あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

不韋より望

2011-07-13 | 本(文庫本)
宮城谷昌光さんの『奇貨居くべし』を読みました。こちらも桜の時期に読んでいたのですが、今になっての記事UP! 梅雨があけてのUP!(あ、連日かなり暑い日が続いていますが、皆さんおかわりなくお過ごしですか?)

これまでにかなり宮城谷作品を読んできました。ひとつの作品が大長編になるものが多いので、読了までにかなり時間はかかりますが、読むのが全然苦痛にならないんですね。それどころか、読後はいつも爽やかな気分でいられる。「やっと終わった~」には決してならないのが宮城谷さんの小説の良いところです。
なので早く『三国志』を読み始めたいのですが、こちらのお預けはあと数年先まで続くようで…。

さて『奇貨居くべし』。こちらは商人から宰相にのぼりつめた呂不韋が主人公。秦の始皇帝の父ではないかと言われている人物で、読む前はあまり良い印象を持っていなかった人です。小説のタイトルである「奇貨居くべし」について、物語のあらすじにもなるので記しますと…。

中国戦国時代の末期、呂不韋は衛の濮陽に商人の子として生まれた。彼は若い頃から各国を渡り歩いて商売をし、富を築く。その中で不韋は秦の太子である安国君の庶子・子楚が、人質として邯鄲に住んでいることを知った。どうやら子楚はひどく生活に困っているらしい。
不韋は「これ奇貨(きか)なり。居(お)くべし」(これは珍しい品物だ。これを買って置くべきだ)とひらめいた。そしてすぐさま子楚の荒れ果てた屋敷を訪れて、子楚にこう進言する。
「昭襄王は高齢ですので、間もなくあなたのお父上・安国君が秦王におなりになりましょう。しかし正妃である華陽夫人にはお子さまがありません。安国君は20人以上おいでになる庶子の方々の中から誰を太子にお選びになるでしょうか。正直なところ、あなたは有利な立場にあるとは言えないでしょう。
そこで私をお使いください。私には金がございます。華陽夫人への贈り物や、人材を集めるための資金を出しましょう。直接秦へ出向いて、あなたを太子に立てていただくよう働きましょう」
子楚は喜び、
「もし君の言葉の通りになれば、一緒に秦国を治めようではないか」
と応えた。
そして不韋の言葉通り、不韋の豊かな財力は不遇な庶子を太子とすることに成功した。遂には子楚を王位につけることに成功し、秦で政治家としての権勢を振るった。さらに、自分の子を身ごもっていた趙姫を子楚に嫁がせ、生まれた子は国の頂点に君臨する。その子こそが始皇帝である。(「史記」・呂不韋列伝より)

んん~。このエピソードを先に知っていると、呂不韋が主人公の話を、爽やかな読後感で読み終えられるかそうか不安です。何だか悪い商人が暗躍する話っぽくなりそうじゃないですか。
しかしそこは宮城谷流の味付けがしっかりとしてあるのでした。
呂不韋は超美少年で、オーラがバンバン出ている稀な人物。人情に厚く人望もあり、学問に熱心で「欠点はどこ?」というくらいのヒーロー像が出来上がっていました。
なので呂不韋列伝のようなネガティブなイメージはありませんでしたが、同じようなヒーロー像であるのなら「太公望の方がずっと魅力的だわ~」と感じた読後でした。
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