若しくは仏弟子の、比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷、能く是の如く等の経を受持すること有りて、勤行精進すべし。復た八不浄物を受畜し、妻・息・金銀・琉璃・頗梨・田宅・奴婢・僕使を畜養すると雖も、我れ法の為の故に、亦た当に守護して諸悪鬼を遮り嬈近せしめざるべし。
『大方等大集経』巻24「護法品第九」
八不浄物とは、「妻や子供、金、銀、瑠璃、玻璃、田宅、奴隷、小間使い」なのだが、この一節は良くないと思う。いわゆる古来からの仏教が好きだという方からは、特に、比丘や比丘尼という出家者がこれらの物を持っていること自体を批判してきそう。しかし、この仏法を守護する天部の者達は、それであっても経と仏法のために、守ると宣言している。
何故、このような事になっているのか?といえば、実はこの経典のこの箇所は、世尊が荒廃した国土には、当然に比丘や比丘尼がいることはないため、そのような国土に住まなくても良い、天部の者達などに経典を託し、仏法を滅しないように依頼していたのである。よって、天部の者達は、とにかく貴重となった仏教徒を、更に戒律の厳しさで減らすことなく、とにかく守っていくこととなった。
まぁ、この経典が成立した当時のインドに於いて、よほど大きな戦争でもあったのかな?なんて想起させるが、今回採り上げた『大方等大集経』は、「方等(或いは「方広」と書くこともある)」が「大乗」を意味しており、大乗の経典を集めて編纂したものである。つまり、中身は1つの経典ではなくて、色々独立した短い経典の集まりといえる。
成立した時期は、詳しくは分かっていないが、紀元1世紀ほどであるとされ、また経典中にはさまざまな地理や天文、或いは習俗などが事細かに書かれていることから、当時のインドや中央アジアの生活を知る上でも、貴重な文献であるとされる。
今回採り上げた箇所は、あまり僧侶が期待されていない内容である。実は、この経典は、中国で成立した浄土教・三階教、日本での毘沙門信仰などにも関連している。つまり、これらの信仰は正法・像法・末法という仏法が衰滅してしまうという信仰(特に像法期)に関連がある。徐々に生きている仏教徒に力が無くなって、それで力を再び興そうとしてくれる守護者に期待するという内容になるわけで、それならば先ほど引用した箇所というのも納得はできる。ただ、この問題を本気で考えていくと、いわゆる寺族問題などにも入っていってしまうので、拙僧的にはとりあえずここまで。
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