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『楽園の薔薇』11.側仕えの少女<3>

2011-06-01 21:55:48 | 小説『楽園の薔薇』
楽園の薔薇

11.側仕えの少女

<3>

時は、一週間ほどさかのぼる。
イスフィールがイザベラになる前だ。
「レイアース!セイレーンを父様の部屋に呼んで。」
今日の天気は快晴。
セイレーンはこの屋敷に来て、どこかの部屋にいるはずだ。
イスフィールはそんなことを考えつつ、レイアースに声をかけた。
「は?何でだ?」
「話があるの。」
「何の?」
「いいから。早く!」
「…へいへい。」
レイアースは首を傾げながらセイレーンを探しに向かう。
それを見送ると、イスフィールはマリーナを連れてユニゾンの部屋へ走っていった。

「あれ、イスフィール?どうしたんだ?」
部屋にはいると、いつものようにユニゾンののほほん声がイスフィールを向かえる。
「父様、ハーブティー入れといて。私から話したいことがあって…」
ユニゾンは細い目をわずかに見はると、マリーナに向かって手招き。
「なら、マリーナ。君も手伝ってくれ。」
「はいっ!任せてください~☆」
元気に(でもどこかのほほんとしている)立ち上がるマリーナを見て、イスフィールも立ち上がりかけた。
「じゃあ、私も何か」
やりたい、と続ける前に、ユニゾンが微笑む。
「そんなにやりたいなら、見てハーブティーの作り方を覚えなさい。」
「えぇっと…。」
「分かったかい?」
「…はぁい…。」
ユニゾンの言い方には、有無を言わせぬ感じがあった。
仕方なく見ていると、ゆっくりとハーブのにおいが漂ってくる。
思わず話の内容を忘れるところだった。
「イスフィール!連れてきたぞ。」
ドアが開き、レイアースが入ってくる。
その後ろにはひらひらと手を振っているセイレーン。
「ん、ありがと。じゃあ、話し始めてもいい?」
「ああ。ハーブティーもできたようだしな。」
ハーブティーがそれぞれの前に置かれる。
一口飲んで、それを十分に味わい、大きく息を吸い込んだ。
「い、言うわよ。」
何となく確認。
ユニゾン達はしっかりと頷いた。
「私、外に行きたい。イズライールの時みたいに。」
しーんと部屋が静まる。

ハーブティーの湯気だけが、ふわりと揺れた。


written by ふーちん


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