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『楽園の薔薇』12.イザベラ、初仕事!<1>

2011-06-12 19:08:51 | 小説『楽園の薔薇』
楽園の薔薇

12.イザベラ、初仕事!

<1>

「お、お帰り、イスフィール。」
イスフィールが家に入ると、爽やかなハーブティーの香りに迎えられた。
それとともにユニゾンの声も聞こえる。
「ただいまぁ…。」
「どーした?元気ないね、イスフィール。」
深緑の髪・黒い目のセイレーンがのんきに尋ねた。
レイアースと似てる(というか同じ)顔は、無邪気で幼く見えるが、ほんとは双子の兄。
いつ見ても信じられないけど(酷!)
「仕方ないじゃない。せっかくの仕事、抜けてきたんだから。」
そう言い返すと、セイレーンはくすっと笑う。
「ずいぶんと気に入ったんだね。」
「当たり前でしょ。で、父様。今日はどしたの?」
1つため息をついて『イスフィールモード』に切り替えたイスフィールは、自らの作ったクッキーをつまんでいるユニゾンに問いかけた。
「え、うーんとだねぇ…。まぁ、座りなさい。」
ユニゾンはなぜか言いよどみ、イスフィール達を座らせる。
どこからかマリーナがやってきて、真っ黒の何かをテーブルの上に置いた。
「イスフィール様っ♪これ、ぜひ食べてくださいね?」
「ちょ、ちょっと待って、マリーナ。これ食用?そもそも何?」
イスフィールの額に冷や汗が浮かんだ。
なんだか、食べてはいけない気がする。
「もちろんクッキーですよ。いつもより上手にできました!」
にこにこと笑って、さも当然のように言うマリーナ。
いつもよりって、いつもはもっとすごいのか?
クッキーに見えなさすぎて、恐ろしい。
「えーっと、マリーナ。占いで出たことを話してくれないか?」
こういう事に慣れていないユニゾンのかわりに、セイレーンが苦笑して言った。
マリーナは自分のではなくユニゾンが作ったクッキーを食べると、ゆるーい表情で話し始める。
「今日、占術で出たんですけど…。」

表情を引き締めた者は、誰1人としていなかった。
皆、マリーナのクッキーに気を取られていて。

written by ふーちん


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