つらつら日暮らし

盂蘭盆会に因んだ学び(令和4年度版4)

「盂蘭盆会」であるが、偽経と考えられてはいるものの、しっかり典拠となる経典『仏説盂蘭盆経』が存在している。たいがいは、同経典に依拠しつつ、各宗派での「盂蘭盆会」は構築されているのである。ところが、中国での研究成果を見てみると、盂蘭盆会を示す経典は複数存在しているのである。

 仏説盂蘭盆経 此の経、総じて三訳有り。
 一には、晋の武帝の時、刹法師の翻じて、云わく盂蘭盆経なり。
 二には、恵帝の時、法炬法師の訳、云わく潅臘経なり。応に此の文に、「飯・百味・五果を具え盆器・香油・錠燭等を汲潅す」と云うが故に。
 三には、旧本別録す、又た一師の翻有り、報恩経と為す。
    圭峰宗密『仏説盂蘭盆経疏』巻下


ということで、以上の一節は何を表現しているかといえば、盂蘭盆会の典拠となる経典として、3種類が知られているということなのである。そこで、上記一節では、『盂蘭盆経』『潅臘経』『報恩経』があるとしている。この内、当方では以前、『報恩経』については、昨日【盂蘭盆会に因んだ学び(令和4年度版3)】で採り上げたが、その時は『盂蘭盆経』と『報恩経』とが対応する可能性を指摘する文献を引用した。

しかし、上記の通り、実は3種類の経典の対応が検討される場合もあったわけである。その視点で見てみると、他にもあった。

盂蘭盆経一巻
潅臘経一巻〈一に般泥洹後四輩潅臘経と名づく〉
報恩奉盆経一巻
    『衆経目録』巻3


こちらも、やはり3種類を挙げている。ただし、『衆経目録』の成立年代を考えると、宗密より早いはずなので、参照された可能性があるといえよう。

ということで、せっかくなので、今日は『潅臘経〈一名般泥洹後四輩潅臘経〉』を見ていきたいと思うのだが・・・あれ?宗密は訳者を「法炬法師」とするが、現在『大正蔵』に収録されている『潅臘経』は、竺法護訳となっている。まぁ、両者、だいたい同じ時代の人であるというが、この相違はどこから?なお、『長房録』という文献で、竺法護訳だとしており、その影響もあるのかもしれない。だが、宗密は個人の研鑽の結果なのか、別の結論に達した、という話なのだろうか。

ところで、宗密の文章で『潅臘経』を『盂蘭盆経』の一種であることを説明するために、「飯・百味・五果を具え盆器・香油・錠燭等を汲潅す」とあるが、現状、『大正蔵』巻12で見ることが出来る同経には、その部分が無い。よって、宗密が何を言いたいのかは不明。ただ、この文章を調べている間に、『法苑珠林』巻62にこの部分が入っているのだが、「小盆経に依り」とある。小があれば、大も?と思ったら、やはり「故に大盆経に云わく」とあった。

普通に考えれば、訳経の長短で大小としているだろうから、「大盆経」は『盂蘭盆経』であろうか?と思ったが、該当しない・・・何だろう?現状、余り見られない経典として他のもあったということか。色々と分からないことが出て来たな。

それで、次回は『潅臘経』本文を見ておきたいと思う。

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