快読日記

日々の読書記録

「黒澤明「生きる」言葉」黒澤和子

2020年02月27日 | アート・映画など
2月26日(水)

ずっと前にテレビで、人間国宝かなにかの竹細工作家を見ました。

そのおじいさんの作る籠や花器は皇室に収められている、というすごい人で、
納得行かないものは庭先にポイと捨ててあるのに、
奥さんが「ちょうどいいザルがある」とばかりに拾って、みかんを入れたりするんだそうです。おいおい。

そのとき、一緒に見ていた父が「人間国宝だろうがなんだろうが、ばばあからみたらただのじじいだ」と言ったのを、「黒澤明「生きる」言葉」(黒澤和子 PHP研究所)を読みながら思い出しました。
口が悪くてすみません。


「巨匠」「天皇」と呼ばれ、なんだか尊大でワンマンな世間の印象を、「うちのお父さんはそんなんじゃない、かわいくて温かい人なんだよ」と長女が覆そうとするエッセイ集です。


どんな有名人でも、えらい人でも、犯罪者であっても、
家族にとってはただの夫やお父さんだ、というのは、
当たり前だけどつい忘れてしまうことです。
(もちろん、妻やお母さんでも子供でも、じいさんばあさんでも)

だから、人間国宝が作ったザルも、
奥さんにとっては「うちのお父さんが作ったやつ」でしかない、という温かさ。


本の話はというと、
100の名言が並んでいて、
とくに80歳のときの「映画のことは、まだよく分からない」がおもしろかったです。

仕事でも芸事でもそうですが、
やらないうちの方が分かったような気になっていて、
やり始めると「あれ?」ってなって、
やればやるほど分からなくなる、
確かにそういうものかもなあ、とぼんやり思いました。