４年ぶりの再会

遊歩道で、おばあちゃんと一緒に歩くＨくんを見かけた。

私が初めてＨくんと出会った時
彼はまだ２歳児だった。

御両親がケーキ屋さんを営んでおり
店のケーキはすべてお父さんの手作り～♪
この町ではわりと人気のあるお店だった。


そう、あれは私が遅番の時だった。
その日は土曜日だったので遅番に入る子どもたちも少なく
私とＨくんの二人だけになってしまった。

あまり言葉を発しない彼がミニカーで遊びながら
急に何かをつぶやき始めた。


「ママ、ネンネしてるの」

「ん？ママ、ネンネしてるの？」

「ママ、ドーンって転んだの。痛い痛いしたの」


その時私は、ママが高いイスか何かから転んで落ちたのかと思った。


しばらくして、いつものようにおばあちゃんがお迎えにやってきた。

「ママが待っているからお家に帰ろう。
ママ、お家でネンネしているよ」

今思えばその言葉に深い悲しみが隠れていた。


「お母さん、ケガをされたのですか？
Ｈくんが転んだって、さっきそう言ってましたが」

私の問いに、おばあちゃんは「ええ」と返事をし
足早にＨくんと帰って行った。



翌日・・・
Ｈ君のお母さんが亡くなられたという連絡が入った。
お母さんが自宅で倒れた時、Ｈくんは保育園におり
その様子を見ることも知ることもなかった。

そう、おばあちゃんが迎えに来た時に
すでに彼のお母さんは亡くなっていたのだ。


Ｈくんが私に呟いてた「ママ、ネンネしてるの」
「ママ、ドーンって転んだの。痛い痛いしたの」
彼には、その瞬間お母さんの姿が見えていたのだろう。

時間が経つにつれ、その時の事が不思議で仕方がない。
きっとお母さんもあの保育室で
オモチャで遊ぶ彼のすぐそばに寄り添っていたように思う。


あれから４年。Ｈくんは小学１年生だ。
転勤してから彼と会うこともなかった私。
大きくなった彼の姿を見ることができて
なんだかとても嬉しかった。