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突然の来客2

2021年09月14日 | 焼き芋みたいなショートエッセイ


焼き芋みたいな

エッセイ・シリーズ  (56)
「突然の来客2」 

   
「そうか。そうだよね」

「そうよ。皆んなその感覚はあるわよ。私にもあるわ。子供の時からね」

ユキちゃんにそう言われると、僕は何だか安心した。

「前に何かの本に書いてあったけど、生命体の母体がひとつの大きな海だとすると、
その波のひとつひとつが一人一人の命だって。
波が立っている時がその人の「生」の状態で、
波が平らになった時が「死」の状態なんだと。

元は皆んな同じ海の一部だから、本質も同じだって。
私、それ読んだ時にスーっと心に入って来たの。そうかも知れないなって」

       

「つまりは、皆んな同じ大海ってことだ?」

「ま、分かり易く言うとそうなるわね。でも、そう思わない?」

「うん。そうかも知れないな。だから気持ちが伝わったり、共感したり、感動したり出来るんだ」

波が立っている時が生きている状態、波が平らになった時が死んでいる状態、
生命はその生死を繰り返す・・生死流転、永遠の生命

僕はこの部分に素直に心魅かれた。
「なるほどな」


ふと、鹿の姿が目に入った。
鹿は呑気にウトウトと眠ってしまってるようだった。

「こいつ、案外良い奴かも知れないな」
何故かそう思った。


  


突然の来客と言えば、
僕の長年の友人ごーるでん・R殿、彼もそうだ。
ある夜、僕の知り合いに連れられて、当時住んでいたアパートに突然訪ねてきた。
それ以来、何だか意気投合して、気が付けばもう30年来の付き合いになる。
これまで彼とは数多くの楽しい思い出を刻んで来た。交流は現在も変わらず続行中だ。

そして、友人のN殿もそうだ。
20年ほど前のある日、やはり突然我が家を訪ねて来た。
「ピンポーン」
「はい、どちら様ですか?」
「じつは知り合いからバイク隊の話を聞いて、是非参加したくて伺いました」
「あ、そうですか!」
そんな感じの出会いだった。
ちょうど僕が市と提携して、ボランティアの災害救援バイク隊を立ち上げた時期だった。
N殿ともあれから20年、数々のツーリングやキャンプなどの
楽しい思い出を重ねて来た。

そうだ、中学高校時代の親友デンスケとの出会いもそう。
放課後、中学校の玄関で靴を履いている時、
デンスケが後ろから声を掛けて来たのが最初だった。
「今から家へ遊びに来ない?自転車だよね?」

考えてみると何だか面白いな。
長い付き合いになった友の多くが、僕からすれば「突然の来客」だった。
不思議なものだ。

その時、うとうと眠りこけていた鹿がぱっと目を覚まし、僕に向かって言った。
「人生、意外とシナリオがあるのかも知れませんよ」

鹿はそう言うと、焚き火の前でまたニターと笑い、
気持ち良さそうに目を閉じた。

「こいつ、何者なんだよ」

僕は何だか可笑しくて、むははと笑ってしまった。




   
             ~終わり~





        星空Cafe、それじゃまた。
           皆さん、お元気で!  


 








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