想像の範囲内

薬丸岳さんの『死命』を読みました。薬丸さんの作品は、連続して読むのはしんどいけど、インターバルをおいて読みたくなる。本作もそれで手にしたのでした。

デイトレードで成功しながら、若くして余命宣告を受けた榊は、欲望のままに残りの人生を生きると決める。榊が選んだのは殺人。榊が犯した連続殺人事件を捜査する刑事・蒼井もまた病魔に襲われ、残りの命を犯人逮捕のために燃やし尽くそうとする。

いつもながら重いテーマの作品でした。
死期が分かったとき、それから先をどう生きるのか。榊は捕まる前に命が尽きると想定して殺人者になり、蒼井は一生を刑事として生き抜くことを決める。もちろん榊のとった道は選ばない。蒼井の生き方は立派なのかもしれないけど、違うように思えたり。そんな感じでした。
この作品、毎度のことながら設定はよかったと思います。でも、ラストは最初からの想像の範囲内でした。そこに至るまで飽きさせず、最後まで引き込む力はさすがだと思うのだけど、本作は「普通の人」出てこなくて、そこも嫌だったかな。違う次元の話のようで、これまでに読んだ作品にあったリアリティが感じられなかった。そして読み終わって「考えさせられる」ということがあまりなかった。このテーマだったら、もっと違うアプローチがあったんじゃないかしら。とても残念でした。それと、ドラマ化されるらしいけれど、配役を知って「それは違うでしょう」と思ったことも付け加えておきます。
次に読む作品に期待！