では、公布日が何故「文化の日」になったのか?だが、「国民の祝日に関する法律(e-Gov)」を見てみると、「文化の日 十一月三日 自由と平和を愛し、文化をすすめる」という説明がある。
つまり、『日本国憲法』の目指すべき理想として、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ものだといえよう。それでは、『日本国憲法』では、「文化」をどう表現しているのだろうか・・・調べてみると、「文化」はただ1箇所しか出て来ない。
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
『日本国憲法(e-Gov)』
いわゆる国民の「生存権」の保証と、更に、「国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務」について掲げた条文である。生活保護なども、この一条に基づいて支給されている。「文化」という語は、上記の一条しか出ないし、そうなると、ここでいう「文化」が何を意味しているのか、分かりにくい。
ただし、『大日本帝国憲法』には、そもそも「文化」という言葉自体が出ないので、この違いは理解しておくべきなのだろう。
それから、『日本国憲法』の「文化的」という語句の解釈としては、憲法の本文には明記されていないので、関連する主たる法律である「生活保護法」を見ておきたいと思うが、こちらも「文化」という語句は、1箇所しか出て来ない。
(最低生活)
第三条 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。
「生活保護法(e-Gov)」
先ほどの憲法二十五条に基づいた内容だが、「文化的」の定義は、こちらでも書かれていない。それで、上記条文を引用した「e-Gov」で「健康で文化的」という語句で検索をかけたところ、10以上の法律などがヒットした。その内、或る法律を見ておきたい。
第一条 この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。
「公営住宅法」(昭和二十六年法律第百九十三号)
まずは、公営住宅の提供について規定した法律である。そこに、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅」とあるから、公営住宅が整備されるのに、憲法二十五条が参照されている。しかし、何度もいうが、「基準」が分からない。しかし、同法律には「整備基準」という一条があった。
(整備基準)
第五条 公営住宅の整備は、国土交通省令で定める基準を参酌して事業主体が条例で定める整備基準に従い、行わなければならない。
2 事業主体は、公営住宅の整備をするときは、国土交通省令で定める基準を参酌して事業主体が条例で定める整備基準に従い、これに併せて共同施設の整備をするように努めなければならない。
3 事業主体は、公営住宅及び共同施設を耐火性能を有する構造のものとするように努めなければならない。
同上
そうなると、「国土交通省令で定める基準を参酌して事業主体が条例で定める整備基準」という基準が存在し、ここが「健康で文化的な生活を営む」ことを可能にするように定められていることになるだろう。すると、「公営住宅等整備基準(平成十年建設省令第八号)」という基準が見付かったので、これも調べてみた。すると、「文化的」に相当すると思われる一節を見出した。
2 公営住宅の各住戸には、台所、水洗便所、洗面設備及び浴室並びにテレビジョン受信の設備及び電話配線が設けられていなければならない。ただし、共用部分に共同して利用するため適切な台所又は浴室を設けることにより、各住戸部分に設ける場合と同等以上の居住環境が確保される場合にあつては、各住戸部分に台所又は浴室を設けることを要しない。
「公営住宅等整備基準」第九条
「テレビジョン」という表現などに、時代を感じる表現ではあるが、要するに適切に情報を収集するための手順を、公営住宅が具えていなくてはならないことを意味していよう。つまり、文化とは、テレビジョンなどから得られる情報を指している、という極論を提示することが出来よう。もちろん、現代であればネット接続なども含め、別様の情報収集手段も肯定されるべきだと思うが、一応までに検討した。
また、他にも「第三条 公営住宅等は、安全、衛生、美観等を考慮し、かつ、入居者等にとつて便利で快適なものとなるように整備しなければならない」という条文もあり、この「美観」というところに、文化性を感じる次第である。
ということで、今日は「文化の日」ということで、『日本国憲法』から「文化的」という表現について考えてみたが、色々と難しいことが分かった。最終的には、公営住宅の整備基準から定義らしきものを引いてみたが、これも時代によって変化するものだろうし、今後も常に模索されるべきなのだろう。
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