つらつら日暮らし

「ごかい」を受ける人

タイトルの「ごかい」は、わざと平仮名表記にしてみた。普通だと「誤解」になるのだろうが、この記事的には「五戒」である。ということで、まとまりがないが、五戒に関する雑談でもどうぞ。

死に先だつこと三日、その病忽ちに平きぬ。この間、首を剃りて五戒を受け、七月五日に卒せり。
    『日本往生極楽記』33・「高階真人」項


これは、或る日本の俗人(在家信者)が、病に苦しんでいて、死の間際であったけれども、首(頭のこと)を剃って「五戒」を受けて、その直後に亡くなったことを指している。五戒とは、在家信者が受けるべき戒であり、以下の通りである。

在家菩薩、まさに善戒を受くべし。いわゆる五戒なり。
    『大宝積経』巻82


そして、この功徳は次のように示されている。

若し在家菩薩、此の五戒を受持する功徳を以て、阿耨多羅三藐三菩提に廻向し、善く五戒を護れば……如説如作、貪痴を生ぜず、常に一切の心を安じて毀壊せず、常に忍力を修して以って自ら荘厳し、常に応に正見にして、諸の邪見を離れるべし。
    同上


五戒とは、それを受持する功徳がある。『大宝積経』ではそれを「廻向」することを説くけれども、勿論単純な利益もある。

五戒というは、いわゆる不殺・不盗・不邪婬・不妄・不飲酒、是れ其の五戒なり。此の五、能く防ぐが故に名づけて戒と為す。前の三、身を防ぎ、次の一、口を防ぎ、後の一種、通じて身・口を防ぐ。前の四を護る故なり。
    『大乗義章』巻12


ということで、五戒についてその役割別に論じられている。興味深いのは、「飲酒しない」ことが、全ての身と口の過ちを防ぐことだという。確かに、酒の席の失敗は、身・口の両方に懸かる。これは、我々人間の様子をよく観察していることから生み出されたものだと考えて良い。

釈真表、完山州万頃県の人。父を真乃末と曰い、母は吉宝娘なり。姓は井氏なり。年、十二歳に至って、金山寺の崇済法師の講下に投ず。彩を落として業を請く。其の師、嘗て謂いて曰く、「吾れ曾て、唐に入りて善道三蔵に受業し、然る後に五台に入りて、文殊菩薩の現ずるを感じて五戒を受く、云々」と。
    『三国遺事』巻4・真表伝簡


・・・文殊菩薩から、「五戒」を受けた?既に受業(=出家)しているのに、五戒なのか?良く分からない。まぁ、文殊菩薩のことだから、何か想いがあってのことなのかもしれないが・・・それにしても、流石に聖地・五台山のことだけはある。ここは文殊菩薩が応現した場所であるとされ、それこそ、奈良時代の日本に、インド人として初めてやってきた菩提僊那は、中国に来た理由がこの、五台山で文殊に会うためであるという。

それほどの聖地なんだけど、文殊はやってきた出家者相手に何故か五戒を授けたというわけですな。他の経典で、仏陀と文殊が戒について語る場面はあるけれども、その悉くが、在家五戒を示しているので、在家者扱いされたのだろうか?良く分からないな。まぁでも、これがまさしく、菩薩戒なのかもしれない。

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