(大白森から秋田駒ヶ岳)
三日目の朝。昨夜は同宿の沢屋の男性が窓を開けておいてくれたおかげで涼しく眠ることができた。いや涼しいというか寒いくらいになったので、備え付けの毛布を借りたくらいだったが、それでも大深山荘での一夜よりは快適に眠ることができた。男性はゆっくりと出発するということだったので、朝食を済ませ、先に出発する。水は田代平山荘の水場が怪しいということだったので、5リットルを積んで歩くことにした。
まずは大白森へのやや傾斜の急な登り。朝一発目にしてはきつい登りだ。ガクアジサイなどの藪が茂る道で早くも靴が浸水を始める。靴のことはもう諦めよう。他の「森」と付く山と比べるとこの登りの藪は濃い。暗い森の中、藪を掻き分けて登ると前方が明るくなってきた。森を抜けると広い草原が広がる。念願の大白森の湿原にやって来たのだ。ゆっくり、ゆっくりと木道を進む。振り返れば昨日苦闘した曲崎山が見える。どこまでも続くかと思われる草原の木道を一歩一歩踏み締めていく。草原の向こうには大白森山荘の小屋ノートに記されていたように岩手山、早池峰、八幡平、秋田駒ヶ岳を見ることができる。それだけに岩手山と八幡平が逆光となるのが残念でならない。ゆっくりと歩き大白森(1215.6)頂上に着く。ここからは秋田駒から乳頭山へと続く稜線の眺めが良い。
(大白森への登り ガクアジサイの藪)
(森を抜けた所)
(岩手山)
(八幡平方面)
(曲崎山)
(パノラマ)
(天に延びる道)
(大白森頂上)
(雲海に浮かぶ岩手山)
後ろ髪を引かれつつ大白森頂上を辞する。木道を緩やかに下ると秋田駒の右下に次の小白森山が見えてきた。大白森に比べると湿原は小さいようだ。湿原が終わると森の中の急降下となる。藪は無く、ようやく歩き易くなった。傾斜が緩み、刈払いの終わった道を快適に進む。鞍部から緩やかに登るとオオシラビソの森に木道が延びている。大白森よりもよっぽど「森」らしい。木道を進むと湿原の広がる小白森山(1144)の頂上に出た。山頂標識の先に湿原を見渡す展望デッキがあり、湿原と森と秋田駒の三つが揃ったビュースポットが素晴らしい。
(秋田駒と小白森山)
(刈払いを終えた道)
(小白森山)
(湿原と森と秋田駒)
再び森に入り、一旦急降下した後は快適な森歩きが続く。昨日まで藪に悩まされた身としては刈払いの済んだ道は心休まる一瞬だ。道標のある鶴の湯分岐を過ぎるとプレートの掛かる1101のピーク。ここを越えると蟹場分岐まで変化に乏しい森の中の道が続く。ついつい歩みも速くなってしまう。蟹場分岐を過ぎると立派な木道が現れる。観光客向けに用意したのだろうか。松川温泉への道にも木道はあったが、雨の降る頃になると一昨年歩いたように一面水浸しになるということか。緩やかな道も、田代平への登りに差し掛かると長い木段がある急傾斜の厳しい道となる。森を抜けると傾斜が緩み、田代平の縁に出る。
(鶴の湯分岐)
(森を進む)
(蟹場分岐)
(長い木段)
(アザミ)
最初は岩がゴロゴロとした歩きにくい道を進む。頭上が開けているので、非常に暑い。日陰が欲しいと歩みを速めると藪の煩い木道に出る。木道を進むと段々と周囲が湿地帯の雰囲気となってきた。緩やかに傾斜を上げていくと乳頭山が大きく見えてきた。ここまで来ると秋田駒も大分近い。1239の湿原のピークを過ぎると小さな池がある。上に見える乳頭山が逆さで写りなかなか風情がある。池の周囲は穏やかな湿原で何と携帯電話の電波もいくらか入る。田代平山荘のある一段上の湿原へは思ったよりも急な登り。高度を上げるにつれて、今朝出発した大白森の平らな頂上も見えるようになった。孫六温泉からの分岐を見送ると田代平(たしろたい)山荘に着く。1階は土間だが細い板張りがあるので眠ることは可能だろう。2階はもちろん板の間だ。快適そうな小屋だが、ここははっきりとした水場がない。どうせなら乳頭山を越えて、千沼ヶ原で水を汲んだほうが良いだろう。これで縦走続行が決まった。
(乳頭山を望む)
(チングルマ)
(逆さに写る乳頭山)
(秋田駒ヶ岳)
(一段下の田代平の奥に大白森)
(田代平山荘)
(山荘前の池)
(田代平パノラマ)
田代平山荘から乳頭山へはやや傾斜の急な登りが続く。ただ思ったよりもきつくはない。周囲には高い樹は無くなり、日に確りと炙られる。それでも風はかなり涼しく感じられるようになってきた。高度が上がるにつれて下山先である田沢湖も見えるようになってきた。今回の縦走で田沢湖が見えたのは初めてである。黒湯温泉への分岐を過ぎると人の声がしてきた。振り返るとグループで登ってくる人たちがいるようだ。山頂手前で傾斜は緩くなり、ベンチが置かれている。山頂付近は南側が絶壁となり、迫力は十分。北側に回り込むように付けられた道を進むと乳頭山(烏帽子岳 1478)頂上だ。これから向かおうとする秋田駒ヶ岳への道が一望できる。秋田駒はまだ大分遠く感じる。目の前に伸びやかな尾根を広げる笊森山には田代平までは見掛けた高い樹が無さそうだ。これからの道はこれまで以上に高原的な雰囲気を味わえるのかもしれない。
(田代平山荘を振り返る 奥に見えるのは大白森)
(田沢湖)
(秋田駒ヶ岳と田沢湖)
(山頂へあと少し)
(山頂部の絶壁)
(笊森山)
(乳頭山頂)
(パノラマ)
山頂には家族連れや先ほど見掛けた中高年のグループなど、軽装の登山者が目立つ。この辺りは日帰り山行の領域なのだと改めて思い知らされる。混みあい始めた山頂を下り、千沼ヶ原を目指す。そろそろ水を補給したいのだ。まずはやや急な斜面を下る。お花畑が綺麗だが、裸地化が進んだ所もあり、踏み跡が交錯している。ここを下りきると小石が浮いた乾いた道が笊森山へと延びていく。田代平を過ぎてからもそうであったが、泥濘んだ道は殆ど無い。笊森山へと近付いていくと藪がやや煩くなってくる。朝方だとかなり朝露で濡れてしまうのではないだろうか。千沼ヶ原の分岐から先、笊森山に向かってはかなり急傾斜の道だ。重荷だとしんどそうだ。
(お花畑)
(乳頭山を振り返る)
(西側には沼も見える)
笊森山への道を見送り、千沼ヶ原へ下っていく。ほぼ平坦な地形だが、沢を横切る度に急なアップダウンを強いられる。何度か沢を横切ったところで、山の上のほうから勢いよく水が流れ出している所に出くわす。これがエアリアに書かれた水場だろうか。沢屋の男性は何処かの沢の源流になっていると言っていたが…。水を汲もうか迷っていると前から中高年の夫婦がやって来た。水場が何処か聞いてみるとわからないという。ただこの沢は温泉ではないので飲めるはずとのこと。流れが速いので掬って飲んでみる。温いが変な味はしない。とりあえずペットボトルとサーモスに満たしておく。
(水を汲んだ沢)
水を汲んだ沢から更に先へ進む。すれ違う人が段々増えてきた。しばらく進むと池塘が点在する湿地帯に出る。この辺りを千沼ヶ原(せんしょうがはら)と言うようだ。一応他に水場はないか先へ進んでみる。しかし下れども下れども池塘ばかりで沢らしきものはない。あまり下り過ぎると葛根田渓谷への道に出てしまうので、引き返すことにした。
(千沼ヶ原)
途中笊森山への分岐となっていた所まで戻り、直接笊森山を目指す。この辺りから東側の天候が怪しくなってきた。尾根伝いのコースに合流するまでは木段交じりの急坂が続く。水を補給したせいかなかなか足が上がらない。尾根伝いのコースに合流すれば山頂は近い。笊森山(1541.0)頂上には若い男性一人と中高年の女性グループが展望を楽しんでいた。だがボクは天候が思わしくないので、何となく落ち着いて展望を楽しもうという気がしない。山頂で写真を取ることもなく、今日の宿泊地である秋田駒ヶ岳の八合目小屋を目指す。
(笊森山)
(山頂付近から)
笊森山から次の湯森山までは広い平原が広がる。八幡平周辺と異なり、高い樹が無く、開放的な雰囲気だ。アップダウンが緩やかなのでグングンとスピードを上げていく。この辺り一帯を熊見平というそうで、沢屋の男性は何度かツキノワグマを見たことがあるという。でも今恐いのは熊よりも天候の悪化だ。やがて4、5mはあろうかという大きな岩が見えてきた。近寄ると宿岩と書かれた標柱が立っていた。
(熊見平 かなり東側に雲が湧いてきた)
(宿岩)
(熊見平パノラマ)
宿岩のある丘を下り、木道を進む。珍しく地塘があり、湿地帯の雰囲気がある。熊見平と書かれた標柱を過ぎると道は傾斜を増す。抉れた道が続き、歩くのに難儀する。高い樹は無いが、潅木類に覆われて、日差しを遮ってくれる所もある。虫が多いがかまわず休憩を取る。道は尾根を真っ直ぐ通らず、斜面をトラバース気味に上がっていく。東側斜面にはこの暑い時期にもかかわらず、大きな雪渓が残り、山からは沢が流れ出している。そんな涼しげな光景とは無縁の暑い道。何度も立ち止まり、水を飲む。水は残り1リットルを切った。傾斜が緩むと湯森山の肩のような所に出る。ここから山頂がまたなかなか近付かない。潅木や笹の背が高く、見晴らしの無い道を上がると湯森山(1471.7)頂上だ。中高年の男性が休憩を取っており、八合目小屋の場所を聞いてみる。すると小屋の場所はわからないが、駐車場なら笹森山方面へ下ったほうが近いと言う。なるほど八合目小屋は宿泊所という認識はあまりされていないらしい。
(地塘)
(湯森山はまだ遠い)
(雪渓が見える)
(笊森山を振り返る 左奥は乳頭山)
(湯森山)
八合目小屋への道は一旦緩く下って、笹森山へ登り返す。鞍部からは乳頭山と笊森山の眺めが良い。特に片側だけが尖った乳頭山は周囲がなだらかなだけによく目立つ。国民休暇村への道を分けると笹森山へ少し登り返す。笹森山頂への道を見送るといよいよ急斜面の下りだ。土留めが埋められた道が歩き難く、おまけにかなり暑い。遮るものの無い中、ついに足が完全に止まってしまった。どうやら熱中症の手前らしい。熱中症予防に食べていた塩のラムネを探るともう残りが無い。水だけではどうしようもないので何か無いかと探っているとスナック菓子が出てきた。普段こうした物は殆ど口にしないのだが、念のために持ってきていたのだ。ザレた道の脇に腰を下ろし、スナック菓子を頬張る。持っていた水全てを使ってタオルを濡らし、首に掛ける。
(乳頭山と笊森山)
(男女岳を望む 道路の終わりには八合目小屋も見える)
落ち着いたところで急斜面を下り始める。赤倉沢に下りて水を浴びた後、小屋へ最後の登り。傾斜は緩いがなかなか足が上がらない。抉れて溝のようになった道が終わると小屋が見えてきた。八合目小屋に到着だ。小屋の向いにある水場で顔を洗い、水を飲む。小屋の建物にはバスを待つ人が大勢居り、ボクのような大荷物を持った人間はちょっと珍しいようだ。小屋には売店が併設されているので、小屋の利用方法を聞くと1,000円以上のチップ制だという。後でお金を払うことを約束して、一先ず2階の宿泊所に上がる。結構広い部屋で10人は余裕で泊まれそうだ。ただトイレの臭いが充満していたので、窓は一旦全て開け放っておいた。汚れ物を水場で洗って干したり、昼食を取ったりしながらのんびりとした時間が過ぎていく。15時には売店の人も山を下りてしまい、17時最終のバスを見送ると小屋にはボク独りとなった。小屋の戸を閉め、外にある温度計を見るとまだ30度近くを指している。夕食を取り、エアマットの上に寝転ぶ。ラジオによると日本海側は今年最高の気温となったと伝えていた。
(八合目小屋)
(小屋1階の様子)
DATA:
大白森山荘4:50~5:35大白森~6:23小白森山~6:50鶴の湯分岐~7:43蟹場分岐~9:03田代平山荘~9:50黒湯分岐~
10:03乳頭山~10:48千沼ヶ原分岐~11:03千沼ヶ原~11:38笊森山~12:05宿岩~12:38湯森山~12:57休暇村分岐~
13:43八合目小屋(泊)
八合目小屋
水場直ぐ側 水量豊富 なお小屋の中に水道もある 2階のみ板の間 10人位泊まれる 携帯電話は少し通じる
トイレは別棟の公衆トイレを使う 男女身障者用有り 水洗で紙もある
チップは1,000円以上から
歩数 32,922歩
地形図 曲崎山 秋田駒ヶ岳
三日目の朝。昨夜は同宿の沢屋の男性が窓を開けておいてくれたおかげで涼しく眠ることができた。いや涼しいというか寒いくらいになったので、備え付けの毛布を借りたくらいだったが、それでも大深山荘での一夜よりは快適に眠ることができた。男性はゆっくりと出発するということだったので、朝食を済ませ、先に出発する。水は田代平山荘の水場が怪しいということだったので、5リットルを積んで歩くことにした。
まずは大白森へのやや傾斜の急な登り。朝一発目にしてはきつい登りだ。ガクアジサイなどの藪が茂る道で早くも靴が浸水を始める。靴のことはもう諦めよう。他の「森」と付く山と比べるとこの登りの藪は濃い。暗い森の中、藪を掻き分けて登ると前方が明るくなってきた。森を抜けると広い草原が広がる。念願の大白森の湿原にやって来たのだ。ゆっくり、ゆっくりと木道を進む。振り返れば昨日苦闘した曲崎山が見える。どこまでも続くかと思われる草原の木道を一歩一歩踏み締めていく。草原の向こうには大白森山荘の小屋ノートに記されていたように岩手山、早池峰、八幡平、秋田駒ヶ岳を見ることができる。それだけに岩手山と八幡平が逆光となるのが残念でならない。ゆっくりと歩き大白森(1215.6)頂上に着く。ここからは秋田駒から乳頭山へと続く稜線の眺めが良い。
(大白森への登り ガクアジサイの藪)
(森を抜けた所)
(岩手山)
(八幡平方面)
(曲崎山)
(パノラマ)
(天に延びる道)
(大白森頂上)
(雲海に浮かぶ岩手山)
後ろ髪を引かれつつ大白森頂上を辞する。木道を緩やかに下ると秋田駒の右下に次の小白森山が見えてきた。大白森に比べると湿原は小さいようだ。湿原が終わると森の中の急降下となる。藪は無く、ようやく歩き易くなった。傾斜が緩み、刈払いの終わった道を快適に進む。鞍部から緩やかに登るとオオシラビソの森に木道が延びている。大白森よりもよっぽど「森」らしい。木道を進むと湿原の広がる小白森山(1144)の頂上に出た。山頂標識の先に湿原を見渡す展望デッキがあり、湿原と森と秋田駒の三つが揃ったビュースポットが素晴らしい。
(秋田駒と小白森山)
(刈払いを終えた道)
(小白森山)
(湿原と森と秋田駒)
再び森に入り、一旦急降下した後は快適な森歩きが続く。昨日まで藪に悩まされた身としては刈払いの済んだ道は心休まる一瞬だ。道標のある鶴の湯分岐を過ぎるとプレートの掛かる1101のピーク。ここを越えると蟹場分岐まで変化に乏しい森の中の道が続く。ついつい歩みも速くなってしまう。蟹場分岐を過ぎると立派な木道が現れる。観光客向けに用意したのだろうか。松川温泉への道にも木道はあったが、雨の降る頃になると一昨年歩いたように一面水浸しになるということか。緩やかな道も、田代平への登りに差し掛かると長い木段がある急傾斜の厳しい道となる。森を抜けると傾斜が緩み、田代平の縁に出る。
(鶴の湯分岐)
(森を進む)
(蟹場分岐)
(長い木段)
(アザミ)
最初は岩がゴロゴロとした歩きにくい道を進む。頭上が開けているので、非常に暑い。日陰が欲しいと歩みを速めると藪の煩い木道に出る。木道を進むと段々と周囲が湿地帯の雰囲気となってきた。緩やかに傾斜を上げていくと乳頭山が大きく見えてきた。ここまで来ると秋田駒も大分近い。1239の湿原のピークを過ぎると小さな池がある。上に見える乳頭山が逆さで写りなかなか風情がある。池の周囲は穏やかな湿原で何と携帯電話の電波もいくらか入る。田代平山荘のある一段上の湿原へは思ったよりも急な登り。高度を上げるにつれて、今朝出発した大白森の平らな頂上も見えるようになった。孫六温泉からの分岐を見送ると田代平(たしろたい)山荘に着く。1階は土間だが細い板張りがあるので眠ることは可能だろう。2階はもちろん板の間だ。快適そうな小屋だが、ここははっきりとした水場がない。どうせなら乳頭山を越えて、千沼ヶ原で水を汲んだほうが良いだろう。これで縦走続行が決まった。
(乳頭山を望む)
(チングルマ)
(逆さに写る乳頭山)
(秋田駒ヶ岳)
(一段下の田代平の奥に大白森)
(田代平山荘)
(山荘前の池)
(田代平パノラマ)
田代平山荘から乳頭山へはやや傾斜の急な登りが続く。ただ思ったよりもきつくはない。周囲には高い樹は無くなり、日に確りと炙られる。それでも風はかなり涼しく感じられるようになってきた。高度が上がるにつれて下山先である田沢湖も見えるようになってきた。今回の縦走で田沢湖が見えたのは初めてである。黒湯温泉への分岐を過ぎると人の声がしてきた。振り返るとグループで登ってくる人たちがいるようだ。山頂手前で傾斜は緩くなり、ベンチが置かれている。山頂付近は南側が絶壁となり、迫力は十分。北側に回り込むように付けられた道を進むと乳頭山(烏帽子岳 1478)頂上だ。これから向かおうとする秋田駒ヶ岳への道が一望できる。秋田駒はまだ大分遠く感じる。目の前に伸びやかな尾根を広げる笊森山には田代平までは見掛けた高い樹が無さそうだ。これからの道はこれまで以上に高原的な雰囲気を味わえるのかもしれない。
(田代平山荘を振り返る 奥に見えるのは大白森)
(田沢湖)
(秋田駒ヶ岳と田沢湖)
(山頂へあと少し)
(山頂部の絶壁)
(笊森山)
(乳頭山頂)
(パノラマ)
山頂には家族連れや先ほど見掛けた中高年のグループなど、軽装の登山者が目立つ。この辺りは日帰り山行の領域なのだと改めて思い知らされる。混みあい始めた山頂を下り、千沼ヶ原を目指す。そろそろ水を補給したいのだ。まずはやや急な斜面を下る。お花畑が綺麗だが、裸地化が進んだ所もあり、踏み跡が交錯している。ここを下りきると小石が浮いた乾いた道が笊森山へと延びていく。田代平を過ぎてからもそうであったが、泥濘んだ道は殆ど無い。笊森山へと近付いていくと藪がやや煩くなってくる。朝方だとかなり朝露で濡れてしまうのではないだろうか。千沼ヶ原の分岐から先、笊森山に向かってはかなり急傾斜の道だ。重荷だとしんどそうだ。
(お花畑)
(乳頭山を振り返る)
(西側には沼も見える)
笊森山への道を見送り、千沼ヶ原へ下っていく。ほぼ平坦な地形だが、沢を横切る度に急なアップダウンを強いられる。何度か沢を横切ったところで、山の上のほうから勢いよく水が流れ出している所に出くわす。これがエアリアに書かれた水場だろうか。沢屋の男性は何処かの沢の源流になっていると言っていたが…。水を汲もうか迷っていると前から中高年の夫婦がやって来た。水場が何処か聞いてみるとわからないという。ただこの沢は温泉ではないので飲めるはずとのこと。流れが速いので掬って飲んでみる。温いが変な味はしない。とりあえずペットボトルとサーモスに満たしておく。
(水を汲んだ沢)
水を汲んだ沢から更に先へ進む。すれ違う人が段々増えてきた。しばらく進むと池塘が点在する湿地帯に出る。この辺りを千沼ヶ原(せんしょうがはら)と言うようだ。一応他に水場はないか先へ進んでみる。しかし下れども下れども池塘ばかりで沢らしきものはない。あまり下り過ぎると葛根田渓谷への道に出てしまうので、引き返すことにした。
(千沼ヶ原)
途中笊森山への分岐となっていた所まで戻り、直接笊森山を目指す。この辺りから東側の天候が怪しくなってきた。尾根伝いのコースに合流するまでは木段交じりの急坂が続く。水を補給したせいかなかなか足が上がらない。尾根伝いのコースに合流すれば山頂は近い。笊森山(1541.0)頂上には若い男性一人と中高年の女性グループが展望を楽しんでいた。だがボクは天候が思わしくないので、何となく落ち着いて展望を楽しもうという気がしない。山頂で写真を取ることもなく、今日の宿泊地である秋田駒ヶ岳の八合目小屋を目指す。
(笊森山)
(山頂付近から)
笊森山から次の湯森山までは広い平原が広がる。八幡平周辺と異なり、高い樹が無く、開放的な雰囲気だ。アップダウンが緩やかなのでグングンとスピードを上げていく。この辺り一帯を熊見平というそうで、沢屋の男性は何度かツキノワグマを見たことがあるという。でも今恐いのは熊よりも天候の悪化だ。やがて4、5mはあろうかという大きな岩が見えてきた。近寄ると宿岩と書かれた標柱が立っていた。
(熊見平 かなり東側に雲が湧いてきた)
(宿岩)
(熊見平パノラマ)
宿岩のある丘を下り、木道を進む。珍しく地塘があり、湿地帯の雰囲気がある。熊見平と書かれた標柱を過ぎると道は傾斜を増す。抉れた道が続き、歩くのに難儀する。高い樹は無いが、潅木類に覆われて、日差しを遮ってくれる所もある。虫が多いがかまわず休憩を取る。道は尾根を真っ直ぐ通らず、斜面をトラバース気味に上がっていく。東側斜面にはこの暑い時期にもかかわらず、大きな雪渓が残り、山からは沢が流れ出している。そんな涼しげな光景とは無縁の暑い道。何度も立ち止まり、水を飲む。水は残り1リットルを切った。傾斜が緩むと湯森山の肩のような所に出る。ここから山頂がまたなかなか近付かない。潅木や笹の背が高く、見晴らしの無い道を上がると湯森山(1471.7)頂上だ。中高年の男性が休憩を取っており、八合目小屋の場所を聞いてみる。すると小屋の場所はわからないが、駐車場なら笹森山方面へ下ったほうが近いと言う。なるほど八合目小屋は宿泊所という認識はあまりされていないらしい。
(地塘)
(湯森山はまだ遠い)
(雪渓が見える)
(笊森山を振り返る 左奥は乳頭山)
(湯森山)
八合目小屋への道は一旦緩く下って、笹森山へ登り返す。鞍部からは乳頭山と笊森山の眺めが良い。特に片側だけが尖った乳頭山は周囲がなだらかなだけによく目立つ。国民休暇村への道を分けると笹森山へ少し登り返す。笹森山頂への道を見送るといよいよ急斜面の下りだ。土留めが埋められた道が歩き難く、おまけにかなり暑い。遮るものの無い中、ついに足が完全に止まってしまった。どうやら熱中症の手前らしい。熱中症予防に食べていた塩のラムネを探るともう残りが無い。水だけではどうしようもないので何か無いかと探っているとスナック菓子が出てきた。普段こうした物は殆ど口にしないのだが、念のために持ってきていたのだ。ザレた道の脇に腰を下ろし、スナック菓子を頬張る。持っていた水全てを使ってタオルを濡らし、首に掛ける。
(乳頭山と笊森山)
(男女岳を望む 道路の終わりには八合目小屋も見える)
落ち着いたところで急斜面を下り始める。赤倉沢に下りて水を浴びた後、小屋へ最後の登り。傾斜は緩いがなかなか足が上がらない。抉れて溝のようになった道が終わると小屋が見えてきた。八合目小屋に到着だ。小屋の向いにある水場で顔を洗い、水を飲む。小屋の建物にはバスを待つ人が大勢居り、ボクのような大荷物を持った人間はちょっと珍しいようだ。小屋には売店が併設されているので、小屋の利用方法を聞くと1,000円以上のチップ制だという。後でお金を払うことを約束して、一先ず2階の宿泊所に上がる。結構広い部屋で10人は余裕で泊まれそうだ。ただトイレの臭いが充満していたので、窓は一旦全て開け放っておいた。汚れ物を水場で洗って干したり、昼食を取ったりしながらのんびりとした時間が過ぎていく。15時には売店の人も山を下りてしまい、17時最終のバスを見送ると小屋にはボク独りとなった。小屋の戸を閉め、外にある温度計を見るとまだ30度近くを指している。夕食を取り、エアマットの上に寝転ぶ。ラジオによると日本海側は今年最高の気温となったと伝えていた。
(八合目小屋)
(小屋1階の様子)
DATA:
大白森山荘4:50~5:35大白森~6:23小白森山~6:50鶴の湯分岐~7:43蟹場分岐~9:03田代平山荘~9:50黒湯分岐~
10:03乳頭山~10:48千沼ヶ原分岐~11:03千沼ヶ原~11:38笊森山~12:05宿岩~12:38湯森山~12:57休暇村分岐~
13:43八合目小屋(泊)
八合目小屋
水場直ぐ側 水量豊富 なお小屋の中に水道もある 2階のみ板の間 10人位泊まれる 携帯電話は少し通じる
トイレは別棟の公衆トイレを使う 男女身障者用有り 水洗で紙もある
チップは1,000円以上から
歩数 32,922歩
地形図 曲崎山 秋田駒ヶ岳