る種の疑問として、「八斎戒」なのに「九戒」立項されている場合がある。日本でも江戸時代初期の以空『八斎戒要集』が、やはり「九戒」挙げている。それで、当方が習った時に記憶していたのは、「不非時食」が無いものだったはずだが、例えば『大智度論』巻13には「八戒」のことに言及し、そこでは「不非時食」が無い。
ところが、『八種長養功徳経』という、八戒の受持を説く経典では、以下の通りになっている。
今日今時より浄心を発起して、乃至、是の夜分を過ぎ、明旦の日の初出の時が訖るまで、其の中間に於いて八戒を奉持すべし。いわゆる、
一には不殺生
二には不偸盗
三には不非梵行
四には不妄語
五には不飲酒
六には不非時食
七には不花鬘荘厳其身及歌舞戲等
八には不坐臥高広大床
『八種長養功徳経』
・・・あぁ、なるほど。こちらには「不非時食」があるのだが、要するに『経律戒相布薩軌儀』の「六・七」が、『八種長養功徳経』では「七」に統合され、「六」に「不非時食」が入ったことになる。この辺、何か書いてあるかな?と思って調べてみたら、律蔵に以下の一節があった。
並びに如上の問答、然るに以前の八有りて、是れ戒なり、後に離非時食、一に是れ斎なり。或いは第七・第八を以て合して第七と為すこと有りて、離非時食、第八戒と為す。
『弥沙塞羯磨本』
要するに、『五分律』系の戒本のみの文献で、「八戒」について問答というか、議論があって、その結果、以上の話となっている。上記戒本では、実は「九戒」になっているが、ここでは、第七・第八(要するに、『経律戒相布薩軌儀』の第六・第七のこと)を1つにして、「離非時食」を戒として入れることで、「八斎戒」の「斎」の意味を担保したという話をしている。
ということで、多分、各種文献を調べていけば、後半の三戒について様々な並びの「八戒」があるのだろう。いや、知ったふりして全然分かっていないことに気付くのはとてもありがたいことである。
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