I~これが私~

風の吹くまま,気の向くまま,ありのままの自分で。

『LAST・ADVENTURE』第3章

2011-04-01 21:39:07 | 小説『LAST・ADVENTURE』
LAST・ADVENTURE

第3章 出会い

魔物の森の出口の近くで、疾風と同じ年頃の女の子が、魔物と戦っていた。
先日戦った大蛇と同じくらいの大きさの蛇だ。

「小娘のくせに私と互角に戦えるとはな。」
嘲るような蛇の言葉に女の子は小さく笑うと、腰にかけていた2つのさやから2本の刀を抜いた。
「唸れ!紫龍・黒龍!」
女の子の、澄んだ、よく通る声。
その瞬間、2本の刀が黒く輝き、その状態で蛇を切り刻んでいく。
「小娘!そんな短刀2本で私を傷つけても痛くもかゆくも…う…」
余裕を見せていた蛇が突然唸りはじめ、数秒後、砂と化してしまった。
その戦闘を間近で見ていた疾風は思わず息を飲んだ。
(すごい!あんなに小さな刀2本で蛇の魔物を倒すなんて…)

「そこに隠れている者、出てきなさい!」
声をかけられ姿を現した疾風は、女の子に思わず見惚れてしまった。
「ねぇ、君…。」
女の子の声に我にかえり、早口で名乗った。
「は、はい。轟村から来た疾風です。」
「やっぱり疾風君だったんだね。」
ほっとしたように、女の子は話し出した。
「私は美鈴。覚えてるかな?私も轟村に住んでたの。」
『美鈴』という名前には覚えがある。
「もしかして毒使いの美鈴さんですか?僕の家の、2軒隣に住んでた?」
「そうそう。良かった。覚えててくれたんだね。轟村の情報を聞いた時に、疾風の消息が分からなかったから、ずっと心配してたんだよ。」
美鈴はそう言って、安心したように笑った。

「それで、疾風君はなんで忍風村に行こうとしてたの?」
美鈴から質問され、いきさつをかいつまんで話す。
「そういうわけで、龍神村の長老から、忍風村に向かえと言われたからだよ。」
そう結ぶと、美鈴は寂しそうに呟いた。
「へぇ、ってことは、疾風君も悪鬼島に向かっている途中なんだ。」
「大丈夫。絶対戻ってくるから。」
疾風が力強く言うと、美鈴も心を決めたように、明るく宣言した。
「それじゃ、私も行って、疾風君を助ける!」
「でも、美鈴さんもたくさん怪我をすることになるから…」
「わかってるわよ。私だってかなり刀を使うのは得意なんだから。それに…。」
慌てて止めようとする疾風に、美鈴が何かを言いかけた直後、忍風町から人が走ってきた。
「美鈴さん、大変だ!町が魔物に襲われてる!」

どうやら、美鈴と落ち着いて話せるようになるのは、まだ先のことのようだ。


written by ロマノフ


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