野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

御前山から九鬼山 平成23年1月10日

2011年01月11日 | 山の思い出
(御前山から見た富士山)

久しぶりに奥武蔵を飛び出して御前山から九鬼山まで歩いてきました。九鬼山は山梨県大月市が選定した秀麗富岳十二景に選ばれ、富士山の展望が良いことで有名です。その九鬼山へ猿橋駅から延びる尾根を辿ってみようというのが今回の計画です。オール一般ルートですが、奥武蔵のバリエーションより数倍険しかったかもしれません。

前日の暖かさからうってかわって、朝起きると寒さが身に沁みます。それでも空気は澄んでいるので、富士山の展望は期待できそうです。これまた久しぶりに片道1千円を超える鉄道料金を払って猿橋へ到着。1千円というと奥武蔵なら往復料金を払ってもお釣りが来るくらいなので、私にとっては随分遠くにやって来たなという印象です。

猿橋駅南口へ降りると百蔵山と扇山がよく見えます。どちらも秀麗富岳十二景に選ばれており、実際に歩いてみるとよく富士山が見えました。今度は家族を連れて歩いてみよう。南口のロータリーを抜け、信号機のある交差点を右折したら、しばらく西へ向かいます。国道20号に差し掛かる辺りで桂台の分譲地へ向かう車道を上がっていきます。トンネルを潜り、南へカーヴする所で道標にしたがって山道へ入ります。駅から15分くらいでしたから、車道歩きの時間は比較的短い部類でしょう。

(猿橋駅から百蔵山と扇山)

山道は最初こそ土留めの木段があるものの、すぐに緩やかな山道となります。踏み跡は明瞭ですが、潅木や笹の藪が結構鬱陶しい。一旦杉の植林帯へ入れば藪は薄くなるものの、雑木林の尾根に出ると所々藪が煩い所がこの先ずっと続きます。地形図を見るとカーヴの所から南へ延びる尾根にダイレクトに乗ったようです。雑木林の尾根は冬枯れで葉を全て落とし、日光が燦燦と降り注いでいます。それでも北側斜面ということもあって、北風で体が凍りそうです。傾斜は急な所もありますが、全体としてみれば緩やかなほうでしょう。快調に飛ばしてきたせいか、何時の間にか桂台の分譲地が大分下に見えるようになってきました。

尾根上の木が葉を落としているおかげで、前方に木の生える尾根が横たわるのが見えてきました。もう縦走路が近いということなのでしょうか。振り返ると百蔵山や扇山が大分見やすい位置にあります。ここを下りに採ったら気持ちいいんでしょうね。先ほど見えた尾根に上がると神楽山と九鬼山をそれぞれ指す道標があります。もう縦走路に出てしまいました。登山口から40分ほどですから、かなり歩きやすい道と言えます。まずは東の神楽山へ向かうと3分で山頂(673.9)です。アンテナと三角点の置かれた山頂は展望はないものの、意外と日がよく当たります。更に南へ下る道もあるようですが、今回は往路を戻り、九鬼山を目指します。

(百蔵山)

(神楽山頂)

道標まで戻るとその先も明るい雑木林の道が続きます。藪は依然として鬱陶しい所もありますが、緩やかで歩きやすい道です。ここで初めて中高年の女性二人組と擦れ違いました。先行者がいるとの情報をいただきました。前方に壁のように立ちはだかる斜面が見えてくると上部に岩らしきものがチラチラと見えます。この岩のあるピークが御前山(御前岩)あるいは厄王山と言われる山で、急坂を喘ぎ登ると北側から巻いて道標の立つ分岐に出ます。御前山山頂と書かれたほうへ向かうと露岩のピークへ出ました。地形図を見ると標高は730mほど。扇山から富士山へまで大きな展望が広がります。これから歩く縦走路の向こうに聳え立つ富士山はなかなか画になります。のんびり休憩を取りたいところですが、風が強い上、高度感のある岩場なのでさっさと下ることにします。

(御前山の岩場)

(御前山からのパノラマ)

やや急な斜面を下ると保護ネットの掛けられた幼木帯へ出ます。その幼木帯を縫うように下りていく道があり、駒橋という地域に出るようです。幼木帯からは菊花山が見下ろせます。分岐を過ぎると前方に大きな岩が見えてきました。エアリアだと八五郎クドレと書かれた辺りのようです。岩を越えていくのかと思いきや、岩の南側を巻いていきます。ところがこの巻き道が曲者で、微妙に谷側に傾いている上、谷はかなりの急傾斜で高度感たっぷり。落ちたらまず助からないんじゃないでしょうか。

(駒橋への分岐)

(大岩 左から巻いていきます)

何とか巻き道を突破すると穏やかな道が続きます。この辺りは先ほどのような幼木帯が多く、北側で好展望が得られます。一瞬雪が積もっているのでは、と思うのは南大菩薩の白谷丸。高川山から延びる尾根のどん詰まりにあるむすび山、その上のゴルフ場と花咲山、そしていかつい姿の滝子山。菊花山・岩殿山・セーメーバン・雁ヶ腹摺山が一望できる所もあります。でも幼木帯から見えるこれらの景色は木が大きくなるまでの間だけ楽しめる時限的なもの。あと5年が限度でしょう。

(手前にむすび山、ゴルフ場の向こうが花咲山、その背後が滝子山)

(岩殿山から百蔵山までの展望)

再び壁のように立ち塞がる小ピークは北側から巻いて登っていきます。巻き道の途中に菊花山への道標があり、分岐を見送って登っていくと沢井沢ノ頭山頂です。特にプレートの類はなく、恩賜林の赤い標石があるだけです。沢井沢ノ頭からはまた穏やかな道が続きます。緊張を和らげる明るい尾根が出てくる辺り、ルート付けが絶妙です。道が南にカーヴする辺りで木の間越しに御前岩が見えます。

(菊花山分岐)

(御前岩を望む)

馬立山へ近づくと傾斜は急に。
正面の尾根を避けるため、南から巻くように上がっていくのですが、これが恐い。踏み跡が谷側に傾いているのはともかく、踏み跡が消えていて足場のない所もあります。ロープを括りつける場所がもう少し下にあれば歩きやすいんでしょうけれどねぇ。斜面にへばり付くように上がっていくと中高年の男性が通過するのを待っていてくれました。とりあえず傾斜が緩んだ尾根に出て、男性が下りていくのを見ていましたが、ストックを使って器用に下りていきました。うーん、自分も見習わなくては。

(馬立山のトラバース)

辿り着いた馬立山頂(797)は樹林に囲まれた落ち着いたピークです。展望はないので休憩せずに下りていくと札金峠と田野倉駅方面の分岐へ出ます。木の間越しには九鬼山が大分近くに見えてきました。尾根通しに下る田野倉駅方面は緩やかな道が続いているのに対して、これから下る札金峠方面はかなりの急坂です。ジグザグ気味に付けられた道は上から見るほどには酷くありません。ロープの付けられた所もありますが、無くても何とか下れてしまう程度。

(田野倉駅分岐)

一旦傾斜が緩み、再び傾斜が急になると杉・檜の植林帯へ入っていきます。枝打ちがされていないのか、暗い樹林帯を下っていくと札金峠に出ます。尾根を水流で抉られたような道が横切っていて、九鬼山以外は朝日小沢方面だけ新しい道標に書かれています。古い道標には消えかけた字で札金鉱泉と書かれていますが、鉱泉自体は既に営業していない模様。峠から南に延びる尾根を登るとまた明るい尾根に。九鬼山を見上げる位置にいるのでまだ掛かりそう。植林帯へ入るとエアリアに描かれた田野倉駅への分岐に出ます。札金峠は田野倉駅へ下る道に使われていないのでしょうか?

(九鬼山を見上げる)

(札金峠)

(田野倉駅分岐)


分岐を過ぎると725のピークとその先の小ピークは東に西に巻いていきます。雑木林の歩きやすい巻き道で、御前山から馬立山までの巻き道もこのくらいだと楽なんですけれどねぇ。特に紺屋の休場手前の巻き道は富士山と三ッ峠のビュースポットで、冬枯れでなくても良く見えそうです。何に使われていたか不明の鉄塔脇を抜けると紺屋の休場に到着。エアリアだと「紺場休場」と書かれていますが、現地の標識には紺屋の急場となっています。ベンチの置かれた広場からは西側の展望が開け、高川山の背後に三ッ峠と滝子山がよく見えます。高川山と滝子山の間に見える鋭鋒はお坊山辺りでしょうか。

(巻き道からの富士山)

(紺屋の休場)

(高川山方面の眺め)

紺屋の急場から九鬼山へは、一旦九鬼山から北東へ延びる尾根に九鬼山の北側をトラバースしながら登り、その北東尾根から九鬼山頂を目指します。一転して日が当たらなくなった道は雑木林であっても陰鬱な雰囲気です。エアリアにガレと書かれたトラバース道に入るとまたも歩きにくい所です。踏み跡が明瞭なのは救いですが、相変わらず谷側は高度感があります。その分展望の良い所もあり、これまで歩いてきた御前山から馬立山の尾根の向こうに百蔵山・扇山と権現山稜が見えています。

(薄暗いトラバース道)

(手前が縦走路、その奥に百蔵山と扇山、最奥は権現山稜)

北東尾根に出て、ようやく緊張感から解放されました。道標に示された方向へ進むと最後の急な登りが待ち受けています。それでもこれまでの巻き道に比べればそれほど恐さは感じません。雑木林の急な岩尾根は百蔵山に北東尾根から登るときの雰囲気によく似ています。傾斜の緩んだ所で送電鉄塔の立つ山が見えましたが、高取山辺りだったのでしょうか。

(高取山?)

植林に囲まれた道を抜けていくと北側が開けた九鬼山頂(970.0)に到着です。手製のベンチとノートを入れておくポストが設けられています。北側は滝子山から扇山までの展望がありますが、葉が茂ると結構隠されてしまうんではないでしょうか。道標の下に括りつけられた温度計は0℃付近を指していましたが、風が無いのでここで簡単な昼食を取りました。

(九鬼山頂)

(山頂からのパノラマ)

昼食を取ったら楽しみにしていた富士見平へ向かいます。山頂からすぐに下った所が富士見平で、なるほど富士山方面だけが少し開けています。杓子山を前景とした構図は他の秀麗富岳十二景に比べるとすっきりとしないかもしれません。ただ距離は近いのでかなり大きく見えます。富士見平は分岐にもなっていて、杉山新道方面と池の山・愛宕神社コースに分かれています。エアリアには池の山・愛宕神社コースは急坂と書かれているので、安全に杉山新道を下りるルートを採ることにしました。

(富士見平)

(富士見平からの富士山)

富士見平からすぐ先の小ピークへ登ると鈴懸峠への道が分かれます。杉山新道は南西に延びる尾根を下るもので、松の生える明るい道です。途中にあるリニア見晴台と標識の付けられたビュースポットからは、高川山の下を突っ切っていくリニア実験線がチラリと見えます。でもどちらかと言えば一番奥に白く輝いて見えた南アルプスのほうが感動的でした。

(奥に南アルプスらしき山が見える)

(リニア展望台)

(展望台からの眺め)

杉山新道はエアリアの解説冊子にもあるように杉の木は見当たりません。日当たりが良い分、林床は潅木類が繁茂していて、かなり引っ掻かれます。踏み跡も若干怪しげになる所もあり、山慣れた人向きと感じます。804のピーク辺りは弥生峠と呼ばれ、1号路と2号路の分岐となっています。エアリアと地形図を見比べると2号路のほうが傾斜は緩やかに見えます。ガイドブックではあまり紹介されていないようですが、疲れもあるので2号路を下ることにします。

(弥生峠)

2号路を下り始めると早速倒木、そして潅木の藪が現れます。踏み跡も消えかかり、あまり歩かれている様子ではありません。その代わり黄色いテープがポツポツと付けてあります。踏み跡なのか水流の跡なのか分からないような所もあるものの、確実に下界へは近づいている模様。途中からジグザグに下り始め、道を付けるのに腐心した様子が窺えます。この踏み跡でよいのか不安に思う頃に古びた道標を発見。今歩く2号路はみゆき尾根と呼ばれているようです。

(2号路の様子)

尾根を外れて小沢を横切り、あばら沢へ差し掛かる所で1号路に合流します。標識が括りつけられたあばら沢を渡ると植林沿いに抉れた道が下っていきます。歩きにくいかなとも思いましたが、思ったよりも道は深く抉れていません。快調に下っていくと民家の裏手にある車道に出ました。無事下山です。ここから後はひたすら車道歩き。国道に出る前に朝日川の上を水路が通る落合水路橋があります。登録有形文化財となっているそうですが、確かになかなか珍しい光景です。国道へ出た後は禾生駅へ向かうのが普通なのですが、交通費を浮かすため大月駅まで歩いてしまいました。

(落合水路橋)

今回九鬼山は初めて歩きましたが、良い山だと思います。尾根上は殆ど雑木林で終始明るい雰囲気でしたし、展望が良いのも大きな魅力。ただ藪があったり、恐いトラバースがあったり、踏み跡も薄い所があったりとあまり初心者にはお薦めできません。出来れば山慣れた人と山座同定しながら歩くというのが面白いかもしれません。

DATA:
猿橋駅9:28~9:42猿橋登山口~10:19神楽山~10:32御前山10:38~10:59沢井沢ノ頭~11:14馬立山~11:39札金峠
~12:01紺屋の休場~12:31九鬼山~12:45富士見平~12:53リニア展望台~13:01弥生峠~13:28あばら沢~
13:33禾生登山口~14:02田野倉駅前~14:38大月駅

地形図 大月 都留

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