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『楽園の薔薇』13.ライガールの薔薇<2>

2011-12-25 19:46:13 | 小説『楽園の薔薇』
楽園の薔薇

13.ライガールの薔薇

<2>

ユニゾンに言われたようにドアを静かに閉め、レイアースとイスフィールは書庫に向かった。
「…イスフィール。」
誰もいないことを確かめてから、レイアースが声を上げた。

「誰だあいつはっ!!」

家中に響いたような声だった。
キーンという耳鳴り(?)が収まると、イスフィールはいやそーな顔をして言う。
「フレイル。」
「…呼び捨てでいいのかよ。」
「少なくとも、エプスタインよりは身分下よ。」
「…そりゃ、エプスタインだからな。」
エプスタイン家は、楽園で一番身分が高い。
北をライガール、南をシェルイダ、西がカサブランカで、東はリリアナがおさめており、さらにその上にたつのが楽園の中心部をおさめるエプスタインだ。
「…なに、あいつ。」
ふと、本棚の陰からセイレーンが登場。
思いっきり顔をしかめている。
「…レイアースと同じ質問をしないでよ…」
イスフィールは呆れた。
さすが双子というところだろうか。
「すごく、やな感じがする。」
「やな感じ…?」
セイレーンの予感はよく当たる。
主にイスフィールの行動についてだが。
イスフィールたち3人が不安になったとき、楽しそうな足音が聞こえてきた。
まもなくしてフレイルがひょこっと顔を出す。
「イザベラ、話し終わったよー。…あれ、兄上さん増えてない?」
「…気のせいでしょう。鳥肌が立つこといわないでください。」
「?そう?じゃ、準備して。日暮れまでにはライガールにつきたいから。」
「は!?さすがにそれは無理じゃないですか!?」
適当に話題をそらしつつ、イスフィールは書庫から離れる。
これ以上レイアースたちのことを詮索されると困る。
フレイルを冷たい目で見ていたレイアースとセイレーンは、少しため息をついた。

イスフィールじゃないが、変装して調査―――いや、追いかけたくなった。
彼女は、無防備すぎる。


written by ふーちん


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