「下町ロケット」 2021-06-08 00:00:00 | 日記 2021年6月8日、2015年12月20日に最終話を迎えるTBS系連続ドラマ「下町ロケット」(日曜・後9時)が2015年12月19日、クランクアップした。2015年12月18日夜から神奈川県内で行われた撮影は物語のクライマックス。阿部寛(当時51)が演じる主人公・佃航平と、小泉孝太郎(当時37)が演じるサヤマ製作所の椎名社長が、激しく感情をぶつけ合う“最終決戦”だ。このシーンだけで約6時間を要し、終了は午前4時半。あるスポーツ紙の記者が潜入したようだ。撮影現場は神奈川・茅ケ崎市。サヤマ製作所として使用された産業・研究機関向け真空装置メーカー「アルバック」の本社だ。夜10時、静まり返ったオフィスにスポーツ紙の記者が足を踏み入れた。佃(阿部)VS椎名(小泉)。2人のラストバトルが最後に残されたシーンだ。台本26ページ分の膨大なセリフが用意されていた。お互いの過去、因縁、技術者としてのプライド、あらゆる感情を爆発させる。ストレートなセリフの応酬だが、感動的なフレーズが盛り込まれ、胸を打つ。シーンを数個のパーツに分けて撮影するのだが、1つのシーンを角度を変えて何度も撮る。8回も9回も。スタッフには妥協を許さない緊張感が漂っていた。休憩時間。2人に会話はない。阿部が物思いにふけるように辺りをゆっくり歩いていたのに対し、小泉はじーっとイスに座り集中力を高めていた。阿部が語尾に力を込めて怒号を響かせれば、小泉は腹の底から、ふつふつと沸き起こる怒りを静かに吐き出す。俳優として脂が乗りきっている阿部に、初めて悪役を演じる小泉が必死に食らいつく。午前1時半の終了予定は大幅に延長され、終わったのは午前4時半。久々の徹夜となったが、2人の演技に引き込まれ、全く眠気は感じなかった。クランクアップの瞬間、阿部は「命を削って作った作品。最高の結果を残せたと思います」と語り、目には光るものがあった。疲れているはずなのに、その表情は、すがすがしさに満ちていた。小泉は「こんなに長く濃い1か月半は、経験したことがない」と充実感を漂わせていた。通常、連続ドラマは、編集の時間などを計算し、余裕を持って、撮影するが、このドラマは違った。ギリギリまで撮影を続けた。「半沢直樹」など20年以上にわたり、ドラマに携わる伊與田英徳プロデューサー(当時48)は「こんなタイトなのは初めて。役者さんには申し訳ないけど、この状況だからこそのホットな芝居にも期待している」と明かした。この日の撮影は、最終回の放送では約15分間にギュッと凝縮される。6時間の2人のバトルが、どのように表現されていたのだろうか・・・(井森隆)