あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

ちょい

2011-09-07 | 本(文庫本)
荻原浩さんの『ちょいな人々』読みました。荻原さんらしいユーモアと、登場人物たちをあたたかい目で見つめて優しく描いた、キラキラの短編が7作収められています。

この文庫、書店で見かけた(今回も「ちょっと前のことになるのですが」の注釈を入れます)瞬間に手にとってしまいました。荻原さんのものであることはもちろんその理由になりますが、カバーのイラストとデザインが何とも! シンプルだけどかなりハイセンスだと思います。「そそられ率95%」はありました。
本のタイトルである『ちょいな人々』。ここに登場する「ちょいな人々」とはどんな人たちかと言いますと…。

  ○若いOLの心にもない一言に翻弄される中年サラリーマン
  ○庭木やペットをめぐって隣同士で火花を散らす、ハーブ作りに夢中な主婦と妻に先立たれた老人
  ○脱サラ後にスピリチュアル占いを始めた売れない占い師
  ○いじめられっ子と一緒にいじめている方に立ち向かう「いじめ電話相談員」
  ○「犬猫語完全翻訳機」でペットの本心を知る飼い主たち
  ○「犬猫語完全翻訳機」で大失敗したおもちゃ会社が次に開発した「正直メール」でさらに混乱する人々
  ○熱狂的阪神ファンの彼を、根っからのジャイアンツファンの父親に初めて合わせる娘

ちょっとだけヘンで、ちょっとだけ気の毒で、だけど絶対に嫌いになれない人たち。
荻原さんの小説に出てくるのは、ごく普通のどこにでもいるような人たちばかりです。読んでいてビックリするくらいの不幸が襲いかかるわけでもなく、天地がひっくり返るような状況になるわけでもありません。
しかしそこにしっかり物語があって、その先に希望があって「こうして生きていてOKだよね」と、読後には元気になっている…。今回もそれを確認できました。

振り返ってみれば、ここではお恥ずかしくて公表はできませんが、私もかなり「ちょい」なエピソードを持ってしまった人生です。そのときはかなり深刻な状況にあるように感じていましたが、すぎてみれば何でもない。今となってはちょっとした笑い話みたいなことばかりです。冷静に見つめたら、案外そんなことばかりなのかもしれません。
この短編集は、いろいろなことか起きる毎日を生きていくための良質なサプリメント、みたいな一冊でした。
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