ハラスメント・いじめ問題を考えましょう

ログイン型投稿と改正プロバイダ責任制限法

ログイン時における発信者情報開示請求

前のブログに、改正プロバイダ責任制限法には2つの改正ポイントがあると書きましたが、ひとつは裁判手続の簡略化で、もうひとつは、ログイン型投稿において、プロバイダに対し、ログイン時の発信者情報の開示請求を可能にしたことです。

最近はTwitterやFacebookのようなログイン型投稿が増えています。ただログイン型投稿では、ログイン時には発信者情報は記録されていますが、投稿時には発信者情報は記録されていないことがほとんどです。

現行法では、発信者情報開示請求ができるのは、侵害情報と規定されているのですが、投稿は侵害情報とはいえても、ログイン時の送受信は侵害情報とはいえないのです。しかしそれではログイン型投稿での発信者がわからないので、現在は、条文解釈としては難しいのですが、プロバイダに対して、ログイン時の発信者情報の開示を請求しています。

これまで多くの裁判所も条文を何とか拡大解釈をして開示請求を可能にしてきました。しかし解釈には限界もあり、早期の改正が待ち望まれていました。

 

二つの発信者情報-特定発信者情報と②それ以外の発信者情報

改正法に第5条1項3号2項が加わり、ログイン時情報についても発信者情報開示請求ができるようになりました。ただ、この新規定は非常にわかりにくく、一読しただけではとても内容は理解できません。

まず、これまで規定されていた発信者情報

(1)特定発信者情報ログイン型の発信者情報)と

(2)それ以外の発信者情報(これまでの発信者情報のことです)

2つに分けられました。

ここでいう特定発信者情報とは、

発信者情報であって専ら侵害関連通信に係るものとして総務省令で定めるもの

と定義されました(第5条1項)。

また、この定義にある侵害関連通信についても定義規定が置かれました(第5条3項)。これがログイン通信ログアウト通信を指すことになります。

 

ログイン型投稿についての発信者情報開示請求

改正法で、ログイン型投稿の発信者情報開示請求について、新たに加わったのが、第5条1項3号第5条2項です。この新規定は非常にわかりにくいのですが、簡単にいうと次のようになります。

ログイン型投稿については、次の場合には、発信者情報開示請求ができることとされました。

(1)アクセスプロバイダ(OCNとかNTTドコモなど)に対しては、ログイン時の発信者情報の開示請求ができる。

(2)コンテンツプロバイダ(ツイッターやフェイスブックなど)に対しては、以下のイからハのどれかに該当すれば開示請求ができる。

イ コンテンツプロバイダが投稿時の発信者情報を保有していないとき

ロ 発信者の氏名住所やアクセスプロバイダを特定できる発信者情報も保有していないとき

ハ 開示を受けた発信者情報では発信者を特定できないとき

 

これから

このようにまとめても、まだ複雑でわかりにくいかと思います。

これからのさらなる急速なインターネットの技術開発やサービスの多様化によって、この改正でも追いつかないことがすぐに起きるでしょうし、法律はますます複雑になるでしょう。情報社会の急速な変化に法がすぐに追いつくことはほとんど不可能になっているように思います。


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