I~これが私~

風の吹くまま,気の向くまま,ありのままの自分で。

『ミゼット ウィング』第6章-2

2010-12-29 23:52:41 | 小説『ミゼット ウィング』
ミゼット ウィング
 ~小さな小さな はね物語~


第6章 平凡な秋の一日

2.待ち人よ、早く来い!

「何でいつも当日に言うのよ~!」
「それに待ってるだけなんて退屈すぎるって…」
今にも暴れ出しそうなロアと、せわしなく部屋を動き回るナチュラル。
さすがにそこまで激しく表現はしないが、他の4人も同じ気持ちだ。
これこそ以心伝心(?)
「ようし!もう行く!つまんないし…。」
レストが勇ましく立ち上がる。
そして出入り口のドアノブに手をかけたが、開かない。
「………。」
何も言わずにレストは戻ってきたが、こめかみに立つ青すじがくっきりと見えていた。
無表情でいるところがまたさらに怖かったりする。
一緒の部活のシャープでさえ顔をそらした。
「あーあ。今ごろ学園の生徒はどんなに幸せか…。」
ラートはカーテンの掛かった窓を見てつぶやいた。
この窓は、ついさっきに電話がかかってきたものだ。

『あ、中庭見えないようにカーテンしてねー!』
ブチッ ………
電話に出たフラットのキレる音と、かけてきたベル部長の電話が切れるのは、ほぼ同時だった。
文句が言えないフラットは、プルプルと震えながらカーテンを閉めるしかない。
ちょっとだけ見える部室の窓から、、3人の部長の笑顔(ニヤリ系)が見えてしまったが、フラットも笑顔で返した(怒り系)。

「まったく…。私達で遊んでるんじゃないの?」
シャープの素朴な疑問に空気がピシッと張りつめた。
ややあって、ロアの我慢が限界点を突破する。
「そうよねぇ私達なんか1年生だもの。3年生のオモチャになるのは当然よね。あはは、なんで気付かなかったんだろう…。フフフ…。」
何かちょっとロアが壊れた。
前髪がロアの顔にかかり、目の部分が黒く見える。
フツーでもコワイのに、さらにコワくなっていた。
…前髪恐るべし…。(←いや、何かチガウ。)
そしてロアは大きく息を吸って―――叫んだ。
「マネージャー!早く来ぉ~~い!!!!」
すると。
返事が来た。
冗談でも何でもなく、本当に。
「…来たけど。」



written by ふーちん


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