大科第十 請師
二に金色世界の上首、大聖文殊師利菩薩を請し奉る。我が為に羯磨阿闍梨と成り玉へ。吾れ羯磨に由る故に、頓教事理の妙戒を受ることを得、文殊哀愍の故に、来て道場に入り、円戒を以て吾等に授与し玉ふ。是の故に、礼すること一拝すべし〈金色世界及び清凉山の上首文殊師利の足下を礼の念上を作すべし〉。
『続浄土宗全書』巻15・79頁、訓読は原典に従いつつ拙僧
なお、この「請師」項だが、全体で五段になっている。よって、記事1回で一段ごと検討してみたい。ここでは、菩薩戒授与の現場で重視されている「文殊菩薩」についての話である。本書では文殊を「羯磨阿闍梨」だとしているが、これは、『観普賢菩薩行法経』などの影響を受けたものである。
受戒の現場に於ける「羯磨」は、受戒希望者(発心人)に対してまず、遮難を実施し、その上で戒を受ける資格があるかどうかを判断する会議を指している。原則は全員賛成となっている。
さて、しかし菩薩戒の場合は、文殊菩薩を理念的な「羯磨阿闍梨」として、その羯磨によって頓教事理の妙戒を得るという。ただ、「円戒」という言い方もしているので、ここは「円頓戒」も認識されているものか。
そして、受けることが出来るということが分かったら、文殊菩薩を礼拝するのだが、その際に「金色世界及び清凉山の上首文殊師利の足下」を礼するべきだという。まず、金色世界や清涼山は『華厳経』などで文殊菩薩の在処と説く。よって、文殊菩薩を礼拝することをとにかく主張したものだと理解出来よう。
【参考資料】
・宗書保存会『続浄土宗全書』巻15、大正14年
・浄土布薩式(新編浄土宗大辞典web版)
#仏教
最近の「仏教・禅宗・曹洞宗」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2016年
人気記事