12月15日 ギリシャ7日目
きょうは、メテオラの修道院巡りである。
メテオラは、テッサロニキ平原に行き止まりのところに、数百メートルの直立した奇岩が立ち並び、その上にいくつかの修道院が立っている。なんで、こんな岩のてっぺんに建てたのかな、どうやってそこにたどりつくんだ、と不思議いっぱいのところである。修道院は、世俗から切り離し、隠棲する修道士によって切り開かれたようである。そして、12,13世紀ころから建てられるが、そのころ、ビザンチン帝国が衰退しはじめ、世俗を離れた修道生活を送るようになったのだろう。さらに、13世紀に十字軍でベネチアなどのカトリック勢力に支配され、さらには15世紀のイスラムのオスマントルコに制圧されたころに建造されたようである。おそらく、宗教上の圧迫を逃れたり、世俗から隔絶して信仰を維持するため、この岩山の上に逃げ込んだのであろう。もしくは007はじめ数々の映画の舞台になったところで、目にしたことは何度もあるところである。
カランバカは、メテオラの足元の町で、町の背後には奇岩がそびえたち、その上に修道院や十字架が建てられており、なかんなかの景観である。カランバカの朝は、内陸であり一層冷え込んでいた。簡単なギリシャ風の料理が並ぶ朝食をとり、カランバカのバスステーションへいく。メテオラ行きのバスは冬季は1日2本、9時と12時45分とホテルで聞いた。路線バスに乗り一番奥の修道院でおりて歩いて巡るかなと思っていた。バスステーションや観光案内所でバスの時間を再確認しようと尋ねると、ツアーがある、バスはよくないとか、しきりという。口コミサイトでもそういわれると書いてあったので、なるほどそうかと思う。でも、料金は15€で意外とリーズナブル。バスの料金が片道2€であり、ガイドも付くし何よりも寒い。ツアーならメテオラの山中を歩く必要ないので、ツアーをお願いすることにした。9時に出発して修道院は3か所回り、13時30分に戻って来るという。
<カランバカからメテオラの岩山>
ツアーガイドのお姉さんとミニバスに乗り込むがお客は私一人、貸し切りとなった。この季節、観光客は本当に少ない。
カランバカからゲストハウスなどが点在するカストラキ村を通り、メテオラに向かう。途中、ガイドがあれはエレファント岩だという、たしかにそう見える、奇岩があちこちにあるので日本ならたくさん名前をつけて名所にしているだろうが、説明してくれたのはその岩だけである。
最初に、ルサヌ修道院の下で降ろされた。岩の上に浮いているように立つ修道院である。階段を数十段のぼると、修道院の立つ岩山にむけて、橋が架かっておりそれを渡り中に入る。岩は独立しており深く切り込んでいるが橋は10mくらいであり、わたるには高度感はない。入場料(拝観料かな)は3€。
<ルサヌ修道院> <修道院への橋>
内部は、ギリシャ正教の修道院らしく、壁にはイコンが描かれ、キリストの受難や聖者の殉教、マリアが描かれ、頭上にはイエスが見下ろしている。キリスト教者ではないので、これをみてもすごいなしかおもわないが、参拝者は地元の人も多いのか、マリアやキリストの絵にキスをしたり、十字を切ったりしている、日本人的に言うと、寺や神社と同じように自分もお祈りすればよい気もするが、なんか違う感じがして、似非信者にはならず、手を合わせるだけにとどめることにした。内陣は撮影禁止であるので、この荘厳な雰囲気は現地に行くか、TBSの世界遺産を見るしかないでしょう。修道院の展望台のようなところから外を眺めると100m位は高度のある切り立った岩に立っているので、眼下を見下ろすこともできるし、向こう側にはメガロ・メテオロン修道院やヴァルラーム修道院を見渡すことができる。これは確かに絶景である。このルサヌは尼僧院であり、いまも修道生活をおくっているようである。ここメテオラの修道院では、はちみつやオリーブオイルや工芸品を自家製しているようであり、はちみつを買うことにした。1瓶7€であった。ギリシャははちみつが名物であり、ヨーグルトに混ぜて毎日食べていた。意外と安いかな。ルサヌ修道院の橋を越えて反対側にはハイキングコースが通じており、かなり険しいがよい季節ならこれは楽しいかもしれない。見晴らしの良いところまで上っていくとメテオラ一帯の山並み、いくつかの修道院、眼下のカランバカの町、テッサロニキ平原の広がりを眺望できる。歴史と自然と双方を感じ取れるところである。
<ルサム修道院の崖> <修道院内の小部屋>
さて、バスに乗り込み、次は、一番奥のメガロ・メテオロン修道院で降りる。ヴァルラーム修道院は、ここから歩いて15分くらいなので2時間後にピックアップすることに。
<2つの修道院>
この修道院、なにせ、単独岩とでもいうべき垂直な岩山の上に立っており、標高差は高いところでは300m、低いところでも100m位の切り立った岩山に立っている。このため、修道院に人も荷物も入るために上からロープを下げ、縄で作った網に入れて上で人力でロープを巻き上げてあげるしかなかったのである。今でも崖の下にロープが下げられ網がおいてあるので現役で使用されているようだ。また、駐車場から谷を越えて直接修道院まで小さなロープウェイが渡されている。ちょうど着いたときに谷をロープウェイの荷物かごがゆっくりと空中に浮かんでいた。なんとものんびりした感じ。
<メガロ・メテオロンへのロープウェイ>
<吊り上げロープ>
いまは、観光客は岩を巡るように堀めぐらされた階段をぐるりと登っていけば修道院に難なく入れる。その階段の途中から谷を見下ろすとまあよくこんなところにつくったもんだな、信仰の力であろうかと思う。入場料はここも3€。修道院の中は結構広くて、入ってい右側には礼拝堂があり、厳かな空間が広がる。内陣に入ると、美しいイコンが壁一面、天井にはイエス、聖母、天使、聖者などのイコンのフレスコ画が埋め尽くされている。金の十字架、天井からは香炉、そしてシャンデリアがおろされ、厳粛な空間である。もちろん、今でも聖なる信仰の場所であるから、熱心な信徒もおられるので、静かに聖者の殉教の過程を描いたイコンをながめる。
<メガロ・メテオロン修道院内の礼拝堂あたり>
礼拝堂から外に出ると、ここからのメテオラの眺めも素晴らしい。目の前にはヴァルラーム修道院、遠くにはサンステファノ修道院、先ほどのルサヌ修道院は岩のすぐ横に小さくたっている。天気は良いが、空気はひんやりしている。修道院の建物内に戻るとロープの引き上げ施設があった。真ん中にはロープを人力で持ち上げる器具があり、数人でぐるぐる押しまわしているようだ。施設の先端は垂直に切り立った崖上にあり、そこからロープは地上まで下げられている、これに乗って上り下りするというのも大変だが、スリリングだろう。
<吊り上げ場と吊り上げ器>
院内には博物館が併設されており、修道院長の儀礼服やミサに使用する十字架、院内での生活をするための器材などが展示されている。儀礼服は、金や銀の糸で織られた豪華なものであり、格式の高い人が就いていたようだ。十字架には、イエスの受難や奇跡が小さく浮き彫りされており、かなり緻密な装飾が施されているのを見ることができる。展示物は充実しており、かつてギリシャ正教会の修道士の生活が意外と格調高いものであったことを感じられる。
<博物館>
<ラテン語の聖書、羊皮紙>
ここでも、売店があり、十字架とか聖なるもののほかのお土産にオリーブオイルと蜂蜜を購入する。ここのはちみつは1瓶6€で、瓶もしっかりしている。また、20世紀初頭のこの修道院での生活を記録した映像が流されていた、修道僧がロープの網にのって引き上げられている様子や当時の生活の様子が記録されていた。100年ほどの少し前のことなのだ。ロープが設置されるまでは、はしごをかけて垂直のがけを登っていたと紹介されている。これはこれで槍ヶ岳の槍の穂先のはしごよりも不安定で怖いだろうと思う
<メガロ・メテオロン修道院>
メガロ・メテオロン修道院をでて、メガロ・メテオロン修道院に向かう。時間は12時ころであり、観光バスがたくさんやってきて団体さんがちょうどついたころのようだ。早い時間にきて空いていてよかったかもしれない。
ヴァルラーム修道院には歩いて15分くらい。メテオラの山並みを見ながらの散策は気持ちいい。メテオラの修道院を巡るこの道はトレッキングコースとしても人気である。多少のアップダウンはあるが数キロであり、気候のがよい春や秋の季節ならば、さぞや気持ちいいだろう。カランバカまで降りていけるようであるし。冬は寒いからか、トレッカーは見かけなかった。
<ヴァルラーム修道院>
ヴァルラーム修道院も、岩山の上に建つ修道院である。規模は結構大きく、これまでの修道院よりも広々としている。まずは礼拝堂へ。ここもイコンが壁や天井すべてで埋め尽くされ、十字架、香炉、シャンデリアと厳粛な空間である。信仰の場であり、撮影は禁止であるので、静かにたたずむ。礼拝堂の内陣に入る前の広間は、宗教画が掲げられるが明るい空間である。そこから広いテラスのような広場があり、メテオラを一望することができる。何度も見たが、美しいなとのんびりと過ごせる。京都北山の鞍馬寺の本殿の前広場から山並みを眺めている感じになんとなく気分は似た感じになる。鞍馬寺は光源氏がわらわ病の病み上がりにきたところ、それを思い出した。なんかそうしたスピリチュアルで厳かではあるが開放感のある感じというべきか。だいぶちがうけれど、気分はそんな感じ。ここにも博物館があり、メテオロン修道院と同じように、修道僧や院長の儀礼服や十字架、様々な修道院にまつわるものが展示されていた。また、第2次大戦時のドイツとのギリシャ軍との戦いがここらで行われていたようで、その絵が飾られていた。
<ヴァルラーム修道院>
12時半の迎えのバスに乗り、サンステファノ修道院のほうに向かう。聖ニコラウス修道院を横目に見ながら、カランバカを一望できる展望台というか岩山の近くで降ろしてもらう。岩山の上から360度の眺望を楽しむ。ガイドによれば、この岩山は砂岩と硬い岩でできていたが、柔らかい砂岩が侵食され、このような岩山ができあがったというが、ちゃんと聞き取れていないかな。さらに一番の奥には、尼僧院であるサン・ステファノ修道院が見渡せる。360度写真を撮影してみた。眺望をしばらく楽しんだのち、カランバカの町に戻る。4時間ほどのツアー出るが十分満足できる内容であった。
<サンステファノ修道院>
カランバカからアテネへは、ギリシャ国鉄を利用するべく予約を行っていた。ギリシャ国鉄はオンラインサイトで予約もできるので便利である。カランバカ駅は支線の終点であるが、2023年の洪水のため支線は運休しており現在は代行バスが運行している。代行バスは、ファルサロスという駅でテッサロニキとアテネの本線まで運行している。料金は、アテネまで30.3€である。バスより少し安いかな。カランバカからの代行バスは、一日4便で、17時5分発を予約していたが、1本前の14時発に変更した。カランバカ駅の窓口にはチケット売りのご婦人がいて簡単に変更してくれた。時間が一時間ほどあるので、カランバカの一番奥、岩山のふもとにあるビザンチン教会まで散歩することにする。歩いて15分くらいであるが、かなりの坂道である。岩山の崖を背景にした教会で趣はある。でも、14世紀ごろの建築であるが、中にははいれず外観だけ。ギリシャのビザンチンの様式だよな、という感じ。
<カランバカのビザンチン教会>
仕方ないので、駅に戻るが時間あるので、駅前のカフェで一休み、ハムサンドにカプチーノ。テラスでのんびり。こうした時間はギリシャでは当たり前のようである。値段も8€くらいかな、日本ほど安くはないが、気楽に利用できる。
代行バスは、14時に出発し、トリカラなど4駅ほどを経由して、ファルサロス駅まで2時間ほど行く。この駅、田舎の駅で周りには何もない。
途中、雪で真っ白になったオリンピア山を眺めることができる。神々が住まうところである。キリスト教に信仰が変わってから12神はどうしているだろうか。誰も捧げものをくれなくなって1500年以上かも。
<オリンピア山(たぶん)>
改札は特になく、駅のホームに入る。公共施設の老朽化は著しく、駅の設備はかなりあれており、行き先を示す掲示板は壊れており、時計も狂っている。ギリシャ国鉄は上下分離で運営されており、所有者の国の整備が追い付いていないのだろう。テッサロニキからくる列車に乗り込む。列車は普通に快適であり、問題もなくほぼ定刻で運行している。乗車すると、指定席だが自分の席には他の人が座っているので、別の席に座る。車掌が改札に来て切符のバーコードを確認するが、席など確認しない。まあ、日本のような厳密さはいらないのかもしれない。
<ファルサロス駅でのギリシャ国鉄急行><貨物列車>
ラリッサ、テーベを経由してアテネに3時間ほどの19時ころに到着した。メテオラに日帰りのツアーもあるが、ちょっと遠いかもしれない。デルフォイとメテオラを1ッ拍していくツアーがあるが、これが一番合理的かもしれない。交通費は、アテネーデルフォイで20€、デルフォイーカランバカで30€、カランバカーアテネで30€、メテオラ現地ツアー15€であるので、交通費だけで100€くらいかかるので、時間効率考えたら現地ツアーが最適かもしれない。もしくはデルフォイ、カランバカのそれぞれ1泊すべきであると思う。
アテネのラリッサ駅からオモニアの今日の宿Boss Bouthique Athensまでは、1km強なのであるいていく。ちょっと薄暗い住宅地区だが、特に危険な感じはせずに到着する。昨日預けた荷物を受け取り、部屋に入る。朝食付きで約8000円であるのでお得である。
比較的早い時間についたので、夕ご飯は街中で食べることに、久々のレストランであり、最後の夕ご飯だ。モナスティラキの手前にあるカラマンリディコレストランに行ってみる。パストラミとかのハムで有名な現地レストランらしい。歩いて15分ほどであったが、かなりの人でにぎわっていた。よくわからんから店名と同じカラマンリディコとブドウの葉で包んだドルマデスを頼む。ドルマデスは、ギリシャの家庭料理で中には野菜とチーズが入っていてサワークリームで味付けられ、大きなブドウの葉で包まれている。量が多いのでこの2皿でおなか一杯になってしまう。カラマンリディコは、ハムに卵をやいたようなものに、野菜がはいっているもので、結構いけるかも。サービスのデザートもいただき、満足だ。
<ドルマデス> <カラマンリディコ>
そのあと、もう一度、モナスティラキ広場へ行き、アクロポリスのライトアップを眺め、オモニアに戻る。広場前のBENETHでケーキをテイクアウト。巨大なイチゴタルトを5€でテイクアウトして、ホテルの部屋で至福のひと時。一つが2個分くらいあるから食べ応えある、少し甘いかな。あしたは、ギリシャ最終日、ついにアクロポリスだ。