快読日記

日々の読書記録

「困ってるひと」大野更紗

2012年10月11日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《10/7読了 ポプラ社 2011年刊 【手記】 おおの・さらさ(1984~)》

各種メディアで紹介されて大ヒット、絶賛生存中!の闘病記録。

彼女を襲った難病の名前は「筋膜炎脂肪織炎症候群」プラス「皮膚筋炎」。
自己免疫疾患なんですが、それがいったいどんな症状なのかだけでも読む価値ありだと思います。

福島に生まれ育った女の子が、上智大学に入り、ビルマの難民救済活動に目覚め、ほどなくして「身体じゅうがおかしく」なる。
発疹、体に力が入らない、全身が「真っ赤な風船みたいにパンパンに腫れ、触るだけで痛い」、関節が曲がらない、熱が下がらない、口内の炎症、さらなる高熱、眼底の炎症、皮膚のただれ、涙が出ず目が開かなくなる、そのころになると起き上がるどころか寝返りも打てず、下痢、脱毛、「なんというか、もう、自分自身が人間じゃない感じがした。石。石です」(29p)

これはいったい何の病気なのか、それが分かるまで、分かった後、どちらにせよ辛い。
検査も治療も拷問みたいです。

外部からやってくる“病原菌”と闘うのもキツいけど、自分の体の機能そのものが壊れ、自分を襲ってくるというのがまた残酷。
でも、彼女を一番傷つけたのは、その病気や運命、といったものより、周囲の人たちとの関係だったような気がします。
まだ若いからなのか、世代的なものなのか、本人の資質なのか(たぶん全部)、人と接するときの加減が下手で、人間関係が滑らかに行かず、ささいなことで傷ついたり傷つけたりする。
病気よりもそっちの方が痛々しかったです。
若い人って大変だなあ。
だから、この文章も装飾過多で無駄が多い。
辛い話をおもしろく語りたい、その心意気やよし、しかし、当人がそれをおもしろがれる状態じゃないのに無理している雰囲気がダダ漏れで、読んでいて居心地が悪い。

この無駄にデコライティブな表現が彼女にとって外部との緩衝材になっているんだろうけど、
そういうのを脱ぎ捨てて、もうすこしさっぱり語ってみたらどうかとおばちゃんは思うんでした。

/「困ってるひと」大野更紗
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